「今日の森はなんて静かでしょう。枯れ枝の森は葉がさやさやと鳴る音はなく、ただ、そよ風が枝をゆらして吹いていくだけ! 遠くの浜辺によせては返す波の音のよう。森はなんてすてきでしょう! 美しい木々よ!」
『アンの青春』第10章
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 すっかり枯れ葉の落ちた森のなか、しんと静まりかえった木立のあいだを、アンは歩きます。冬の風がふいて、梢(こずえ)から梢へと渡っていきます。その音色が、アンの耳には、まるで潮騒のように響くのです。寂しい枯れ木にむかって、美しい木々よ! と語りかけるアンの優しさ、心の美しさを思います。
冬の森の美しさを、私たちも、もう一度、見つめ直してみたいと思います。
松本侑子
『アンの青春』(モンゴメリ著、松本侑子訳、集英社)より引用
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