■ ニコン様に導かれた時 Page 2/2

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 その日、父親は初めて一眼レフカメラを購入した。

 まるで壊れ物を扱うかのように箱から取り出されたブラックボディのカメラ。箱にはNikon FEと書かれていた。

 同じように、丁重に箱から取り出されたAi Nikkor 50mmF1.4がFEにセットされる。脇で遊んでいた息子は、その光景を見て父親に話しかけた。

 「お父ちゃん、カメラは日本光学よりキャノンの方がかっこいいよぉ。」

 父親はカメラから目を話さず、たしなめるように息子に話しかけた。

 「日本光学はなぁ、あの「大和」を頂点とする帝国海軍の光学機器を作るために生まれた会社なんだぞ。」

 「大和の15m測距儀のレンズを日本光学が作ったの?」

 「そうさ、武蔵もそうだぞ」

 「武蔵も!」

 「それにな、大戦中に沈められた船から回収された日本光学の双眼鏡は、

 長い間海水に浸かっていたのにレンズを磨けば、使える状態だったんだぞ!」

 「本当?」

 「ああ、本当だとも。お父ちゃんのカメラはその日本光学、いやニコンのカメラなんだ。」

 「すごいや、僕も大きくなったら、ニコンのカメラを使うぞ!!!」

 そして月日は流れ・・・

 「では、こちらがお買いあげのカメラです。」

 「どうも。」

 彼が大事に抱えた袋の中には、ニコンF5と書かれた箱が収まっていた。

(HARI)

 

 不信心なので無いです。痛てて!、石が飛んできた。

(丸前)

 

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