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179. ∞ 20141107


 

  生まれたときから横たわったままの姿勢である∞は動くことを嫌った、なにしろ自重が∞であるので体を動かそうとしたならばそれに要するエネルギーが∞となり、この宇宙に存在する質量をすべて体を動かすエネルギーとして消費する必要がある。その結果この世界の質量は∞の他は0となり、∞と比較するものが消失することから∞自身も存在することが出来なくなる。まだまだ消失はしたくないと考える∞はそのままじっとしている。

 しかしながらさきほどから小さい羽虫が∞の周りを∞の軌跡を描いて飛び回っている。じっと我慢していた∞であったが、どうにもこうにも耐えられなくなって羽虫を追い払おうと腕を振り上げたその時

φ

 この世界には何も存在しない。存在しないという記号以外は存在しない。それは数字のみが存在する世界を形作るための基礎ではあるが数字であるとは言えない。いずれ十分な時間が与えられればこの世界に再び数字が出現するだろう。

 何度でも、何度でも。


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