オケラのくりごと  携帯電話

 インターネットや、ウィンドウズ95をご存じか。 両方ともパソコン絡みの言葉で、パソコンの売上げがテレビのそれを抜き、やがて一人一台時代を迎え、若者は勿論、中高年の求人までがインターネットを通じて行われると言われれば無関心では居られないが、これにPHS即ち簡易型携帯電話を加えた三つが今のトレンディーな言葉なのだそうである。 ついこの間まで、猫も杓子もポケベル持参で、店内でもあちこちでピーピー鳴ってピンク電話が忙しかったのに、最近では来店男性の半分以上が携帯電話を持っており、ピンク電話は使われなくなってしまった。 PHSは、中継基地が増えて実用になるようになれば、便利さに比べ利用料金が安いことから更に利用者が増えることと思われる。初期の携帯電話は大きくて、ポケットに入らなかった所為もあるが、大抵の人はテーブルにつくと誇らしげに中央に置き、アンテナを伸ばして着信を待つ。暫く待っても掛かってこないと、こちらから掛ける。 声高に話して大笑いをする。 店の有線放送は‘携帯電話もあの娘の為ェにィ’てな歌を流す。 ある意味でステイタスシンボルだった。 最近では機器も小さくなり、尻のポケットやバッグに入れる人が多くなってきた。 それだけ定着してきたということなのだろうが、今のところ簡易であるなしに拘らず、オケラが携帯電話を使うことになるとは思えない。 オケラの日常の行動範囲、即ち店と住まいは今のFAX付きコードレスの子機でカバーされているし、滅多にしない外出の際に、掛かってくる当てのない小さな電話機を持って歩いても、無くすのが落ちである。 オケラの店にも既に何人かの、オケラよりもしっかりしていそうなお客様が携帯電話機を忘れて行かれた。 そんな時、オケラ達は唯ひたすらその電話に掛かってこないことを祈っている。 最初は電話の受方を知らなかった。現在では切り方まで教えて貰ったが、それとは別に携帯電話特有の問題がある。掛ける人は一般の固定式の電話と違い、何時でも相手本人が直接出ると思っている筈だから、例えばオケラが出ると番号を間違えたと思うに違いなく、こちらが説明する前に失礼!なんて切ってしまうに違いない。 こんな時、これが忘れ物であり、序でに忘れた本人にこの電話がこの店にあることを連絡してもらうのにはどのように話したらいいのだろう。 そしてその人はどうすれば良いのだろう。 これはよく想像してみると、かなりこんがらがった事態である。持ち主が女性である場合は、有らぬ誤解を受けないとも限らない。 それが未婚の美人で、オケラが出た為に破談になったから責任とってくれ、と迫られたらどないしょ‥‥。 つまりネ、携帯電話は持ち歩いちゃいけないんだよ。
−−−−−−−−−−1995.11記

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