涼しい風が、もみのしげった西の丘のふもとから、収穫を終えた畑をわたってきて、ポプラをさらさらと鳴らした。明るい星が一つ、果樹園の上にまたたいている。そしてホタルの群れが、「恋人たちの小径」をかすめるように飛びまわり、シダのしげみや、さやさやと葉が揺れる木の枝の間でぽぉっと光ったり消えたりした。アンは話をしながら、それを眺めていると、やがて風と星とホタルが一つにとけあい、えも言われぬほど甘美で無限のものへと変わったように感じられた。
『赤毛のアン』第22章
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夏の夕べの光景、幻想的です。たそがれの涼しい風を楽しんでみて下さい。
松本侑子
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『赤毛のアン』(集英社文庫、松本侑子訳、800円、2000年)より引用/2001.6.7. |