ふくろう博士のカナダ便り

ふくろう博士のカナダ便り −8
「ユングの気質論が解き明かす世界諸国の国民性」執筆の進展状況のご報告
2003年12月12日


 2001年の私の調査旅行では、本当にたくさんの方々に貴重なご意見を頂き、ここにあらためて深く御礼申し上げます。また、長い間のご無沙汰、お許し下さいませ。やっと本の進行状況が報告できる段階になりましたので、ご報告させていただきます。
 
 ユングの気質論は30年以前からやってきましたが、国際レベルでの気質論は16年以前から始めました。一応理論的な基礎部分(約1000頁)を完成し、次に日本でそれぞれの国の資料を集め、その国の知識人にお会いし、大筋が出来たところで、2001年の調査旅行となったわけです。それまでまだ訪れたことのなかった国に行って直接文化に触れ、識者の方々のご意見をうかがうためでした。韓国、中国、ブラジル、アルゼンチン、チリ、メキシコ、スウェーデン、ロシア、ポーランド、ハンガリー、イラン、エジプト、パレスチナ、イスラエル、ギリシアと回ってきました。もっと他の国にも行きたかったのですが、資金と体力が限界でした。

 調査旅行では、約二百五十人ほどの方々とお会いして、Mini-Diskレコーダーで300枚以上のMD資料を得ることが出来ました。もちろんカナダに帰ってそれを文字に直すのには当然大変な時間がかかりましたが、それが終わったあと、一つ一つの国をきちんとした完全な形で纏め上げる作業に入りました。ところが始めますと、一つの国を一応納得いくまでまとめるのには、平均4ヶ月もかかり、現在までに、ロシア人、ポーランド人、ハンガリー人、イラン人、エジプト人、アラブ人の6つが出来ただけで、目下ギリシア人をやっているところです。それぞれが、100頁前後の分冊になる感じです。学問的に強固なものとするため、また、それぞれの国民の性格と文化の特質を書くという責任上、どうしても、この位のことは最低必要と思われます。本当は30カ国を目指していましたが、今は無理です。それで、あと、9カ国でひとまずの区切りをつけたいと考えます。 

 以上のようなわけで、日本での出版までには、あと4年は必要とみております。ヴォリュームとしては全体で5巻ぐらいになるかもしれません。その後、英訳を始めます。どの国の識者も大変関心をもって下さり、早くほしいとの要請が強いのですが、英訳にもまた3年はかかるでしょう。そして一応英訳が出来た時点で、未だ書いていない国をまとめ、分冊で順次出版するつもりですが、死ぬまでの仕事になりそうです。

 この国際的視野からの仕事は、もともと1988年チューリッヒのユング研究所から、「このような研究はまだ誰もやっていないから、お前がやれ」と励まされてから始めたものでした。しかし、まさかこんなに大変なことになろうとは夢にも思っていませんでした。でも、やってみると実に面白いです。たとえば、思想の世界では、内向思考型を理解すると、カントをはじめドイツ観念論が解ってきます。会社経営での効率的人事配置や、日本的経営のあり方や、今後の日本経済の進むべき方向についてもたくさんのヒントが出てきます。

国際政治の世界では、内向型の国民と外向型の国民の間の相互誤解が、多くの国際摩擦の根底にあることが分かってきます。その解決方法もある程度見えてきます。イラク問題も、これが理解されていたならば、現在とは全然違った方向に向かっただろうと思います。 
 しかし、私は71にもなってしまいました。神にあと7年は生かしてくださいと祈っているところです。健康には気をつけていますが、今のところまあまあ元気にしております。

           それではますますのご健勝とご多幸を祈りつつ




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