「ああ、マリラ、とても魅惑的なひとときだったわ。生きてきた甲斐があったって感じたの。もう二度と牧師館に呼ばれなくても、この気持ちはいつまでも心に残るでしょうよ」
『赤毛のアン』第22章
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牧師館に呼ばれてうっとりするような時間を過ごしたアンの言葉です。私も生きてきた甲斐があったと感じ、今でも心に残っている経験をしたことがあります。アメリカにいた女友達とパリで落ちあい休暇をすごした春のことです。ホテルのロビーで彼女が私のために弾いてくれたショパンを聴いているうちに感動のあまり涙がこぼれました。8年前、『赤毛のアン』を二年がかりで根をつめて訳し終えた直後に出かけた休暇でのことです。生きていた甲斐があったと心底思いました。みなさんもすばらしい休暇をすごされましたか?
松本侑子
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『赤毛のアン』(集英社文庫、松本侑子訳、800円、2000年)より引用/2001.5.13 |