昔話      

-17. 昔話 001118


それでは昔話をしよう。むかしむかし、あるところにおじいさんがいました。おじいさんの他に、この世には何も存在しなかったので、おじいさんはたいそう寂しかったのです。そこでおじいさんは、おばあさんをうみました。おばあさんは、川と洗濯物をうみ、洗濯物は洗濯という行為をうみました。川は川上をうみ、大きな桃をうみました。大きな桃は拾われるという行為をうみ、おばあさんはまな板と包丁をうみました。おばあさんと桃とまな板と包丁は、二つに切ることをうみ、二つに切ることはももたろうをうみました。ももたろうは吉備団子とおばあさんの愛情をうみました。ももたろうはおにが島をうみました。ももたろうは猿と犬と雉と家来とお供と鬼の大虐殺と宝物をうみました。

おばあさんはたいそうよろこびましたが、おじいさんは大虐殺をうみだしたももたろうと、ももたろうをうみだしたのがそもそもは自分だということがいやになってしまい、消えてしまいました。おじいさんが消えてしまったので、おばあさんと川と洗濯物と洗濯と川上と大きな桃と拾われるとまな板と包丁と二つに切ることとももたろうと吉備団子とおばあさんの愛情とおにが島と猿と犬と雉と家来とお供と鬼の大虐殺が消えてしまい、あとには何にも残りませんでした。この昔話を話している老人も、聞いている子供達も、このお話も消えてしまいました。


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