■ 秘宝堂 [Nikon EL2] Page 1/3

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Photo.1:Nikon EL2

1.Introduction

 Nikon EL2 は、Nikomat EL/ELW のスキンチェンジと思われているが、その実、中身は全く異なるのである。1972年発売の Nikomat EL、1976年にマイナーチェンジバージョン Nikomat ELW の発売、そして1977年の Nikon EL2 の発売と、ニコン様は立て続けに「ELシリーズ」をデビューさせている。そこでハタと気がつくことがある。そう、EL2 は、"Nikomat" ではなくて "Nikon" なのである。Ai方式(後述)以前のニコン様一眼レフで、カメラブランド "Nikon" を与えられたのは、
「F一桁シリーズ」のみであった。EL2は、「F一桁シリーズ」以外の一眼レフでは初めて "Nikon" ブランドを与えられたのである。

 では、何故、"Nikomat" ではなく "Nikon" なのだろう?即ちこれは、冒頭に述べた「中身が全く異なる」ことを述べるに他ならない。


Photo.2 :"Nikon" 銘板

2.Nikon or Nikomat ?

 Nikon EL2 は、レンズの開放F値を自動的にボディに伝達する機構=「Ai方式(開放F値自動補正方式)」を採用した(※1)。それまでのニコン様(従来方式カメラボディ)は、絞りリングに設けられた露出計連動爪(通称「カニの爪」)をボディ側から出ている露出計連動ピンと連結し、手動で開放F値をボディに伝達(絞りリングの往復操作;通称「ガチャガチャ」)させる必要があった。この操作はなかなか煩雑で、特にニコマート系ではレンズのF値を常にF/5.6にして脱着するなどレンズ交換を頻繁に行う際には、非常にわずらわしいものであった。これを一気に解決したのが先の「Ai方式」である。

 ※1:同時に Nikon F2photomicA, Nikomat FT-3 がデビュー。

 しかしAi方式の搭載よりも、露出計の改良に重点が置かれているのは明らかであった。測光素子にSPD(シリコン フォト ダイオード)を採用したのである。今でこそSPDが主流であるが、それまでTTL一眼レフの測光素子と言えばCdS(硫化カドミウム フォトセル)であった。低電圧、低消費電力で動作し、安定性に優れているからである。だが、明暗の急激な変化や低照度時の応答性など、CdSの抱える問題は少なくなかった。そこで Nikon F2photomicSB で実績を積んだSPDを採用することにより、現代のカメラと同等の応答特性を得た。これは取も直さず Nikomat ELW のコンセプトである「露出と巻上げの自動化」を、ここで完成させたと言っても過言ではない。

 このSPD搭載による回路の設計変更は、内部の基盤をそっくり変更させる結果となった。回路の集積化がさほどでもないその当時、Bi-MOS構造カスタムICによってその大幅変更を見事に吸収し、更に現代では常識化した「フレキシブルプリント基盤」の実装を、初めて本格的に採用したのであった。

 その他にも、ISO感度指標(当時はASA感度)の12〜3200まで対応、露出補正指標(-1〜+2EV)の追加、シャッター速度に8秒を追加、シンクロ接点の自動切換え(フラッシュバルブ切り替えスイッチの省略)などの改良が施されている。


Photo.3:軍艦部

 このように大幅な改良が行われた内部に比べ外観の変更がおとなしいため、スキンチェンジと思われているようだが、それは全くの誤解である。ニコン様が、当時の新世代ニコンである「Ai方式」を携えて世に問うた最初のAE一眼レフ、それが "Nikon EL2" であった。

3.Operation

 Nikon EL2 の基本操作は、非常に明快かつ簡単。巻き上げレバーを予備角まで引き出すことによって電源スイッチを入れ、シャッターダイヤルを「A」マークに合わせ、絞りリングを操作し、シャッターボタンを押すだけである。#ちゃんとピントは合わせてね(^^;。

 フィルムの装填は、ニコン様らしく確実な方式である。アンチニコンファンの中には、これを以ってニコン様を毛嫌いする傾向があった。言わばその「ニコン方式」とでも言うか、若干、気難しい面があるのは確かである。やはりこれも「ニコン様のお戯れ」の一つであろう(^^;。

 余談が長くなってしまったが、フィルム装填のコツは、フィルムのベロ先端部をしっかりと巻き取り軸に噛ませればよいのである。そして巻上げ操作を一回以上行い裏ブタを閉じれば、確実に装填できる。

 フィルムカウンターが "1" を指すまで空シャッターを切り、ご機嫌を伺う(^^;。まず有得ない話であるが、ご機嫌麗しからざる場合は、お供してはいけないのである(^^;。


 ファインダー内表示は至ってシンプルで、スプリットイメージとマイクロプリズムを併用した「K型スクリーン」が標準で採用(※2)され、視野左にAマークから順に1/1000秒から8秒およびB(バルブ)を含むシャッター速度の表示がある。シャッターダイヤルで選択されたシャッター速度は、透過式の「青いバー」で、適正シャッター速度は、「指針」で表示される仕組みとなっている。


Photo.4:ファインダー内表示

 シャッターダイヤルをAマークに合わせた絞り優先時(photo.4)には、青いバーは一番上のAマークに重なっており、指針が動作シャッター速度上にオーバーラップする形となる。この時のシャッター速度は、無段階にニコン様が調整してくださる。

 マニュアル露出時には、指針と青いバーを重ねれば、ニコン様が導き出した適正露光となるのだ(中間シャッターの使用は不可)。これは、Nikomat EL で採用され、続く ELW, EL2, FE, FE2 を経て、2001年07月発売予定の FM3A にも採用されるなど、非常に視認性の良い、感覚的にも分かりやすい表示方式だ。絞り情報がファインダー内に無いこと(EL系)や、背景が暗いときなどに露出表示が見難くなるのは、まぁ、お愛嬌であろう(笑)。
※2 Nikomat EL では、スプリットイメージのA型スクリーンとマイクロプリズムのJ型スクリーンを搭載したボディを、それぞれ用意していた(J型ではなく両者を合体したスプリットマイクロ式のK型スクリーンであったかもしれないが、少なくとも二種類のスクリーン搭載モデルを用意していた。マイナーチェンジバージョンである Nikomat ELW には、K型スクリーン搭載モデルがあった)。
しかし Nikon EL2 には、K型スクリーン搭載モデルしか存在しない。

 自動露出一眼レフに必須と思われる露出記憶装置(AEロック)も、きちんと備えられている。セルフタイマーレバーを、レンズマウント側に倒しこめば良いのである。この方式は非常に使い易く、後の FE や FE2 にも継承されている。

 

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