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K's Room Odds & Ends

Jリーグと鹿島アントラーズ 前編



 1993年に「Jリーグ」というプロサッカーリーグが始まった時、「この得体の知れない競技団体は、一体何なんだろうか」と、その当時の僕は相当に困惑した。

 それまで僕の中でのサッカーという競技は、正月の元旦早々に、寒空の下で半ズボン姿の男達が、ボールを蹴っている「暗〜い」イメージの競技でしかなかったからだ。

 僕が小学生の頃、子供同士での花形のスポーツというとやはり野球であった。

 当時の僕の通っていた田舎の小学校は、今の学校とは比べ物にならないほどの生徒の数で、1学級が7、8クラスあり、1組の人数も50人前後はいたように憶えている。

 どの学年でも、1クラスに最低1チームは野球チームが自然発生のように存在していて、放課後や、日曜日ともなれば、クラス間での対抗戦なども盛んにおこなわれていた。その他にも地域のチームや、リトルリーグ、学校の枠を越えた交流などもあり、その当時の野球というスポーツは僕等の中で第一優先のスポーツであった。 

 そんな学校の中にも、サッカーチームがあるにはあった。

 普段はどこにもそんなものは存在してはいないのだが、どこぞこで何々の試合等となると、先生が適当に元気の良さそうな生徒をより集めて、緊急にチームを結成していた。

 何故かそんなメンバーにいつも僕は加わっていて、このとき関わった、このサッカーという競技が僕は死ぬほど嫌でたまらなかった。 

 真冬だというのに半ズボンで練習をさせられ、当時使っていたゴム製のボールはヘディングなどというとめちゃ痛い。胸でトラップなどというと痣もできるほどで、試合直前に校庭で練習などと号令がかかると、そのころから悪知恵には長けていた僕は、突如緊急の腹痛を起こして、練習などはサボリまくっていたものだった。

 にわかじこみのチームがやる試合など、当然その内容は最悪の一言だった。

 対戦するチームがそれなりに練習してきて、“勝つつもりで”出てきている状態では、その戦力の違いはあまりにも歴然としていた。

 全員がひたすらボールに集まってしまい、ボールを持つと全員がシュートしか考えていない、戦略も何もない即席チームと、一応パスをする基本くらいは押さえているチームが対戦するわけである。当時の僕らのチームは、「オフサイド」という聞いた事もないファールの連発で、バスケットボール並のスコアを相手に取られて負けるような始末だった。

 自分達の実力はさておき、こうなると思い通りに行かないまどろっこしいサッカーなど一つも面白くない。一体こんなスポーツのどこが面白いのだろうかと、当時の僕は思わずにはいられなかったのである。 

 いずれにしても、幼少の頃から、サッカーという競技に対して僕は、散々な印象を持っていたのであった。 

 そんな思いもあり、長い間僕の中でのこのサッカーという競技は、どこか嫌悪感すら感じる、退屈な競技という位置付けになっていた。

 そんな競技がある日突然、何の前触れもなく超メジャーなスポーツとして目の前に登場してきたわけである。

 一体どうなってるんだ?と、大声で叫びだしたいような気分であった。

 いつの間に発生したのかも分からないこんなにもたくさんのプロチーム、プロ野球などと比較して圧倒的に目に鮮やかなチームカラーや、派手なパフォーマンスに、斬新な髪型で個性を主張する選手達。細かいカテゴリーの呼び名まで強要される(例えば観客をサポーター、選手をJリーガーなど)余りにも突然に整備されたシステム。

 到底自然発生とは思えないこれらの「用意された」環境に、はいそうですかと、受け入れられるような純朴な感覚は僕の中にはどこにもなかった。僕にとって、それはまるで埋立地に突如として出現し、あらゆる条件を整え提供された、最先端の臨海都市の釈然としないイメージのそのままだったのだ。

 そして、Jリーグより、何よりも、一体どこから降って湧いたのか、無数の観客達。

 目の前に突き付けられた物を素直に受け入れられない、ましてや、ブームの物等となれば、まるでそっぽを向くのが僕の性格である。そうしたアマノジャクな男にとっては、このJリーグ、必然的に恰好の敵意を抱く対象となったのであった。 

 Jリーグが発足して一、二年の間、「ヴェルディ―」という名前の、緑のユニフォームを着たチームがメチャ強かった。

 僕は緑という色が嫌いである。ましてや、洋服で緑を着た集団などには事の他嫌悪感を覚えた(まあ、勝手な・・)。

 ブラジル帰りのフォワードや、髪を長く伸ばしたブラジル人選手、そして、チーム自体の異常なまでの人気、この「ヴェルディ―」というたった1チームの存在は、Jリーグから更に僕を遠ざける要因となっていた。

 名実共にそんなJリーグのキングであった当時の「ヴェルディー」に対して、唯一対抗馬と呼べる「赤い」チームがあった。

 そのチームの名前を、「鹿島アントラーズ」といった。

 僕は昔から赤という色が好きだ(もう、ほっといて)。古くは「サイボーグ009」の赤いスカーフ、「科学戦隊ゴレンジャー」のリーダーである赤レンジャー、そして、「機動戦士ガンダム」の゙赤い彗星シャー"と、どれを取ってもたまらないキャラクターのシンボルの色となっている(って、みんなアニメかい!)。

 その赤いチーム「鹿島アントラーズ」も強かった。

 かつては世界の名プレーヤーと呼ばれたブラジルの選手や、頭のてっぺんが禿げ上がって、カトリックの牧師さんか何かなのかと勘違いさせるような風貌の選手、にっくき「ヴェルディ―」を倒してくれるチーム「鹿島アントラーズ」の゙赤"に、やがて僕は「格好良いじゃん」などと、頑ななポリシーはどこへやら、いつのまにやら、次第に興味を引かれるようになっていった(なんて、いい加減な奴!)。

 自慢じゃないが、所詮僕の思いこみなど、実にあやふやなものである。「こいつ、嫌な奴だなあ」などと、ふと思っても、酒でも飲んで息投合してしまえば、「なんだ、凄く良い奴じゃないか」などと、簡単に変化する。このサッカーという競技の得体の知れない面白さに気付いてからは、僕にとってこれも例外ではなかった。

 Jリーグの存在自体はともかく、サッカーというこの競技、メチャ面白いではないか(はい、スイマソン)。世界でポピュラーなスポーツ第2位にランクされるというのがよく分かる(ちなみに、1位は卓球らしい)。

 

(後編に続く)

K's Room

東京大田区バドミントンサークル



 

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