メナモミとオナモミ

メナモミ                        オナモミ

秋も中旬の頃、散歩道の道端や山裾にメナモミ(雌ナモミ)、オナモミ(雄ナモミ)とナモミの名が付く花が目に付くようになる。
両者共同じキク科の植物ではあるものの、花や全体の印象は写真の様に全く異なり、属も違う別種の植物であるが、その性質から同じ様な名前が付いている。
両者とも生葉を揉んで虫刺されの箇所に貼り付ける薬草であり、又、果実が人や動物に引っ付いて運ばれる、いわゆる 「ひっつき虫」 である。( 「引っ付き虫いろいろ」 の項参照)
ナモミの名前の由来もこの性質から来ており、一説には生葉を揉んで貼る事から 「生揉む(なもむ)」 から来ているとされ、又、他説では果実が動物に引っ付いて運ばれる事から 「引っかかる」 と言う意味のナズムから来ているとする説もある。
いずれにせよ、その性質から名前が付いており、メナモミ(雌ナモミ)、オナモミ(雄ナモミ)の雌と雄は全体の感じから来ている。 

コメナモミ(小雌ナモミ)

オオオナモミ(大雄ナモミ)

メナモミは遠くから見るとアメリカセンダングサが咲いているように見えるが、近づくと何となく雰囲気が異なり、よく見ると花も葉も全く違う植物である事が分かる。( 「センダングサいろいろ」 の項参照)
メナモミとコメナモミがあり、大きさや毛の多さ等で区別されるが、花は全く同じで、表題の写真の様に特異な形をしており、総包の腺毛から粘液を出し、これで人や動物に引っ付く。 秋になると果実が衣服のあちこちに埃(ほこり)のように引っ付くのでアキホコリの別名がある。
煎じたものを飲むとおできや腫れ物の解毒、鎮痛の薬草となり、前述したように、生葉は虫刺されの薬となる。

一方、オナモミは子供の頃、果実を投げ合って遊んだ懐かしい植物であり、いわゆる 「引っ付き虫」 の代表格で、マジックテープが作られるきっかけにもなった。
史前帰化植物であり、900年代に書かれた 「本草和名」 にその名があるほど古くから知られた漢方の薬草で、解熱、発汗、頭痛薬として広く用いられた植物であるが、現代ではほとんど見られず、代わりに北米原産で昭和初期に帰化したオオオナモミが繁茂している。 現代では一般にはこのオオオナモミの事をオナモミと呼んでいる。
薬草にもなるが、牛や豚が中毒を起こすことでも知られている。 

次へ

最初のページへ戻る