登山用GPSの選び方、スマートフォンとの違い

 2022年情報)

登山用GPSはメーカーや種類が沢山あります。

またスマホでも同様なことが出来るので選択に迷われている方も多いかと存じます。

トレッキング専用GPSは、あまりにも高価なため手が出ない人も多いのではないかと推察します。

 

目的をあくまでも遭難防止とする場合は、

@価格が高くないこと(できれば2.5万円以下)

A耐久性が高いこと(落下や、真夏の熱、真冬の寒気に耐えられるもの)

B電池交換できるもの。できれば市販の単三リサイクル電池(エネループなど)が利用できること。

CPCと接続できるもの。

D防水機能は必須

E野外での画面見やすさ

F軽量でコンパクト

G20時間以上稼働出来るもの(3日間縦走なども考慮)

H地図が表示出来るもの

I日本語表示

JできればGLONASS(ロシアのGNSS)か、GALILEOEUGNSS)が受信出来るもの

 

遭難防止とすると、スマホや携帯電話とは併用せず、用途を分ける必要があります。仮に近所の低山に入る場合だけだとしても山としての危険性はあります。

(緊急事態で携帯電話とスマホで連絡を取りたい場合の電池切れ防止。)

GPS用の古いスマホを専用で使う場合は別ですが…)

 

逆に無くても良いと思われる機能

@電子コンパス機能

A気圧高度計

B大画面

Cみちびきが受信出来るもの

D地図の描画速度の速いもの

 

スマートフォン(+アプリ)との比較

(スマホは電話と兼用せずに一台GPS用に用意することを前提、また山では通信機能を利用しないことが前提。)

 

比較

スマートフォン

専用GPS

電源(電池交換、利用時間)

△(機種依存、記録頻度依存)

耐久性(防水、衝撃、温度)

×(機種依存、防水カバー)

GPS精度、地図

〇(機種依存)

○(地図による)

屋外での画面の見やすさ(輝度)

〇(機種依存)

雨や雪など悪条件での操作

×(タッチペン必要)

ログの間隔(記録頻度)

△(アプリ依存)

 

通常、街中や屋内ではスマホは圧倒的な威力を持っています。しかし山の中ではやはり専用GPSに軍配が上がります。スマホでも十分使えるという記事がありますが、機種によって機能差が大きいため確実性に欠けます。

機種によりますが屋外でスマホの画面は輝度が低いと見えにくいですし、輝度を上げるとバッテリーに負荷がかかります。また雨や雪ではタッチパネル操作は無理ではないでしょうか。(メーカーに依存)

登山用アプリとGARMINでのログ比較してみます。同じ場所で同じログの2枚の図ですがGARMINのほうが細かくログが取れていることが分かります。

  

iPhone SE+アプリ(ジオグラxx)が左の図の紫色のログ。GARMIN eTrex30が右の図、緑色のログです。紫色のつぶつぶの間隔が、緑色に比べて広めとなっていることが分かります。帰りはiPhoneバッテリー消耗が激しいためログアプリのデータ記録頻度を下げているので間隔が大きく荒くなっています。(通常は頻度を下げての使用が推奨です。)

ひとつずつログを横軸:距離(m)と縦軸:時間(秒)で並べて見ると、GARMIN(柿色)はほとんどのログが20秒以下、30m以内の間隔でログを取っています。

しかしスマホアプリ(ジオグラxx)(青色)は20〜60mは15秒以上の間隔となり、GARMINの方がきめ細かいデータであることが分かります。GARMIN直線では荒くしてデータを減らし、曲線では細かくすることで滑らかなデータを取得しています。

実際分析するデータ間隔が荒いと、歩行距離の正確性が下がります。(上記青色がスマホアプリ、灰色GARMIN

上記はデータの記録方式についてなので、ナビの本質ではありません。でも正確な記録を残したい方は考慮が必要です。

 

しかしながらスマホを完全に否定するつもりはありません。理由は、専用GPSの値段があまりにも高いことにあります。中古のスマホを上手く活用することが出来ればそれはそれで良いかと思います。天気の安定した近所の山で、冬場以外であれば問題なく利用できると考えます。ただ、遭難は悪条件が重なって発生するため、イザという場合は少し頼りないですが…。

 

スマートフォンをトレッキング用GPSとして使用する際の注意点

スマホの急速な普及で、スマホ登山者が急増しました。注意点をまとめてみます。

 

@通話用とは別に分けて使う。

→通話用は電池を消耗しない様に登山中は電源を切る

A「機内モード」「フライトモード」等で使う」

→電源の消費が抑えられる(機種依存)

Bオフライン地図を入れておく。

→電波が無い状態で地図が表示出来る。

C登山用アプリを入れる。

→事前にルート設定を行なえるもの。

→記録頻度を下げないとバッテリー消耗が激しいので注意

(余談ですが、あるスマホ登山アプリでSNS、ブログやQ&Aを使ったステルスマーケ活動が凄く活発です。大企業では許されませんが…(^-^;

D予備のバッテリーを用意する。

→USBで繋ぐ外部電池を持って行く。

E防水ケースを忘れずに。

F天気の良い日や気候の良い日のみ使用する。→極端に暑い日寒い冬は電池が持たない。

GできればGLONASS(ロシアのGPS)やGALILEOEUGPS)に対応しているものを使う。→L5L1の2波対応している機種がBEST

GPSのしくみでも紹介

H不要なアプリは停止しておくこと。(電池の持ちがよくなる可能性あります。)

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バッテリー残量の例です。不要なアプリを停止させると消費速度が落ちました。自分のスマホのバッテリー残量は日ごろから確認が必要です。特にアンドロイド系は消費電力速度に意味不明な点が多々ありますので注意が必要です。

 

余談:ヤマレコで「いまココ」というアプリがありますが、機能としてはとても良いと思いますが、バッテリー消費が心配なところです。イザというときに備えて電源は出来る限り温存が望ましいです。携帯やスマートフォンは、万が一に備え電源を消しておくことをお勧めいたします。

 

(繰り返しになりますが、スマホは機種によってバッテリーの持続時間と野外での見易さが全く異なります。最近の機種はだいぶバッテリーの持ちが良くなり、野外での見易さ(輝度)も改善されています。しかし重要なのは確実性です。ここで強調したいことは万が一ということです。なので、雪山など迷うと怖い深い山に入る場合は専用GPSレシーバーが安心です。)

 

GPS時計との比較

トレイルランナーもしくはランナーや、ロードバイク(自転車)には時計タイプが人気のアイテムですが、

最近、登山向けにシェアーを伸ばしてきています。

比較

GPS時計

専用GPS

電源(電池交換、利用時間)

×

耐久性(防水、衝撃、温度)

GPS精度

○(機種依存)

地図の見やすさ

×

雨や雪など悪条件での操作

心拍計その他活動量センサー

◎(機種依存)

△(接続必要)

価格

×(機種依存)

△(機種依存)


活動量センサー(運動量、心拍数計測)ではGPS時計は圧倒的な威力を持っています。

しかし登山で、活動量センサーはランニング等に比べまだ役に立つか不明な点が多いです。

(心拍数と登山についてはこちらをご参考にしてください。)

道迷い防止という観点からは、現地でルートを変更することが難しいため、まだまだ専用GPSに軍配があがります。

 

61Yo7mDkITL._SL1200_ がーみんよけい

時計タイプの地図は見やすいとはいえません。

紙の地図との併用が必要です。

 

ハンディーGPS個人的なお勧め

GARMIN社のeTrex22x(海外輸入)もしくはeTrex32x(海外輸入)です。

理由は、

1)価格が安い。

これはeTrex22x日本語版があまりにも高すぎることが原因です。日本のガーミン株式会社(旧いいよねっと)が定価の2倍以上の価格で販売しています。正直これがGPS普及を妨げていると考えます。海外ではおそらく2万円代で入手できるものが、日本では倍近くします。(価格は変動しますのでご注意下さい。)英語版でもメニューを日本語化することが出来ます。

英語版を日本語化するとルートやポイントが日本語で表示されるため分かりやすくなります。ただ日本語入力は出来ないので、ルートはPCで作成します。(日本語版でもGPS側で入力することはほぼありませんが。)

 

2)軽量で最低限の機能を備えています。

GARMINは他モデルが沢山ありますが、あくまでも遭難防止なので、画面が小さいとか地図表示が遅いというのは問題となりません。またコンパスも方位磁石があればOKですし、気圧高度計も趣味の世界です。eTrex10は地図表示出来ないので予め決めたルートだけを歩く場合は、現地でルートを変更したい場合や、事情によりルートを離れる場合等に地図表示できるものは有り難いです。これ以上の機能は、贅沢の範囲かと思われます。

 

3)GLONASS(ロシアのGPS)が利用できる。

谷間での位置精度は、極端に落ちるのでGLONASSはやはり有り難いです。(位置精度が向上します。)ただGLONASSをオフにすると電池が30時間(カタログ値+5時間)持つとの情報があるので、オフにする人が多いかもしれませんがオンで使いましょう。

「みちびき」については、日本で販売しているeTrex(日本語版)のみが受信(193番で表示)出来ると言われていますが、英語版でも未知の衛星(255番)として受信出来ます。また日本で販売されている日本語版でも補完信号(つまりGPS互換信号)を受信しますが、サブメータ級測位補強つまりL1S信号DGPS信号)は受信しませんのでご注意ください。(20212月現在)みちびきを1個受信出来ることよりもGLONASSを4個以上受信出来ることの方が、意味があります。

平行輸入品は、故障時の対応が不安となりますのでご注意ください。ただし正規代理店から日本語版を正規価格で入手しても保障期間を過ぎると修理に最低1.8万円位掛かるようです。故障時は、正直もう一台中古機が買えてしまいます。

 

高精度なGPSのお勧め

GARMIN社のGPSMAP66sr,GPSMAP65,GPSMAP65sの3つです。

理由は、L1信号に加えL5信号(GalileoE1およびE5a)(QZSSL1C / AおよびL5)も受信します。これはeTrexシリーズがGPSGLONASSの受信でしたが、それに加え、ガリレオ(ヨーロッパ)・QZSS(日本)・IRNSS(インド)も同時に受信することが出来るようになります。(同時に受信出来る衛星が2倍以上になります。)

ただしあくまでも「コード測位」なのでcm級の測位は無理です。でも谷間などで大きな位置誤差を生じない可能性があります。

またGPSMAP66srは加速度センサーを持っています。おそらく測位衛星を失っても「大きく位置がぶれる現象」は発生しない可能性があります。(実際は不明です。)

残念ながらSBASは受信しなくなったようです。66srGNSSチップは非公開ですがSony製品の可能性があります。(採用されているGNSSチップの仕様上はSBAS,L1Sなどのディファレンシャル信号を受信出来る能力があります。GARMIN社がファームを改良すれば受信出来る可能性が高いです。)

上記3モデルは20222月現在、日本では販売されていませんのでご注意下さい。

 

GPS入手方法

一番安いのはWEB販売ですが、怪しげなサイトもあるので必ず安心できるところを選びます。(米国のアマゾン等)

海外輸入モデルは2種類ありそうです。

A)英語版  →欧米販売モデルで、これは日本語化が必要

B)アジア版 →中国、アジア向けモデルこれは日本語化が不要の可能性が高いです。(日本語を選択するだけ)

数年前に入手したeTrex VistaHCも今のところ動きますので(ごく偶に大きな誤差もあり)故障に備え2個山に持参しています。

 

注意:GPSを持っていても全体地形を見るのは地図が向いています。必ず併用お勧めいたします。

 

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