究極のサウンド


「車のオーディオに凝りまくっている人の話を聞いてみたい」とここで書いたが、実際にそういう人の車に触れさせてもらう機会があって、ものすごい衝撃を受けた。
何がすごいって、音はもちろんすごいんだけど、こだわりが感じられるのだ。どんな音が「自分にとっていい音なのか」という定義があり、それにもとづいて信念を持って音作りに取り組んでいるのだ。
金さえかけて高価なパーツを寄せ集めただけの世界とはぜんぜん違うのだ。彼の場合はもちろん金をかけていいものを使っているのだが、それを自慢することもなく、自分が追及している「音へのこだわり」を求めた結果、そうなったと言うのだ。

ヘッドユニットは純粋なプレーヤーとコントロールユニットのみ。普通はプリメインアンプ付きのものを選択しがちだが、彼の場合は違ったのだ。その時点ですでに俺の想像出来る世界とはレベルが違っていた。パワーアンプは単体でリアシートの後ろに埋めこまれていたのだが、振動からアンプを守る為にボックスを自作していた。メインスピーカーは純正の取り付け位置に収まっていたが、ツイーターはなんと足元に取り付けてあった。俺の概念では、人間の耳の高さくらいになるようにするのがベストだと思っていたのだが、彼の求める音作りは違っていたのだ。
歌物の曲を聴く場合に、ボーカルが中央で鳴ることを目指したというのだが、確かに中央で鳴っている。スピーカーから音が鳴っていることを感じさせないのだ。まさしく音に包まれるという表現がふさわしい。
さらに俺が驚かされたのは、ウーファーの使い方だった。ステーションワゴンという車の特長を活かして比較的広いラゲッジスペースには、ハイパワーなウーファーが設置されていたのだが、このゲインレベルを極端に絞ってあったのである。
普通に考えたら強力なパワーを開放すべく、ここは誰でも開きたくなる所なのだろうが、彼の場合は違った。あくまでもトータルバランスなのだそうだ。1つ1つの部品がその存在感を少しでも主張しては駄目なのだそうだ。非常に高い次元での調和。それこそが彼の目指しているものだったのだ。
しかしこだわりすぎたマニアというものは、端から見るとちょっとばかし滑稽に目に映る場合もある。「ベストのリスニングポジションは運転席の1ヶ所だけ」と笑って話す彼は少しだけ寂しそうだった。そう、こだわりすぎるあまりに、他の席ではいい音は聴けないと言うのだ。そんなに変わんないと思うけどなぁ。
それにしても、マジでいい音してたぞ。どこまでも澄み切った透明度の高いピュアなサウンドは、俺の30〜200Hz帯域オーバーブースト仕様のサウンドとは比べ物にならないほどだった。比べる次元が違うって。いやぁ、アンプ単体で18万円とかいう話を聞かされるとさらにいい音に聴こえて来るような気がするのも不思議なものだけどね。

2000.3.2.




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