オケラのくりごと  花粉症

  春が来ると税金が始まり、税金が終ると春になる。 そして、メケラの花粉症が始まる。 今年もこうしてメケラはめでたく花粉症になった。 オケラが子供の頃育った環境は、身の回りには確かに松林や雑木林が比較的多かったけれど、杉が無かったわけではなく、少し離れたところには彼の有名な杉並木があり、更に少し山に登ると線香の産地だったから、花粉はふんだんに飛んでいたと思うのだが、花粉症なんて言葉はおろか、そんな症状の人もいなかった。子供たちは皆青鼻汁を垂らしていたが、これは季節には関係無かったと思うし、‘みっちゃんミミダレ、目はヤンメ’なんて囃子言葉もあったけれど、 ミミダレにもヤニ目にもちゃんとした、立派な病名があったに違いない。 これらの病気、といっても当時は病気のうちに入らなかったが、が何故多かったのか、何故今無くなったのか、説明を聞いたことがある。 中身は忘れてしまったけれど、多分雑菌だの抵抗力だのがテーマだったと思う。 それが何時からか花粉が主役になった。 ‘目病み男に風邪女’とは誰が言い出したことか、ハンカチを手に、熱っぽく潤んだ目で、鼻声で、と来れば色っぽい女性を表現する時の常套句だが、これに僅かにくしゃみ鼻水鼻詰まりが追加されただけで、色気は吹っ飛んでグシュグシュの花粉症になる。 人によって症状も様々なようで、耳の奥が痒いなんて人もいるらしい。 痒い目は掻けるけれど、耳の奥ではどうしようもあるまい。 耳の奥には耳たぶの方からが近いのだろうか、それとも口の奥に手を突っ込むほうがより効果的だろうか。 ハムレットの父王が耳に毒薬を注がれて殺されるのは医学的に誤りで、耳に毒薬を注いでも鼓膜があって毒は効かないと言う話だが、花粉が入り込めるのだとしたら、あながち毒が効かないと決めつけることも出来まい。 メケラのはそれ程ひどいのではないようだが、それでも目が痒いの、鼻が詰まるのと、いっぱし花粉症の仲間入りをしたがり、果ては眠いのまで花粉症の所為にしようとする。 眠いのが花粉症ならメケラは年中花粉症だよ。 オケラに言わせれば花粉症などと言うものは、結局は体が無菌培養されて花粉にすら抵抗できなくなった事に原因があり、ここは一つ店を休んで逆療法、杉林の真ん中に転地療養に行けば良いと思う。 この費用には医療保険が適用されることだろう。 その間のオケラ?一人じゃ店は開けられないから、温暖で美人の仲居や若い女整体師が居る海辺の温泉に、医療保険で転地療養に行くつもり。 そりゃァ是非メケラに付き添っていてやりたいけれど、オケラは腰痛で病気が違うんだから仕方ないでしょ。そんな事したらもっと腰が悪くなる? そりゃ考えすぎというものです。
−−−−−−−−−−1995.03記

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