オケラのくりごと  数え歌

  謹賀新年。
  オケラのうどん屋歴より三つ半上のオケラの店は、昨年満十才になった。 そこで今年の年賀状には“十で到頭店仕舞、なんて事にならねば良いが”と数え歌調の一節が入った。 数え歌にも種々あって、オケラも幼少の頃は“ひとつとや 一人で早起き 身を清め 日の出を拝んで 庭掃いて”なんて清く美しいのを歌っていたが、長ずるに及んで段々テーマが下半身に片寄り、“ひとつ出たホイの”とか“ひとつ、ひとりでやるのを”等と車座になって歌うようになった。 その後数え歌には御無沙汰してきたが、今回は年賀状から発展して、数え歌を作ってみた。 先ずは店仕舞に至る仮定の過程。
『ひとつ 人手はないけれど/ふたつ 夫婦で続けると/みっつ 皆に言ったけど/よっつ 腰痛不整脈/いつつ いじいじ思い詰め/むっつ 無理には無理重ね/ななつ 何ともならなくて/やっつ 休みが多くなり/ここのつ ここまで来たけれど/とうで とうとう店じまい』こうなった店も沢山あった筈。 今のところオケラの店はこれ程ではないが、こうなる可能性が十分あることも事実で、他人事とはいえない恐さがある。
『ひとつ ひょっとしたきっかけで/ふたつ 二人で思い立ち/みっつ 皆に助けられ/よっつ ようやく店を買い/いつつ いつかは良くなると/ むっつ 無理やり元気出し/ななつ 何とか持ちこたえ/やっつ やりくり 飯の種/ここのつ ここまで来たからにゃ/とうで 止どまれますかいな』この辺がオケラの実態に近いが、さて何時まで続くことやら心もとない。
『ひとつ 一人じゃ出来ないが/ふたつ 夫婦で取り掛かり/みっつ 身 を粉にする覚悟/よっつ 良い地に根を下ろし/いつつ 誤算もあったけど /むっつ 無理とは思わずに/ななつ 何とかしてやるぞ/やっつ やめる にゃ早すぎる/ここのつ この坂この峠/とうで とうとう乗り越えた』若手の頑張り屋はこんな所だろうか。 元気は良いが、夢一杯とは言い難い。
『ひとつ 一際うまい店/ふたつ 夫婦で始めたら/みっつ みるみる繁盛して/よっつ 良い客数多く/いつつ いろいろ工夫して/むっつ 無理 むら 無駄なくし/ななつ 浪花のうどん屋を/やっつ やりますやってます /ここのつ 好調限りなく/とうで ○○また増えた』どうです、こんな調子は。 オケラの実態からは余りにかけ離れているけれど、でもサ、これ、CMソングにして流さない? 今の店の中に加盟店募集のポスター貼ったり、パンフレット置くよりずっと効果があると思うけど。
−−−−−−−−−−1993.12記

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