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Nikon New FM2様のTTL

 さて、このご神機様のTTLは中央部重点測光方式が採用されており、今時の多分割測光と比べるとシンプルで分かりやすく、個人的にはこれに勝るものはないと思っている。特にNew FM2様の中央部重点測光方式は他のご神機様よりも素直な反応をしてくれて、扱いやすいので大好きだ。

 もちろん、TTLに関しては電池がなければ測光出来ないので、長期の旅行などの時には予備電池を用意する必要があるかもしれない。ただ、そう簡単になくなるものではないのでナーバスになる必要はない。むしろ「電池が長くもつから」と安心していると思わぬ落とし穴になる場合があるので、こういったケースに気を付けるべきだろう。

 ところで、最近New FM2様を購入した人から露出計の見方がわからないという質問があり、使い慣れない人にとっては意外に難解なものかもしれないと感じたのでここで説明したい。


(この図は私の持っているNew FM2使用説明書を参照して作成されています。)

 上の図はファインダーを覗いた状態を再現したものである。向かって右側中央に「+○−」と表示されているところがTTLの値を示す部分である。ちなみに実際には「+○−」のLEDがすべて表示されることはなく、図の中央フキダシの中に示されているのがすべてのLED点灯のパターンである。

 「(3)適正露出」のように「○」だけが表示されている時が適正露出である。

 「(2)一段以内露出過度」のように「+○」が点灯している場合には適正から一段以内の露出オーバー(露出過度)であることを示している。ここで勘違いしないようにして欲しいのは「一段以内の露出過度」であって「ちょっとだけ露出過度」とは限らないというところだ。最大で適正から一段分(一絞り分)の露出オーバー(露出過度)の場合もあるので気を付けていただきたい。

 そして「(1)一段以上露出過度」の「+」は一段以上の過度の露出という意味だけで、どの程度の過度なのかはこの表示からは読み取ることは出来ない。1段ちょっとの露出過度の場合もあるし、2段も3段も4段もオーバーなこともあり得るのである。

 以上のことを考慮して、反射率の高い被写体(白色、黄色などの被写体)を撮影する時の露出補正のやり方を説明しよう。仮に2段明るく(+2)補正する必要がある場合には、必ず「(3)適正露出」の「○」の状態から絞りを2絞り開けるか、シャッタースピードを2段下げる等の作業を行い露出補正をする必要がある。この表示形式の場合には面倒でも「(3)適正露出」の状態から絞りやシャッタースピードを調節する必要があるのだ。

 ちなみに「(4)一段以内露出不足」、「(5)一段以上露出不足」の場合には、上記とはまったく逆になるので、すべてを置き換えて考えて欲しい。

補足:      カタログによると「+○−」の表示の詳細は以下のようになる。
     
1段以上の露出オーバー
+○ 0.2段〜1段露出オーバー
適正露出
○− 0.2段〜1段露出アンダー
1段以上露出アンダー
       従って、厳密に書くと「○」のLED点灯から「+」または「−」のLEDを点灯させるには「○」のLED点灯から最大で1.2段以上の絞り(又は絞りとシャッタースピード)を動かさなければならないケースが出てくるということになる。

MD-12が動かない

 ついでに、New FM2様にMD-12様を装着して使用しているときに突然動かなくなる場合があるので、この時の対処方法を書いておこう。難しくはないのだが、知らないとかなりアセると思うので、この現象にあったことがない人も目を通しておくと良いだろう。

 稀にではあるが、MD-12様が突如として動かなくなることがある。この現象はMD-12様をボディーから外した状態で電源を入れて、MD-12様のレリーズボタンを押してしまった時に上の写真の部分が回転しなくなってしまう現象の時と同じ対処をする必要がある。

 上の写真を見ればすぐに理解してもらえると思うが、この現象に見舞われた時には回転部分がロックしてしまい動かなくなっているはずなので、この部分を強制的に反時計回りに回してやればすぐに問題は解消する。ボディー装着時にこの現象が発生してしまった場合には、ボディーからMD-12様を外すことなく対処することは出来ないので、イラつくとは思うが速やかにボディーから外して対処して欲しい。

 なお、MD-12様が電池切れで動かなくなった場合にはNew FM2様の巻き上げレバーとシャッターボタンを使い撮影すれば、MD-12様を装着した状態で通常の撮影を行える。こういった電池に頼らなくても撮影できるところが私は大好きである。

New FM2様を語り尽くせない

 つらつらとNew FM2様について書かせていただいたが、残念ながら私の文章力ではNew FM2様の偉大さは伝わらなかったと思う。撮影するにあたって必要最小限ではあるが不足のない装備の素晴らしさを表現することが出来なくて残念だ。たぶん、このシンプルな味わいは使ったものだけが堪能できる魅惑の世界なのだろう。

 今時の多機能カメラにも、いじくりまわす楽しさがあることは否定しないが、機械に惑わされることなく撮影に集中できる素晴らしさを感じることは出来ない。そしてバッテリーの寿命を気にすることなく開放された気分で撮影に挑むということも、今のカメラやデジタルカメラでは当分は望めそうにない。

 別に私は「昔は良かった」などと感傷に浸るつもりはないのではあるが、今のカメラが進歩をするために捨ててしまったすべてがNew FM2様の中に残っているのである。優秀且つ信頼を置けるカメラとしての条件をNew FM2様は備えている。巷で言われるように、これがカメラの基本であり究極でもあると思う。

 最後に特筆しておかなければならないことを書いておこう。それはNew FM2様のお値段の安さである。ともすれば何十万円もするご神機様達の脇役にさせられてしまうところではあるが、カメラの価値を価格で決めてはいけない。値段が高いからと言っていい写真が撮れるわけではないのだ。この部分が貧乏人である私がNew FM2様を愛して止まない最大の理由である。

(2000/9/6 大狸ヒロ)

 

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