臨時列車・波動輸送

工学部 電気工学科 3年 たらちゃん

I はじめに


 京阪では様々な臨時列車を運転し,多客時に対応している.しかしあまり宣伝されていないため,臨時列車についてよくわからないというファンも多いことだろうと思い,ここにまとめることにした.
 以前は枚方公園〜浜大津間の臨時急行「きく号」や淀屋橋〜宇治間直通の臨時急行などユニークな運行形態の臨時列車が数多く見られたが,近年は定期列車の充実とともにこのような列車は見ることができなくなってしまった.現在は行楽期に運転される臨時特急と競馬開催日の臨時急行が臨時列車の中心となっている.ここでは近ごろ毎年見られる臨時列車を紹介する. 時刻は1995年に運転されたものを中心に述べるが, 1996年以降もこれに準じて運転されるものと思われる.

II 春秋行楽期


▲行楽期午前中に運転される
出町柳行臨時特急
1995-4-8 大和田
 春(3月下旬〜5月上旬)と秋(9月下旬〜11月下旬)の日曜・祝日には,京都方面への行楽客のため,午前に淀屋橋発出町柳行,午後に三条発淀屋橋行の臨時特急が運転される.
 午前便は原則として淀屋橋発9:05から11:05まで30分毎の計5本運転されるが,天候等により減便されることがある.淀屋橋を急行発車の1分前に出発し,香里園で普通,枚方市で準急,八幡市で普通,丹波橋で宇治発の普通,三条で急行を追い越すダイヤとなっている.
 一方,午後便は三条始発で運転し,三条からの乗客に対する着席チャンスを増やしている.最大で三条発16:00と16:30から18:00まで15分毎の計8本運転されるが,減便されることがよくある.三条を淀屋橋行普通到着直前に出発し,その普通を深草で追い越す定期特急に中書島付近で追い付かれ,そのまま定期特急の直前を走り通すというダイヤになっている.
 車両は予備の特急型車両が使用されるが,現在は3000系1編成を含めても予備は3本しかないので,原則として不足分は5000系以外の7連通勤型車両が使用される(この原則は正月など他の臨時特急にもあてはまる).しかし不足分には7000系が使用されることが多く,他形式の通勤型車両の臨時特急はなかなか見ることができない.
 なお1995年4月8日には,土曜日として初めて臨時特急が運転された.桜の満開時期と第2土曜が重なったため運転されたと思われる.午前便は淀屋橋発9:38から11:08まで30分毎の計4本運転されたが,休日運転時のダイヤと異なり,急行の3分後に出発した.すべて8000系で運転され,そのため淀屋橋発9:45と11:15の定期特急は7000系で運転された.午後便は三条発16:30,17:00,17:15の3本が休日運転時と同じダイヤで運転された.折り返しラッシュ輸送のためか8000系による運転は最初の1本のみであった.

III 京都競馬開催日


▲競馬開催日午前中に
運転される淀行臨時急行
1991-11-23 香里園
 東洋一美しいと言われている京都競馬場は淀駅付近にある.このため競馬開催日には,同駅は競馬ファンで賑わう.京阪では急行を淀駅に臨時停車させるとともに,多数の臨時急行(通称K急)を運転している.
 日曜日の京都競馬開催日の臨時急行は,午前中に淀屋橋発淀行が,午後に淀発天満橋行(一部淀屋橋行)と淀発三条行が運転される.
 午前便は,8時台から11時台まで30分間隔で運転され,淀屋橋を特急発車の1分後に出発し,枚方市で準急を追い越すダイヤとなっている.なお8時台,9時台に運転されるものには,三条まで運転されるものもある.なお,レースの規模が小さい時は,この午前中の臨時急行は運転されないことがある.
 午後便は,メインレース終了に合わせて16時ごろから運転されはじめ17時半ごろまで運転される.大阪方面行は最大,15分間隔につき2本の臨時急行が運転される.「淀を特急通過直後に出発し,その特急に樟葉で抜かれる定期急行に追いつき,そのまま定期急行の直後を走り通す天満橋行のスジ」と「淀を普通到着直前に出発し,香里園で特急に抜かれる天満橋又は淀屋橋行のスジ」の2タイプである.これら大阪方で運転される臨時急行には,7又は8連の通勤型車両が使用される.また,樟葉始発の定期準急が淀始発に延長運転されることもある.
▲京都方競馬臨急には
8000系も使用される
1993-4-25 中書島
 一方,淀発三条行の臨時急行は15分間隔に運転される.淀を普通出発後に出発し,丹波橋で特急に抜かれるダイヤとなっているが,先行する普通を追い越さないためかなり遅い.この京都方臨時急行には,5〜8連の様々な車両が使用され,行楽期には臨時特急の回送を兼ねて特急型車両が使用されることもある (淀発16:10, 16:25は特急型車両が使用される可能性が高い).これらの臨時急行の運転本数は,GIレースなら非常に多いが小規模のレースではかなり少ないなどレースの規模により異なる.
 また土曜日の競馬開催日には本数は少ないものの,午後便のみ大阪方,京都方とも臨時急行が運転される.この他,阪神競馬GIレース開催日にも臨時急行が運転されることがある.なお1月5日(金杯)は,平日ダイヤの上で臨時列車が運転されるため,淀行準急(定期樟葉行を延長)が運転されるなど,日曜日とは若干違う臨時列車運行形態がとられる.

IV 年末年始輸送


 京阪沿線には,伏見稲荷大社(伏見稲荷),石清水八幡宮(八幡市・男山山上),八坂神社(四条),平安神宮(丸太町・東山三条),成田山不動尊(香里園),下鴨神社(出町柳),大阪天満宮(天満橋)など有名寺社(かっこ内は最寄り駅)が多数ある.そのため京阪では古くから,大晦日には終夜運転,三が日には正月特別ダイヤを実施し,初詣客をさばいている.

(1)終夜運転

 大晦日は休日ダイヤで運転され,22時以降大晦日ダイヤで終夜運転が行われる.
 他社では30分毎の運転間隔のところが多い中で京阪は高頻度の運転をしている.鴨東線開業以前は,淀屋橋〜三条間の準急(萱島〜三条間各駅停車)と淀屋橋〜萱島間の普通の2本立てであったが,鴨東線開業後は,全線通しの急行と普通の2本立てとなっている.以下各種別毎に紹介する.
(特急)
 通常の休日ダイヤでは淀屋橋発22,23時台は20分間隔で最終は23:20発であるが,この日は22:20〜23:50まで15分間隔,その後20分間隔となり最終は0:50発である.結局,6本増発されたことになる.なお出町柳発の特急の増発は行われない.
(急行)
 23時台に寝屋川市発三条又は出町柳行が3本運転される以外は全て淀屋橋〜出町柳間の運転である.淀屋橋発0〜3時,出町柳発1〜4時までは10分間隔,それ以降は20分間隔となっている.なお大晦日の夕方から元旦の朝にかけては,すべての急行が昼間時と同様,守口市・枚方公園に停車する(元旦の朝に運転される準急も守口市に停車).10分間隔の時は,普通と香里園で連絡するものと守口市・丹波橋の両駅で連絡するものとが交互に運転される.20分間隔の時は香里園で普通と連絡する.10分間隔の時でも必ず立客がいるほど混雑する.
(準急)
 23時台に出町柳発樟葉行が2本運転されるのみである.
(普通)
 22〜0時台には淀屋橋発萱島又は枚方市行,出町柳又は三条発淀又は寝屋川市行が一部運転されるものの,元旦早朝まで淀屋橋〜三条(一部出町柳)間に20分毎に運転される.上下とも香里園で必ず急行と連絡する.
(支線・その他)
 宇治線・交野線では約20分間隔に普通が運転され,全て線内折り返しである.男山ケーブルは5分間隔の頻発運転が行われる.なお,大津線では終夜運転は行われない.

(2)正月ダイヤ

▲特急型車両が不足するため
7000系が使用された正月特急
1995-1-1 京橋
 他社では休日ダイヤに数本の臨時列車を運転するのみのところが多い中で,京阪では正月三が日にはダイヤパターンを一変させた正月特別ダイヤで運転する.このダイヤの目玉は,昼間時間帯に直通の特急・急行・普通が10分間隔の運転になることであろう.しかし普通は待避が多く窮屈なダイヤとなっている.また,特急の運転時間帯が淀屋橋発8:02〜19:40,出町柳発8:15〜20:01となるなど,昼間時間帯以外はかなり運転本数が少なくなる.
1.昼間時
 淀屋橋発10〜17時台,出町柳発10〜18時台には,直通の特急・急行・普通が10分毎に運転される.特急・急行利用者には便利なダイヤとなっているが,橋本・淀以外の急行通過駅と丸太町では普段より本数が少ない上,普通は待避が多く急行通過駅利用者にとっては気の毒なダイヤとなっている.各種別毎に述べるが,次頁のダイヤグラムも参照していただきたい.
(特急)
 淀屋橋〜出町柳間で10分毎に運転される.この特急運転には12編成必要であるが,現在は3000系1編成を含めても特急型車両は11編成しかないので,不足分は7000系などの通勤型車両で代用される.さらに夕方にはよほどの悪天候でないかぎり三条発淀屋橋行臨時特急が20分毎に運転され(三条発15:39〜17:59の計8本),都合この時間帯には1時間に9本もの特急が運転される.この臨時特急には1000系や2200系などの様々な形式の通勤型車両が使用される.
▲正月臨時特急には
1000系も使用された
1995-1-1 京橋
(急行)
 淀屋橋〜出町柳間で10分毎に運転される.上り出町柳行は枚方市で,下り淀屋橋行は丹波橋と枚方市で特急を待避する.
(普通)
 淀屋橋〜三条間で10分毎に運転される.上り三条行は守口市・香里園・丹波橋で急行と接続し,萱島・香里園・八幡市・丹波橋で特急を待避する.下り淀屋橋行は深草・香里園・守口市で急行と接続又は待避し,深草・八幡市・香里園で特急を待避する.特に香里園・丹波橋(上り)・深草(下り)では特急と急行をまとめて待避するため5分以上停まる.
(支線・その他)
 宇治線・交野線は昼間時15分間隔の休日ダイヤに準じて運転される(1995年6月のダイヤ改正で宇治線で昼間時(11〜14時台を除く)に7.5分間隔に増発されたため,1996年以降どのような正月ダイヤになるかは不明)が,全て線内折り返しである.男山ケーブルは4分間隔のピストン運転が行われる.大津線は休日ダイヤで運転されるが,京津三条〜四宮,石山寺〜近江神宮前では普通が増発される.
▲正月特別ダイヤ(16:00〜17:00)

2.その他の時間帯
 早朝・深夜は休日ダイヤに準じて運転されるが特急がまったく運転されないなど若干違う.
 特急の運転時間帯は淀屋橋発8:02〜19:40,出町柳発8:15〜20:01であり,運転時間帯の拡大が必要であろう.
 朝方(7〜8時台頃)は,直通の(特急)・急行・普通が20分毎に運転されるほか,樟葉発淀屋橋行の準急,萱島発淀屋橋行,淀屋橋発樟葉行の区間急行,淀屋橋〜萱島間の普通がそれぞれ20分毎に運転されるなどの区間列車がある.
 10分間隔運転終了後20時頃までは,直通の特急・急行・普通が20分間隔に運転されるほか,入庫回送も兼ねて淀屋橋発樟葉行,出町柳発淀行の準急,淀屋橋発萱島行,三条発淀行の普通がそれぞれ20分毎に運転されるなどの区間列車がある.しかしその後は,直通の急行と普通が20分毎に運転されるのみである.

(3)その後

 1月4日は土曜ダイヤで運転されるが,午前中に淀屋橋発三条行,夕方に三条発淀屋橋行の臨時特急が数本ずつ運転される.また,1月15日の成人の日は休日ダイヤで運転されるが,午前中に淀屋橋発出町柳行,夕方に三条発淀屋橋行の臨時特急が数本ずつ運転される.

V 沿線催し物に伴う臨時列車

(1)祇園祭

▲8000系で運転された
祇園祭臨時準急
1994-7-16 三条
 京都三大祭の中でも最大規模の祇園祭が四条駅周辺で行われるが,京阪では宵々山の7月15日,宵山の7月16日には,往路に淀屋橋発三条行臨時特急,復路に臨時特急・臨時急行等を運転している.なお山鉾巡行の7月17日には臨時列車は運転されない.
 往路の淀屋橋発三条行臨時特急は,例年17〜18時台に15分毎に4本程度運転されていたが,1995年は,宵々山には淀屋橋発17:07,17:37,宵山には17:37,18:07のそれぞれ2本ずつしか運転されなかった.今や三条行の特急が見られるのはこの祇園祭の時くらいになってしまった.
 復路は非常に混雑するため多数の臨時列車が運転される.1995年は宵々山・宵山両日とも三条発淀屋橋行の臨時特急・臨時急行が21時台には20分間隔,22時台には30分間隔で運転され,定期列車と併せると特急・急行とも21時台は約10分間隔,22時台は約15分間隔で運転された.淀又は樟葉行の臨時準急も3本運転された.その他出町柳又は三条発淀又は寝屋川市行の臨時普通が数本運転されたほか,一部の普通列車の運転区間が延長された.出町柳23:20発樟葉行臨時準急と出町柳23:52発淀行臨時普通は8000系で運転され注目を浴びた.また交野線・宇治線でも夜間の運転本数を倍増し,京津線京津三条〜四宮間でも20時以降準急・普通とも増発された.

(2)天神祭

▲「臨」マーク付きの
天神祭臨時区間急行
1995-7-25 淀屋橋
 大阪の夏の風物詩天神祭が天満橋駅近くの大川で行われる.京阪ではメインイベントの船渡御や花火が行われる7月25日夜に臨時列車を運転する.
 1995年は,21時台に淀屋橋発萱島行と枚方市行の臨時区間急行をそれぞれ20分間隔,22時台に淀屋橋発樟葉行臨時準急と淀屋橋発萱島行臨時区間急行をそれぞれ20分間隔で運転されるなど,合計準急5本,区間急行8本が増発された.その他,枚方市行や香里園行の定期準急・区間急行が樟葉まで延長運転された.

(3)大文字五山送り火

▲8000系で運転された
淀行臨時普通
1995-8-16 出町柳
 京都の夏の風物詩大文字五山送り火が8月16日に行われ,それぞれの山で「大文字」「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」が浮び上がる.特に「大文字」の見物ポイントは出町柳駅・丸太町駅付近の鴨川堤であるため,京阪は夜に特急・急行を大増発する.
 1995年は,往路は淀屋橋発17:51から18:36まで15分毎に出町柳行臨時特急が4本運転された.一方復路は,20〜21時台に出町柳発淀屋橋行の特急・急行が倍増され,それぞれ10分間隔で運転された.特急が三条で急行を抜かすなど通常ダイヤを半分無視したようなダイヤであった.特急は22時台にも倍増され約15分間隔で運転された.その他,淀行の準急が2本増発され,普通列車も三条始発のものが出町柳始発に変更されるなどした. なお出町柳23:20発淀行臨時普通は8000系で運転された.宇治線・交野線では数往復増発され,京津線京津三条〜四宮間で19〜23時頃まで約3〜9分毎に運転された.なお上下とも一部の臨時特急に6000系8連が使用され注目を浴びた.(下の大文字時刻表参照)
20時 21時 22時 23時 24時 斜字…臨時

<行き先>
モ…守口市
ネ…寝屋川市
ク…樟葉
ヨ…淀
無印…淀屋橋
特急 01
12
20
30
40
50
00
10
20
30
40
50
00
12
27
39
57
   
急行 02
17
27
37
47
57
07
17
27
37
47
57
10
29
44
00
26
 
準急     48ヨ 08ヨ
40ヨ
 
普通 08
22
32ヨ
42
52ヨ
02
12ヨ
22
32ヨ
42
52ヨ
03
15
21ヨ
41
50ネ
15モ
20ヨ
43ネ
01ク
17ヨ
▲大文字時刻表(1995年8月16日出町柳駅)

(4)沿線の花火大会

1.びわ湖花火大会
 毎年8月8日に浜大津駅付近で開催される.16〜23時頃まで京津線浜大津〜京津三条間では約3〜7分間隔で運転される.
2.宇治川花火大会
 毎年8月10日に宇治駅付近の宇治川河川敷で開催される.18時半〜22時半頃まで宇治線中書島〜宇治間では普通が大増発され約3〜5分間隔で運転される.
3.くらわんか花火大会
 毎年8月の日曜日に「枚方まつり」の一環として樟葉駅付近の淀川河川敷の樟葉ゴルフ場で開催される.1995年は27日に行われ,20時以降,樟葉発淀屋橋又は天満橋行の準急7本と区間急行5本,樟葉発出町柳行の普通が3本増発された他,上下とも一部普通列車の運転区間が延長された.交野線も数往復増発された.

VI 団体列車


▲団体列車
1995-10-6 京橋
 京阪では滅多に団体列車を運転していなかったが,1995年秋に一般向きの団体列車が設定された.
 これは1995年の10・11月の平日に,80名以上の団体客の申込があれば運転されるもので,貸切料金は不要で普通運賃だけで乗車できる.天満橋8:47発三条9:50着の「団体2号」と京橋8:58発八幡市9:36着の「団体4号」の2本が設定された.停車駅は急行停車駅プラス萱島であった.表示幕は「臨時(EXTRA)」であり,「団体」の標識板が取り付けられた.また京津線でも,「団体2号」から接続する京津三条10:04発浜大津10:28着の団体列車が設定された.しかし,申込がほとんどなく,運転された日はごくわずかであった.

VII おわりに


 たいへん詳しく述べたものもあれば,調査不足のためあいまいな表現で終わってしまったものもあるが,ご容赦願いたい.しかしこの文章を読んで,「京阪は行事に対して積極的に臨時列車を運転している」ということをわかっていただけたと思う.最後に,今後再び「宇治線や交野線直通の臨時急行」など,ユニークな臨時列車が運転されることを期待してこの文章を終わる.

<参考文献>
『鉄道ピクトリアル』各号 鉄道図書刊行会
『くらしの中の京阪』各号 京阪電気鉄道

(注意)
 これは,1995年秋に発行した大阪大学鉄道研究会機関誌「パンタグラフNo.49 <特集>京阪電気鉄道」の原稿です.したがってデータなどはすべて当時のものとなっています.現在は変更になっているものがあるかもしれませんのでご注意下さい.
 この原稿の無断転載は禁止します.

この原稿を書き上げた後,今までに変更になった点がいくつかあります.以下に確認できたものだけ列挙します.

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