スーパープレイ動画基礎知識
- 2006/08/14
- レポート作成
- 2007/08/05
- スタイルシート変更に伴い微修正(説明項目追加、関連リンク追加)
はじめに
様々なゲームのスーパープレイ動画がネットで簡単に見られるようになり、いい時代になったもんだと思うわけですが、ゲーム動画作成の予備知識を持たないで見た人が色々と勘違いをしているのをよく見かけます。自分がわざわざ解説しなくてもどっかに本職の人のもっとよい説明がありそうなもんだとか、スーパープレイ動画が流行りだしてからだいぶ経ったこんな中途半端に時期に書くのも微妙だとか思うわけですが、自分がゲームのレポートで関連記録について書く時にいちいちエミュやTASの説明を添えるのも面倒なので、後に自分で引用するためにこんなテキストを書いておくことにしました。その心は質問とかには対応しません。特にエミュ関連。
神業を撮る技術
よく見かけるのが不可解なプレイに対してすぐに「チートだ、改造だ」と叫ぶ人。「よくわからんけどズルいと思えるプレイ」を十把一絡げにチートと呼ぶ人も多いですが、使われている技術は色々あります。
- エミュレータ
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PC上でゲーム機の動作を再現するもの(狭義の説明ですが)。要はPC上でスーファミのゲームとかが遊べる。ただし、著作権の問題がからむのでおおっぴらなエミュの話題はタブーであることが多い。チートや追記のための機能やエミュムービーを撮る機能が備わっていたりする。
- チート・改造
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敵に当たっても死ななくする、数値をMAXに設定する、などゲームの世界を勝手に書き換えるインチキ行為。やりこみに使ったらルール違反であり邪道。実機の場合は怪しげな機械を用いて、エミュの場合はメモリの値を書き換える機能などを用いて行う。
- 裏技・バグ技
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ゲーム内での特殊な操作により変わった現象を引き起こす技。製作者が意図的に仕組んだものだったり、製作者のプログラムミスだったりする。マリオ1のしゃがみ泳ぎによる上半身無敵、DQ3のランシールバグによるステータスの操作、などチートと似たような現象を起こす技もあるため混同されやすいが、外部からの書き換えを伴わないまっとうなゲームの動作だけで引き起こせる点が最大の違い。
- エミュムービー
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エミュで、プレイ開始時の状態と以後のコントローラ操作だけを記録したもの。途中途中の状態は保存されていないが、記録されたコントローラ操作を毎回同じように入力し、プレイ時と全く同じ展開が再生される。低容量だが、再生にはエミュ環境一式とある程度のエミュ知識が必要。世に出回る動画はこれを誰でも見られるように映像、音入りの動画にしたもの(そしてそれをさらにyou tubeやニコニコ動画に上げたもの)。大容量の動画をネットで公開できなかった時代はスーパープレイの公開はエミュムービーのみであり、チートとか追記とか分かっている人同士で楽しんでいたが、誰でも見られる動画の形で公開されるようになったため、いきなり見て勘違いする人が急増した。
- リアルタイムセーブ
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ゲームの状況をまるごとセーブロードするエミュの機能。ゲーム中任意のタイミングでセーブロードできるため、「ジャンプする前にセーブしておいて穴に落ちたら跳ぶ前からやり直し」、「敵から逃げる前にセーブしておいて回り込まれたらやり直し」など本来やり直しのきかない箇所での無茶なプレイを可能にする。
- 追記
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エミュムービーを撮る際にリアルタイムセーブを駆使すること。追記機能を持ったエミュではリアルタイムセーブでやり直した部分が映画の編集のごとくカットされ最終的なプレイのみがムービーとして残るため、何もかもが一発でうまくいったかのような動画を撮ることが可能。
- TAS
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Tool Assisted Speedrunの略。ツールの力を借りたタイムアタックの意味。例えば連射コンを使ってタイムアタックするのも言葉の意味からすればTASと言える。しかし普通TASといったらツールとはエミュを指す。要するにエミュの力を借りたタイムアタック。エミュの追記機能に加え、ゲームをコマ送りにして操作を行うなどあらゆる技が総動員し、ムービーファイル内の1コマ1コマのコントローラ操作を理想の形にする。人間では到底不可能な精度・速度でのプレイ、異常なまでにラッキーなプレイが特徴。明らかに人の手でプレイしていないことが見てとれるが、超絶な熟練者(もしくは「TASさん」という実在の人)によるものだと思ってしまう人もたまにいる。
ものすごくうまくプレイした時のコントローラ操作を捏造しているだけなので、全く同じ様に操作できれば一応はゲーム内で実現可能なプレイ。しかし事実上不可能なことは言うまでもない。(最初から最後まで1/60秒単位で理想通りに操作することはまず不可能。)
- 普通に上手い
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あたかも追記などのズルをしているかのように見えるほど上手いプレイ。信じられないくらい上手くても、信じられないような人もたまにはいるので注意が必要。もっとも、そのようなプレイに対する「TASじゃねーの?」といったケチは、ある意味最高の褒め言葉であったりもする。
動画の判別法
- TAS動画は明らかにそれと分かる(動画中に明示されている場合も多い)
- 動画の出所を知る(Bisqwit氏のTAS動画サイト等の有名所は抑えておくべき)
不可解な技が用いられていたら
- 動画製作者による解説がないか探してみる
- 自分の知らない裏技がないか調べてみる
- 自分でも再現性を試してみる
- チート・改造はお遊び用、真面目な記録勝負にチートはまずない
- 自分で遊んだことが無いゲームの判断は基本的に無理
- 「MOVIE STOP」などのメッセージがゲーム画面に重なって出ていたら間違いなくエミュ
各スーパープレイ動画の楽しみ方
- チート動画
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チートはシナリオ上絶対に勝てない敵を倒すなど、特別な調査のための手段としては非常に有用です。チート行為により通常見られない現象を引き起こしている動画は、その調査結果が興味深いのであって、プレイ自体はすごくもなんともないことに注意しましょう。
- 裏技を使用した動画
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やりこみでは裏技はどこまでありかなどよく問題になりますが、結局、結果を見て人がすごいと思うか次第だと思います。その技さえあれば誰でも簡単に真似が出来るなら使ってもしょうがないし、そのゲームに対する深い知識のアピールになるなら積極的に使うべきだと思います。
- TAS動画
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超絶テクによる究極の理論上限界が見られるのが魅力です。超絶テクはTASなら当たり前ですが、超絶テクをもって初めて可能になる思いつきもしなかったショートカットに度肝を抜かれたりします。どんなプレイでも実現できるからといって作成は簡単ではありません。コンマ数秒単位での最短ルートの探求や度肝を抜く発想力が必要になります。
当然ながら、まっとうなプレイの記録と同列に扱ってはいけません。TAS記録が通常プレイの最高記録を簡単に抜くのは当然のことです。ですがTAS記録の中で一番を目指そうと思ったら簡単ではありません。通常プレイの勝負にTASを持ち込んだらそれはズルですが、TAS同士の勝負ならそれはそれで別のまっとうな勝負です。なのでそれぞれの記録を混同しないように注意する必要があります。
- 普通に上手い動画
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TAS動画に見慣ていると見劣りしてしまいますが、実際のプレイの参考にするなら断然こちらの方が役立ちます。クリアできないゲームの攻略法を知りたい時などはTASでない動画を探しましょう。
参考
おわりに
一番肝心なのは動画の作成者、紹介者がしっかりとした説明を添えることだと思うんですけど、なんでこう動画ばかりドンドン出回っちゃうんでしょうねぇ。