45-2:島根県 安来市 古志野城 



所在地:島根県 安来市 新十神町

取材時期:2009年5月

ジャンル:展示系

珍スポ度:☆☆☆☆(☆五個が最高得点)

テレ朝系の珍スポ紹介番組「日本珍百景」の特番で大賞をとった城ですね。この番組はあまりグッとくる物件が無く、期待せずにチェックしていたところ思わず引き込まれてしまったスポットです。是非、この連休中に観ておかねば!と安来(やすぎ)は十神山(とかみやま、と読む)の麓に来てみました。ネット上には詳細な場所までは記載されていなかったのですが、番組の内容から海沿いであると思われたので、そちら方面にナナ助を向けるとすぐに発見!道ばたに車を停め取材開始である。テレビで観るよりも迫力があり、しかも細部までしっかり造り込んである。これが本当にセルフビルトなのか!驚きの物件なのだ。



家の前で五重塔や自宅兼城をカメラに収めさせて頂いていると、散歩するおじさんに声を掛けられた。折角の機会なので、そのおじさんにお話を伺ってみた。なんでもこのご主人が基礎から自分で造ってしまった城で、2000年の鳥取県西部地震でもビクともしなかったとのこと。周りの民家は傾いたり倒壊したところもあったそうだ。おじさん談によると、家の人に聞いてみればお話を聞かせてもらえるかもよ・・、とのこと。そういうことなら迷惑を承知でお声かけをさせて頂くことにした。


丁度、玄関に数名の近所の奥様達が入っていったところなので、家の人はいるらしい。玄関の扉をノックし、玄関先で奥様達と話し込んでいるおばあちゃん発見。そうそう、この人が珍百景にでていたご主人の奥様ですね!お庭の写真を撮らせて欲しい、とお願いすると、なんと快く「城」の内部も見せてくれるとのこと。近所の奥様達との会話も一段落し、おばあちゃん、城の入場門側に廻り中から開城!立派な門をくぐり、図々しいとは思いながらも城内部に押し入らせて頂きました。

内部は基本的に普通の和風の居間である。座卓があり、縁側があり・・・、でも壁には巨大な機関車の絵。床の間にはピカピカのトロフィーが。トロフィーは例の大賞の証であるが、機関車は?じっくりおばあちゃんの話を聞いてみると、このセルフビルト城を建てた旦那さんは元国鉄マンで長年市会議員もやっておられた方であり、鉄道つながりで機関車の絵を描くようになったらしい。精密な鉛筆画である。おばあちゃんの話は城建築時の苦労話から、旦那さんの芸達者ぶりにまで及ぶ。また珍百景の撮影現場での出来事などもおもしろおかしく聞かせて頂いた。



さらに、城上層部の取材許可も頂き、天守閣最上階の窓から望む日本海の景色は素晴らしいの一言である。残念ながら当の旦那さんは体調を崩され、現在入院中で、直接お話をお聞きすることはできませんが、奥様から貴重なお話を聞かせて頂き、大満足でしたね。しかし、築城を決意したのが御年70歳!と言うのがまさに驚き。しかもこういった建築関係の仕事をしていたわけではないところが、あの沢田夫妻のサワマンと違う点ですね。お庭の五重塔は戦時中の戦死者を弔うために100%セルフで、城の方は40%手作りとのこと。シャチホコの設置では旦那さん毎クレーンで吊り上げられ、揺れながらなんとか所定の位置に収めたらしい。本人が落ちれば命にも関わる怪我は必死だし、シャチホコを落とせば、これまで築いてきた城に大きなダメージが・・。そんななか、無事に城を完成させたのが約10年前。知らなかった・・・、こんな大変な物件があったとは。セルフビルト系といえば下呂の五重塔もいい味を出していましたね。


このほか旦那さんは、書、陶芸にも通じ、とてもマルチな方なのだそうで、焼き物に関しては五重塔前にご自分の窯を持つほどである。しかも失敗作も無駄にせず、ひっくり返して城の土台にオブジェとしてしっかり利用している点も見逃せない。ゆっくりおばあちゃんにお話を聞いているうちに、どうやら旦那さんの執筆した本があり、そこに詳細に築城の歴史が紹介されているらしい。無理をお願いして一部譲って頂きました。帰宅後、じっくり読んでみたところ、残念ながら築城の記録はそれほど記載が無いものの、前半の満州での鉄道マンとしての仕事やその後の敗戦・引き揚げに関する記載はとても興味深く、特に満人の死装束を纏いながらの逃亡に関する記載は、不謹慎とは知りつつ思わずぶっ、と吹き出すおもしろさ。文書を書かせてもグッと人を引きつける何かがあるんですね。



お茶も出さずに済みませんね、としきりに謝るおばあちゃん。とんでもない、突然押し掛けて、しかも親切に対応してくださっただけでも、今回の連休取材の目玉としてやってきた甲斐があるというもの。旦那さんの快気とおばあちゃんのご健康を祈りつつ、安来をあとにしたのでした。

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