104. かびぱん(20071223)


 カビの生えたパンは、机の引出しの奥に忘れていたものだった。

 小学生の頃の私は本当に馬鹿者であって、給食の食べ残しを机の中に入れたまま忘れてしまって数日後発見されるということが日常茶飯事であった。いや、給食だから日常ミルクパン事であろうか。

 数日放置された食パンは、たいていの場合見事にカビが生えていた。ここでペニシリンを発見していれば偉人の仲間入りなのであるが、発見しなかったので仲間由紀恵ファン止まりである。カビの生えたパンは、そのままゴミ箱行きである。どうせ捨てるなら机の中に入れないで、すぐ捨てればよかったろうに。まったく、木の枝に餌を突き刺して忘れてしまう もず 並みの頭脳である。もずと言えば、もずにヒントを得たファストフードがモズハンバーガーであることは良く知られている。また、もずがあっという間に溺れてしまう様子を称して海のもずくと言われているところである。これ、豆知識な。

 話をパンに戻すと、机の中に放置されるのはもっぱらパンばかりで、おかずはさすがに机の中に放置するのはまずいということは分かっていた様だ。さすが俺。食器も確保しなければいけないし。たまに出てきたデザートは忘れずに食べていたから机の中に忘れようもない。プリン、ゼリー、白桃のシロップ漬、バナナ、冷凍ミカン。デザートとは名ばかりで、ケーキとかミルフィーユとか金平糖とかのいわゆる甘いお菓子はでてこなかったなあ。時代がうかがわれる。

 牛乳も机の中に忘れるには不適である。私の時代はまだ牛乳瓶の時代だったから、飲みかけの牛乳を入れようと思えばどうしても机の中にこぼれてしまう。こぼれた牛乳を放置しておけば、これはもうなんというか異様な臭いが発生して大変なことになってしまう。どうしてもパンと同様に机の中に忘れようとするならば、フタをあけずに丸ごと机の中に設置せざるを得ない。なんでわざわざそういうことをしようと思うか。いやしない。海にもずを連れて行くことくらいしない。

 と思って何気なく自宅の机の中をひょいと覗いてみると、いつ入れたのか牛乳の紙パックが入っている。牛乳のブリックパック内部は、いちおう殺菌されているはずなので、そんなに早くは雑菌が繁殖して腐敗するということは無いと思うが。恐る恐るハサミで切り開いてみると、嫌な臭いはしないようだ。中では透明な液体の下で沈んでいる白い塊が見える。おお、ひょっとして雑菌が入らないから、乳酸菌が繁殖してヨーグルトができたのか?

 いいえ、ケフィアです。

 とっぴんぱらりのぷう。


第八回雑文祭 参加作品

■書き出し: ○○は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
■縛り: 金平糖を文章のどこかに入れる。
■結び: とっぴんぱらりのぷう。


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