私は前々から、多くの日本人の対中認識・感情は国際的な対中認識・感情との間に大きなズレがあると感じていました。そういう私の感じを裏付け、あるいは否定するデータはないものかと注意してきたのですが、最近ようやくそういうデータを見つけることができました。それは、Harvard Kennedy School ASH Center, Reflections on a Survey of Global Perceptions of International Leaders and World Powers (Tony Saich, December 2014)というものです。

これは、ハーバード大学ケネディ・スクールのASHセンターが、世界主要10ヵ国の指導者、すなわち安保理常任理事国でもある5大国(アメリカのオバマ、中国の習近平、ロシアのプーチン、イギリスのキャメロン、フランスのオランド)、及び独日(メルケル及び安倍晋三)、中露とともにBRICSを構成する3ヵ国(ブラジルのルセフ、インドのモディ、南アフリカのズマ)の指導者の内政、外交及び経済政策に対する評価を世界30ヵ国で世論調査した結果を集計したデータです。

10ヵ国指導者の内政に関する評価

G-5

独日

BRICS

オバマ

習近平

プーチン

キャメロン

オランド

メルケル

安倍

ルセフ

モディ

ズマ

米州

米

51.7

52.6

27.6

86.9

73.6

86.3

78.7

78.1

74.7

68.1

伯

73.9

54.9

25.9

71.1

57.8

79.4

80.4

29.5

57.1

41.2

欧州

露

12.6

86.1

86.2

32.5

28.8

43.9

60.6

72.3

76

54.8

英

75.2

54.9

20.8

48.7

49.6

79.1

66.7

49

52.3

36.8

仏

78.2

30.3

18.8

63.3

24.8

74.1

77.1

57

50

45.5

独

61.5

31.9

17.3

54.2

41.6

63.2

57.5

37.6

45.2

36.5

中日印

中

59.1

94.7

89.7

63

63.4

88

14.1

69.6

59.9

69.2

日

51

13.6

26.5

51.4

48.1

62.6

50.3

52.3

74.5

52.7

印

89.6

77.5

76.4

82

76.7

90.7

93.1

73.9

93.2

69.2

APR

韓

88.8

91.5

83.4

76.1

69.8

93.9

56.1

63.3

82

66.7

タイ

71.5

87.7

62.9

73.9

78.8

87.9

91.8

77.1

69.4

69.3

印尼

74.6

84

57.9

81.5

66.4

89.4

94.6

65.3

74.2

68.5

越

90.6

56.5

93.7

82.4

78.5

95.4

93.9

67.2

82.1

73.4

10ヵ国指導者の外交に関する評価

G-5

独日

BRICS

オバマ

習近平

プーチン

キャメロン

オランド

メルケル

安倍

ルセフ

モディ

ズマ

米州

米

49.1

51.3

24.9

81.4

68.5

81.8

73.1

75.9

74.7

67.4

伯

65.2

50

28.3

70.5

62.4

80.8

78.2

36.4

57.1

49.1

欧州

露

16.7

79.7

85.9

27.9

22.4

37.8

48.6

64.5

58.6

36.9

英

68.7

39.5

15.7

49.4

47.8

71.6

61.9

51

48.4

32.6

仏

76.3

32.2

18.3

64

34

72.9

62.7

46.3

34.3

37

独

58.1

30.1

16.3

54.8

49.7

63.2

54.5

39.1

40.8

39

中日印

中

62.5

93.9

89.1

64.6

65

86.3

13.1

68.4

57.3

64.8

日

55

14.3

27.9

51.3

53

62.3

48

44.6

60.2

49.1

印

89.8

74.7

74.8

83.2

77.8

88.7

92.3

75.9

93.3

70.9

APR

韓

90.1

89.6

79.9

79.2

69

91.8

51.1

57.1

76

64.7

タイ

73.3

79.5

60.5

75.2

82.2

85.6

88.7

77.1

66.3

68

印尼

67.5

78.1

54.2

77

63.7

84.1

87.2

62.7

71.2

60.8

越

90.7

47.4

90.6

79.9

76.9

90.6

92.4

67.3

75.9

68.3

豪

74.8

61.1

15

81.5

65.2

86.4

73.3

54.5

66.1

32.5

10ヵ国指導者の経済政策に関する評価

G-5

独日

BRICS

オバマ

習近平

プーチン

キャメロン

オランド

メルケル

安倍

ルセフ

モディ

ズマ

米州

米

44.8

28.6

12.4

62

49

53.4

52.8

34.9

33

29.4

伯

59.2

60.9

33.8

71

67

81.8

85.5

45.1

33.2

33.5

欧州

露

15.3

87

79.6

34.9

37.7

44.1

57

62.2

58.9

28.6

英

47.9

35.1

7.4

51.5

44.7

61.2

48.6

31

32.5

32.5

仏

58.6

28.3

13.4

63.7

42.2

71

56.2

40

33.1

38.2

独

37.8

29.6

8.6

51.7

51

53.5

43.8

32.1

28

31.7

中日印

中

32.2

78.6

62.1

49.6

57.8

74.2

9.4

59.2

33.3

55

日

23.1

1.8

4.9

26.7

29.5

41.3

30.4

16.8

27.7

13.7

印

64.4

48.1

47.9

67.2

59.9

67.4

83.8

50.5

87.8

51.2

APR

韓

51.8

38.7

16.2

53.8

54.8

72.7

72.7

30.2

29.8

23.9

タイ

50.4

65.6

29.4

59.9

58.4

62.2

84

41

36.7

27.3

印尼

51.9

74.8

38.8

77.7

70.6

83.7

90.3

51.9

57.2

46.6

越

67.2

15.9

58

77

76

77.8

87.6

53.5

56.4

38.5

豪

52.8

47.5

8.1

63.8

50.8

61.7

60.3

28.1

36.3

29

30ヵ国回答者の10ヵ国指導者に対する肯定度

<内政> <外政>

メルケル 79.7% メルケル 77.2%

習近平 78.5% 習近平 76.5%

モディ 72.5% モディ 69.8%

キャメロン 67.2% キャメロン 66.8%

オバマ 64.5% オバマ 64.2%

ズマ 62% ルセフ 60%

プーチン 60.2% ズマ 59.2%

ルセフ 59.9% プーチン 58.9%

オランド 57.4% オランド 58.7%

安倍晋三 42.5% 安倍晋三 40.3%

以上から読み取ることができるいくつかのポイントを指摘しておきます。

◯日本人の習近平に対する評価は、内政、外交及び経済政策のいずれに関しても、他の国々の人々の評価と比較して格段に低い。

◯例えば、アメリカ人は、習近平の内政について2人に1人以上が評価している(52.6%)のに対して、日本人は5人に1人未満の人(13.6%)しか評価していない。外交についてもほぼ同様で、アメリカ人の51.3%が評価しているのに、日本人は14.3%の人しか評価していない。経済政策に至っては、アメリカ人の4人に1人以上が評価している(28.6%)のに対して、日本人はわずか1.8%であり、50人に1人弱の人しか評価していない。

◯中国とライバルと見なされているインド人についても、習近平の内政に対する評価度は77.5%、外交に対しては74.7%、経済政策はやや低いとしても48.1%(2人に1人弱)であり、日本人と比べてはるかに高いし、アメリカ人より高い。

◯中国と領土紛争を抱えるヴェトナム人に関しても、習近平の内政に対する評価度は56.5%、外交に関しては47.4%、経済政策に関しては15.9%となっており、日本と比べればはるかに高い。

◯また、30ヵ国の回答者による10ヵ国指導者の内外政に対する評価に関しては、ドイツのメルケルがトップであるのに続いて、習近平がメルケルにほぼ匹敵する高い評価を受けて第2位である。これに対して安倍首相は、内政及び外政ともに10ヵ国指導者のなかで最下位であり、しかも、他の9人の指導者は50%以上であるのに対して、安倍首相のみが40%台スレスレという低さである。

◯ただし、最悪の日中関係を反映して、中国人の安倍首相に対する評価も低く、内政14.1%、外交13.1%、経済政策9.4%となっている。

以上から確実に言えることは、日本人の対中認識・感情は国際的スタンダードからかけ離れているということです。

内閣府が行った2014年の世論調査では、中国に対して親しみを感じる人は14.8%(親しみを感じない人が83.1%)であり、1978年以来の最低を記録しています。実に5人に4人以上の人が中国に対して親しみを感じていないということです。

天安門事件が起きた1989年までは、中国に親しみを感じる人が70%台で推移していました。この数字は、2000年代までの対米感情とほぼ匹敵するものでした。それが、1989年の天安門事件、2003年から行われた小泉首相の靖国参拝による日中関係の悪化、さらに2010年に起きた尖閣問題という3つの事件を契機として、日本人の対中感情は大きく落ち込み、1980年の78.6%というピーク時と比較すると、2014年はなんと64%近く下がっています。

以上に紹介した習近平に対する日本人の評価の低さは、このような対中感情をモロに反映しているのです。しかし、好き嫌いが内外政における中国のパフォーマンスに対する評価度を国際スタンダードからかけ離れさせているということは、私たち日本人として深く反省する必要があるというのが私の結論です。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というのでは、国際関係を主体的かつ責任感を持って担う資格があるとは言えないと思います。