最高裁判決をめぐる
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『朝日新聞』12月21日付
韓国・朝鮮人元戦犯の補償裁判
原告の敗訴確定
最高裁、上告棄却

 韓国・朝鮮人の元BC級戦犯とその遺族計八人が「日本の戦争責任を肩代わりさせられて、刑の執行により損害を受け、人権を侵された」などとして、日本政府を相手に一人あたり二百万円の「象徴的補償」と謝罪文の交付を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(小野幹雄裁判長)は二十日、請求を退けた二審・東京高裁判決を支持して、元戦犯側の上告を棄却する判決を言い渡した。一九九一年十一月の提訴から八年を経て、原告側の敗訴が確定した。
 第一小法廷は「戦争で被った犠牲や損害の補償をどのようにするかは、国家財政や社会経済などをもとに立法府の裁量にゆだねられている」とした最高裁判例を踏襲。「原告が受けた犠牲や損害の深刻さを考えると、補償立法措置が講じられていないことに不満を抱く心情は理解できる」としながらも、「立法を待たずに国に補償を請求できるという条理はいまだ存在しない」と述べた。
 二審判決は昨年七月、「戦争犠牲者に、国家の責任で一定の補償をすべきであるという認識が世界の主要国で高まりつつある」と述べ、「早期解決を図るための適切な立法措置を講じることが期待される」と国会に注文をつけていた。

『読売新聞』12月21日付
韓国・朝鮮人元BC級戦犯国賠訴訟(ママ)
最高裁が請求棄却

 第二次世界大戦中、旧日本軍の捕虜収容所監視員を務めたため、戦後の軍事法廷で死刑や拘禁刑とされた韓国・朝鮮人の元BC級戦犯と遺族が「日本の戦争責任を肩代わりさせられた」として、国を相手取って一人につき二百万円、計千四百万円の補償と謝罪などを求めた訴訟の上告審判決が二十日、最高裁第一小法廷(小野幹雄裁判長)であった。
 同小法廷は「損害の深刻さを考慮すると、これに対する補償を可能とする立法措置が講じられていないことに不満を抱く心情は理解できないものではないが、立法を待たずに国家補償を請求できるという条理はいまだ存在しない」と述べ、請求を退けた一、二審判決を支持し、原告側上告を棄却した。韓国・朝鮮人による「戦後補償裁判」での最高裁判決は初めて。
 判決で同小法廷は、「原告らの損害に対する補償の在り方については、国家財政、社会経済、損害の内容などに基づく立法府の裁量的判断にゆだねられている」と述べ、元戦犯らに補償を行うかどうかは、国会が判断すべきことだとした。
 訴えていたのは東京都内の会社役員李鶴来さん(74)ら元戦犯三人と、死刑が執行されたり、提訴後に死亡した元戦犯四人の遺族。元戦犯は戦時中、東南アジアの収容所などで捕虜の監視を行ったが、捕虜を虐待したとして、連合国の軍事法廷で死刑や十−二十年の拘禁刑の判決を受けた。
 李さんらは、「戦争被害については戦争遂行主体であった国家が補償すべき」という「条理」(正義・公平の原理)を根拠に補償を求めたが、一、二審とも請求を退けていた。
*転載者註:BC級戦犯らの補償請求裁判は、「国賠訴訟」ではありません。記事中の誤記につき、ママとしてあります。

『東京新聞』12月21日付
2000年目前 終わらぬ戦後
最高裁も立法に言及
韓国・朝鮮人元戦犯国家補償 上告棄却、敗訴確定

 第二次世界大戦中に日本軍の捕虜監視員を務め、戦後の連合国の戦争裁判で「捕虜を虐待した」として死刑や懲役刑とされた韓国・朝鮮人の元BC級戦犯と遺族の計八人が、日本政府を相手取り一人当たり二百万円の損害賠償と謝罪などを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(小野幹雄裁判長)は二十日、訴えを退けた一、二審判決を支持し、原告側の上告を棄却する判決を言い渡した。元軍属側の敗訴が確定した。
 判決理由で小野裁判長は「補償の要否は、国家財政、社会経済、損害の内容などに関する資料を基礎とする立法府の裁量的判断にゆだねられる」と過去の最高裁判例を引用。「原告らの被った犠牲や損害の深刻さを考えると、補償を可能にする立法措置が講じられていないことに不満を抱く心情は理解できないものではない」と一定の理解を示しながらも「立法を待たずに戦争遂行主体であった国に国家補償を請求できる条理(ものごとの当然の道理)はいまだ存在しない」と述べた。
 訴えていたのは、東京都保谷市の会社員李鶴来(イ・ハンネ)さん(七四)ら元軍属四人と、元軍属三人の遺族四人。
 一、二審判決によると、李さんらは半強制的に捕虜監視員に応募させられ、東南アジア各地で監視作業に従事させられた。戦後、連合国軍側によって軍事裁判にかけられ、捕虜虐待などの理由で死刑や懲役刑の判決を受け、一人は銃殺刑が執行され、他の六人は服役した後、釈放された。
 李さんらは「戦争の犠牲や損害は、戦争を遂行した国家が自分の責任でその救済を図るべきだ」と補償を求め、二審の東京高裁は昨年七月、棄却判決の中で「同様の境遇にあった日本人と比較して著しい不利益を受けており、国が問題の早期解決を図る立法措置を講じることが期待される」と国の対応を促した。
 判決後、参院議員会館で記者会見した原告と弁護団は「戦争補償は、戦争という国家の行為によって踏みにじられた個人の人格の尊厳、民族的尊厳を回復するための謝罪としてなされるべき象徴的補償。今回の判決は人権尊重を理念とする憲法をないがしろにするものだ」と厳しく批判した。

『日本経済新聞』12月21日付
原告側の上告 最高裁が棄却
韓国・朝鮮人戦犯訴訟

 第二次世界大戦中に日本軍の軍属として捕虜監視員になり、戦後の戦犯裁判で死刑や拘禁刑を受けた韓国・朝鮮人の元BC級戦犯とその遺族が、「日本の戦争責任を肩代わりさせられた」として日本政府に総額千四百万円の補償や謝罪などを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷は二十日、請求を退けた二審・東京高裁判決を支持し、上告を棄却する判決を言い渡した。原告側の敗訴が確定した。
 小野幹雄裁判長は「原告らが被った犠牲の深刻さを考えると、補償を可能とする立法措置がないことに不満を抱く心情は理解し得ないものではない」としたが、「補償の要否やあり方は、立法府の裁量的判断にゆだねられており、立法を待たずに国家補償を請求できるという条理は存在しない」と述べた。

『毎日新聞ニュース速報』12月21日付
 
太平洋戦争中に日本軍の捕虜収容所で監視員となり、捕虜を虐待したとして戦後に死刑や懲役刑を受けた韓国・朝鮮人の元BC級戦犯らが政府に補償などを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は20日、補償請求を否定した東京高裁判決を支持し、元軍属側の上告を棄却した。小野幹雄裁判長は従来の判例を踏襲して「補償は国家財政、社会経済、損害の内容、程度などを元にした立法府の裁量的判断にゆだねられている」と述べた。朝鮮・韓国人の戦後補償訴訟で、最高裁判決は初めてで、元軍属側敗訴が確定した。
 判決は原告が受けた処遇を「深刻かつ甚大な犠牲で我が国の敗戦に伴うもの」と認定し、「補償立法措置が講じられていないことに不満を抱く原告らの心情は理解し得ないものではない」と理解を示した。しかし「立法を待たずに国家補償を請求できる条理(法や道徳より広い正義・公正の原理)は存在せず、憲法から条理が導き出されるものでもない」と結論づけた。
 原告の李鶴来(イハンネ)さん(74)=東京都保谷市=らは1942年、シンガポールなどの捕虜収容所で監視員を務め、連合国裁判で死刑判決などを受け、1人が銃殺刑となり、6人が服役後に釈放された。東京高裁判決(98年7月)は元軍属敗訴の東京地裁判決(96年9月)を支持したが「適切な立法措置を講じることが期待される」と国会に早期立法を促していた。
 判決後会見した原告の李さんは「3度にわたる不当な判決で、強く抗議する」と述べ、今村嗣夫弁護団長は「『人権最後の砦』の最高裁はその使命を放棄した」と批判した。

No-redress rulings upheld(December 20)
The Supreme Court on Monday upheld lower court rulings that dismissed claims made by former Koreans imprisoned for war crimes after World War II and a relative of a Korean member executed after the war.
The former members of the Imperial Japanese Army were tried by the Allied powers and classified as class B and C war criminals.
They are seeking a total of 14 million yen in compensation from the government for their suffering after the war.
In handing down the ruling, presiding Judge Motoo Ono expressed sympathy to the plaintiffs, suggesting that the government should enact a law to redress those victims.
During the war, the Koreans were treated as Japanese under Japan's assimilation policy, which forced those in Japan's colonies to become subjects of the Japanese empire.
They were made ineligible to receive compensation under Tokyo's relief measures for veterans and civilian workers of the Japanese military once they were stripped of their Japanese nationality following the 1952 San Francisco Peace Treaty.
The group's lawyers had argued that the plaintiffs should be entitled to redress based on "common sense."
But the court said they cannot be compensated without the backing of relevant laws.
According to the lawsuit, the plaintiffs were drafted to the war to keep a watch on prisoners of war of the allied nation at a construction site in Thailand. After the war, martial courts convicted them for ill-treating the POWs.

High court nixes redress suit
Korean conscripts' demand for compensation denied
(December 21)
The Tokyo High Court on Tuesday upheld a lower court ruling that dismissed a lawsuit by 189 Koreans demanding that the government officially apologize and pay each of them between 30 million yen and 50 million yen in damages for their suffering after they were conscripted into the Imperial Japanese forces during World War II.

Handing down the ruling, Judge Koetsu Okuyama said the law limiting compensation to Japanese nationals -- or their families -- who were injured or killed is in line with the Constitution.

During Japan's colonization of the Korean Peninsula, Koreans were made Japanese citizens; their citizenship, however, was revoked in 1951 and they
are now excluded from compensation other Japanese war veterans receive.

Judge Okuyama said the government cannot be held responsible for not legislating a law to grant redress to the plaintiffs.

Fourteen of the plaintiffs immediately appealed the ruling to the Supreme Court. As well as survivors of the war, the group includes family members of
Koreans killed during the conflict.

"I believe the ruling is unjust," said Lee Gum Ju, 79, head of the plaintiffs' group. "The sorrow of Koreans whose relatives were drafted to serve in the war and lost their precious lives are beyond words."

Lee's husband was drafted and died in action in the Gilbert Islands.

Japan forced Koreans to serve in the Imperial forces during World War II, but refused to compensate them after the war because the law covering
compensation only allows redress for Japanese nationals.

Because Seoul also has refused to compensate them, the victims have not received any kind of redress from either government.

After the ruling, the plaintiffs' group submitted a petition to Ko Tanaka, a member of a war compensation research group and a lawmaker with the Democratic Party of Japan, urging him to introduce legislative measures to ensure the victims receive redress.


NHKニュース速報』12月20日 18:23
 旧日本軍の軍属として戦犯とされた韓国の人たちが日本政府に補償などを求めた裁判で、最高裁判所はきょう「補償のための法律がない以上、認められない」と述べて、一審と二審に続いて訴えを退ける判決を言い渡しました。
 
この裁判は、太平洋戦争中に、旧日本軍の軍属として捕虜収容所の監視員となり、戦後いわゆるBC級戦犯として死刑や懲役刑を受けた在日韓国人を含む韓国の人たちと、遺族合わせて八人が、日本政府に補償と謝罪を求めたもので、一審と二審で敗訴したため上告していました。
 
きょうの判決で、最高裁判所第一小法廷の小野幹雄(オノモトオ)裁判長は「原告の人たちは、日本の敗戦に伴って戦犯として裁かれ、深刻な被害を受けたのに補償を受けるための法律がないことに不満を持つ気持は理解できなくはないが、法律がない以上、補償を認めることはできない」と述べて上告を退け、原告の敗訴が確定しました。

信濃毎日新聞』12月21日付
12月20日(月)
元韓国人軍属ら敗訴確定
BC級戦犯訴訟で上告棄却
 第二次大戦中に日本軍属となり、BC級戦犯として処罰された韓国・朝鮮人と遺族計八人が、日本政府に総額千四百万円の補償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷は二十日、請求を退けた一、二審判決を支持、原告側上告を棄却した。元軍属らの敗訴が確定した。
 
判決理由で小野幹雄裁判長は、元軍属側の「適用すべき補償立法がないなら、条理(ものごとの当然の道理)によって補償すべきだ」との主張について「そうした条理はいまだ存在しない」と退けた。
 
しかし「犠牲の深刻さにかんがみると、補償の立法措置がないことに不満を抱く元軍属らの心情は理解できないものではない」とした。
 
訴えていたのは、東京都保谷市の韓国人李鶴来さん(74)ら。「いや応なく日本軍に徴用された揚げ句、戦後は戦犯として長期間拘束され生活が困難な境遇に置かれたのに、日韓双方から何の補償も得られなかった」と提訴した。
 
一審東京地裁(一九九六年九月)、二審東京高裁(九八年七月)とも訴えを退けたが、高裁判決は「問題の早期解決のため適切な立法措置が期待される」と指摘していた。
 
訴えによると、李さんらは大戦中、タイの泰緬(たいめん)鉄道建設現場などで連合軍捕虜の監視役として配置された。敗戦後、連合軍側の軍事裁判は、捕虜 虐待などの理由で死刑や長期の懲役刑を宣告。原告のうち一人は銃殺、六人は海外で服役後、東京の巣鴨刑務所に移されたという。(共同)



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