第53回 第2部 シンポジウムB「食物アレルギーをめぐって」抄録

B 保育園における食物アレルギーの実態調査


大阪大学医学系研究科保健学専攻 永井利三郎
大阪小児科医会「病気を持った子どもの教育保育問題検討委員会


大阪小児科医会勤務医会では、「病気を持った子どもの教育・保育問題検討委員会」を
おき、様々な健康課題をとりあげて、調査活動や講演会を実施している。このような活動
の中で、平成20年度に「保育の場における食物アレルギー」を取り上げて、大阪府下で
アンケート調査をさせていただいた。今日はこの講演会の場をお借りしまして、調査結果
をご報告する。

【調査方法】平成21年1月~2月に、大阪府下の保育所(園)1095施設の施設長・看護師
を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は@施設の背景、給食環境、A食物アレル
ギー児の現状、B除去食、C医療的対応、D施設の対応方針、E誤食、アレルギー症
状の経験、F対応の現状に対する認識、G取り組みたい項目、などであった。調査は、
大阪大学倫理委員会の審査を受けて実施した。倫理的配慮として、研究への参加は自
由意志であり、調査不参加者が不利益を受けないこと、得られたデータは匿名性をもつ
こと、研究目的以外で使用しない事を明記し、回答をもって同意とみなした。352施設(回
収率32.1%)から回答が得られ、そのうち公立保育所138施設、認可私立保育園210施
設であった。

【結果】ほとんどの施設(99.1%)で、食物アレルギーを持つ子どもの受け入れを行ってい
たが、16%の施設は、医師の診断書・指示書を条件としていた。90%の施設が、食物アレ
ルギー児がいると回答していた。食物アレルギーがあると把握している児の割合は7.6%
であり、そのほとんどで除去食の指示が出されていた。82.1%の施設で除去食を行って
おり、除去食の内容は、卵92.3%、乳製品80.4%、小麦57.7%で、その他、ピーナッツ、
魚、そば、大豆、肉、果物、野菜、など多岐にわたっていた。

誤食について:過去1年間における誤食について聞いたところ、61.1%の施設で誤食を
経験していた。アレルギー症状の経験は39.5%の施設が「あった」と回答していた。また
症状が出たために医療機関に搬送された例は36施設であり、「アナフィラキシー症状」を
認めての緊急搬送は16施設、その後入院に至った施設は4施設であった。

対応策:エピペン注射の実施を受け入れていると回答した施設は1施設のみであった。
「食物アレルギー児に提供する食事の管理」、「誤食を起こさないための食事中の配
慮」、「保護者との連携」は90%以上の施設で実施しているという回答であった。

【まとめ】ほとんどの施設で除去食、代替食の食事の対応がされていたが、過去1年間で
61%の施設で誤食を経験し、その後医療機関へ搬送された例も多く、医療的対応の重
要性が再認識され、そのための医療・保育間での緊密な連携が必要であると思われ
た。今後は保育士、栄養士、調理師、看護職が、それぞれの専門性を活かしながら情報
交換を行い、保護者や医療機関との連携をさらに強化し、子どもの安全を守っていく体
制づくりが必要であると思われた。
 


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