Guitar Graphic

「ミスター・ギブソン」と呼びたくなる
マイク・マグワイヤ氏。
彼のGMCシエラのバニティプレートには
「ギター識人」とある。(拡大写真)

デザイン・エンジニアのジム・ハッチンス氏。
彼は15年前にミシガン州のカラマズ工場
からやってきた名人だ。(拡大写真)
ギターは
木の固まり
なんだ
 Web CG の取材を終えて、いよいよギブソン工場取材の日がやってきた。まるで子供が遠足の朝を迎えたような気分だ。
 ギブソン本社のある場所は、ダウンタウンから北へ40分程度のドライブ。サターンのラジオから流れてくるカントリー・ミュージックに耳を傾けながら、ギブソン社へ向かった。
 残念なことに読者のみなさんは、ギブソンの工場を見学することはできない。一般の見学ツアーは行っていないのだ。今回はギブソン・ミュージカル・インストゥルメンツの山名氏のコーディネイションにより取材が実現した。読者を代表する気持ちで取材をすることにしよう。
 ギブソン社に到着し、カスタムショップの受付で10分ほど待たされる。受付の壁面には、ギタリストたちのメッセージが書かれていた。「マイク、キミのつくるギターは最高だよっ! ラリー・カールトン」なんてメッセージがたくさんある。さすがギブソン本社だと感心していると、受付にカスタムディビジョン・オペレーションマネージャーのマイク・マグワイヤ氏が我々を迎えにきてくれた。
 ギブソン社は、現在2つの部門でギターを生産している。カスタムショップと量産品工場だ。カスタムショプは、特注品、リペア、リイシュー(復刻版)など特別なギターを制作している。量産品工場では、レギュラー使用のギターが生産されている。
 マグワイヤ氏は、長年にわたってギブソンのギターをつくってきた。ギブソンを愛用している世界のトップギタリストたちからも信頼されている。
 そんなマグワイヤ氏に質問をしてみた。聞きたいことは、2つの質問だけだった。
「 59年 レス・ポール・サンバーストのリイシューの特徴は? 」
  マグワイヤ氏は答える。
「とても軽いマホガニーのボディに、ラージネック、メイプルトップ、マホガニーバック、ベストサウンドのためには木材の構成が最も重要なんだ。ここでは当時と同じマテリアルで、同じようなやり方でつくっている。ピックアップも当時と同じように巻いているよ」
 彼は40年を経過した鳴りとルックスの経年変化を限りなくリエルに再現することをエイジド・フィニッシュ (Aged Finish)と言っていた。
 ボクのようなギター・キッズにとって、59年レス・ポール・リイシューは夢のようなギターかもしれない。実際、このリイシューモデルを買っているのは、少年時代ギブソンに憧れたおじさんばかりのようだ。ギターが弾けなくても、そんなことは関係ない。大切なモノとして眺めているだけで満足しているのも本当の話。しかし、このギター高価なのだ。
 2つ目の質問は、こうだ。
「クオリティの高いリイシューモデルがあるのに、なぜわざわざヴィンテージ・ギターを買う人がいるのか? 」
 マグワイヤ氏は答える。
「フェラーリと同じでしょう。新しいものが好きなひともいれば、古いモノを好む人もいる 」
ん〜、なんてうまい答えかたなんだ。と、ボクは思った。本当は「リイシューモデルは、本物の59年とくらべていい音がしますか? 」と聞いてみたかった。しかし、マグワイヤ氏の答えはとても正しいと思った。好みの問題なんだということだ。
 さて、いよいよカスタムショップの工場の中へ案内される。案内役は、デザイン・エンジニアのジム・ハッチンス氏だ。彼は15年前にミシガン州のカラマズ工場(カラマズ工場は後に閉鎖された)からやってきた。最初に手がけたモデルは、チェトアトキンス・カントリージェントルマンだそうだ。
 さぁ、ギブソンの工場だ」と期待に胸を膨らませて工場の内部に入る。ギター工場というよりも木工製品の工場のようだ。加工を待つ木材が山積みになっていて、木を削り出しているクラフトマンが目立つだけだ。たしかに、エレキギターといえどもギターは木材でできている。木の鳴りがギターの命と言ってもいい。ギターは良質の木材を選ぶことからはじまるのだ。ギターは、木の固まりなのだ。
 人気モデルは、やはりレス・ポールのようだ。一目でそれと判るレス・ポールのアーチド・トップが工場のあちらこちらに置かれていた。飾りものとして1ついただきたかったなぁ。
 けっこう機械を使う行程が多いと思っていたし、ギターも自動車工場のように大量に生産されているものかと想像していた。工作機械は新しいモノを使ったりしているが、ギターのつくり方は、基本的には昔から同じやり方をしているそうだ。ギターづくりはそれだけ繊細な作業が要求される。木材を削り、接着、塗装 、磨く、マイクなどの電気部品を装着。すべての行程がクラフトマンの「手」によるものだ。ネックをボディに組み込むことも一本ずつ慎重に微調整をしながら行われる。ラッカー塗装で美しいサンバーストの風合いもむずかしい。バインディングに被った塗料を剥がしてゆく作業もある。どれを取っても高い精度と熟練の技ばかりだ。1本のレス・ポールを仕上げるのにかかる日数は2週間。パーフェクトに仕上げるには、これだけの時間がかかる。部品もほとんどのモノを自製しているそうだ。
 量産品工場も見学させてもらった。カスタムショップよりも規模が大きい。塗装行程を待つギターがね工場の天井からベルトにぶら下がり運ばれてくる。レス・ポールやSG、335の多さに驚いた。 塗装行程を終え、バフィングされたボディには、深みのある輝きがここで生まれる。検品タグを付けてパッキングを待つギターたち。このうちの何割かが、日本のギターキッズたちの手に渡るのだ。NEXT>>>
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