1998年北海道流氷旅行記・2日目

3月10日


 朝目覚めると,千歳空港付近を走行中であった.周りは雪景色である.本州であれほど見ることのできなかった雪であるが,さすが北海道では都心でもかなり積もっている.札幌のビル群を望みながら急行はまなす号は終点札幌駅に到着した.実に大阪から21時間もかかったことになる.
 乗り継ぐオホーツク1号まであまり時間がないので,改札を出てローソンで朝食を買い込む.駅に戻り自由席の列に並ぶ.ほどなくしてオホーツク1号が入線してきた.我々はなんとか座席を確保し,買い込んだ朝食をすばやく済ます.約1時間半で旭川に到着.すぐの接続で急行礼文に乗り換える.喫煙席に乗ってしまったので煙たいが我慢我慢.三浦綾子の小説「塩狩峠」で有名な塩狩峠を越える.私は3年前ここのYHで泊まった.旭川から約1時間で名寄に到着,ここで本日の鉄道での移動は終わり,あとはバスの旅となる.
 名寄の駅改札を出て,紋別へのバスを待つ.気温は氷点下のようである.ほどなくして,紋別方面遠軽行きのバスが到着した.バスはそれほど混んでおらず,一見して旅行者と分かるもの以外はすぐ降りていってしまった.バスは名寄から遠軽まで,名寄本線の線路跡沿いに走行する.名寄本線は,石北本線遠軽から中湧別,紋別,興部を経由して宗谷本線名寄に至る路線と中湧別から分岐して湧別まで至る支線から成り立っていたが,平成元年4月に廃止された.バスからもその廃線跡と確認できるものが各所で見られた.バスは名寄を出発して約1時間半で興部に到着した.かつて興部からは興浜南線と呼ばれる路線が雄武まで延びていたが,こちらも早々に廃止された.興部を出発してようやくオホーツク海と対面,一面流氷で覆い尽くされていた.やった.これで今回の旅行のメイン流氷を見られないという最悪の事態は避けられた.流氷の割れ目から濃紺のオホーツク海が顔を出していたからそこが海だと確認できたが,割れ目がなければそこが雪原と区別がつかなかった.興部から約40分で紋別バスターミナルに到着.我々を含む乗客全員が下車した.
 まず,今夜の宿泊地「かつうら旅館」に荷物を置き,寒さに耐えれるよう服を何重にも着込む.旅館から流氷船ガリンコ号乗り場までかなり距離があった(約2km)が時間があったので歩いて行くことにした.しかしこれは間違いだった.気温は氷点下2〜3℃程度であったが,風が強かったため体感温度は氷点下10℃を越えていた.私は毛糸の帽子をしていたからまだましであったが,K島氏は顔を覆うものが何もなかったためかなり辛そうだった.さらに歩道は凍結しているところが多く,かなり歩き辛かった.ガリンコ号乗り場はすぐ目の前に見えているものの道はかなり遠回りになっていてなかなか到着しなかった.到着するまで約1時間を費やしてしまった.到着してオホーツクタワー入場券とガリンコ号乗船券を購入する.ガリンコ号は予約制だが当日でも全く問題なかった.それから遅い昼食を食べる.私はイクラ丼,K島氏はオホーツクラーメンを注文した.食べ終わったらガリンコ号の出航時刻までオホーツクタワーを見学することにする.このオホーツクタワーの目玉は,海面下の展望室で,流氷の下から海の天使クリオネなどを見ることができるものである.さっそく海底展望台へ行きクリオネを探すが見つからない.しかし,海面下をダイビングするコオリガモという鳥を見ることができたのはラッキーだった.天然のクリオネを見つけることができなかったが館内の水槽で飼育しているクリオネを見ることができ,その美しさに酔いしれた.オホーツクタワーは海底展望台以外はこれといったものがなかったが,最上階の展望室からはオホーツク海一面に覆い尽くされた流氷を望むことができた.ガリンコ号の出発時間が迫ってきたので乗船乗り場へ移動する.
紋別の流氷
▲紋別の流氷
 今回乗船するガリンコ号は,ガリンコ号IIと呼ばれているもので,数年前に初代ガリンコ号Iの後を継いだ流氷砕氷船である.ガリンコ号Iはかなり小型でドリルで流氷を砕いていく姿に迫力があったが,ガリンコ号IIでは近年の流氷ブームに対応するためかなりの大型船となった.ただ今日はその大型船を持て余すわずかな人しか乗船しておらず残念である.発車してから港を出るまでは,薄い氷を割って進むが,この氷は流氷ではなく港内の海水が凍ったものとのことである.港から出ると氷も流氷も何もない濃紺のオホーツク海上を走行するが,しばらくすると流氷区域に突入する.ガリンコ号のドリルの本領を発揮し,どんどん流氷を打ち砕き進んでいく.分厚い流氷に出くわすと簡単には割れず,流氷に乗り上げるような感覚になるが,それでも数回チャレンジすることでどうにか打ち砕いていた.流氷は最大で厚さ1メートルにも達していた.船員の話によると分厚いものは遥かかなたアムール川から来たものだという.風が強く外にいてると非常に寒く,肌が痛いので,適宜室内と行き来し,暖をとる.約1時間半のクルージングは大変満足のいくものであり,これだけで今回旅行に来た元が取れたようだ.しかしなぜこのような素晴らしいところにわずかの人しか来ていないのだろうか.やはり鉄道が通っていなく不便だからであろう.名寄本線の廃止が惜しまれる.
 流氷船乗り場から紋別の市街地へ戻るのに,先程の失敗より今度はバスで戻ることにする.紋別バスターミナルに一番近い停留所で降り,観光案内所に行きパンフレット類をもらう.K島氏はグレ電でザウルスを用いてメールの受信をしている.めぼしい見所はないようだがまだ少し時間があったので,近くの紋別公園というところに行くことにする.紋別公園は小高い山の上にあり,紋別市街が一望できる.流氷展望台というものがあり,オホーツク海一面に広がる流氷を望める.黄昏時の流氷もまた風情のあるものである.ちょうど先程乗船したガリンコ号が市街地近くの港まで回送されているところであった.紋別公園から市街地へ戻り,夕食屋を探す.カニの豪華な店などもあったが,結局旅館近くのレストランで食事をすることにする.ホタテ定食を注文し,食べた.旅館に戻り,風呂に入り,寝ることにする.K島氏はデジカメの電池の充電に忙しそうである.今日1日動き回ったことと前日は夜行で寝不足のため,すぐに眠りについた.

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