更新日 2005.05.09
The Very Thought of You
(ジャンル:ロマンス、歴史もの ファンタジー)
著者:Lynn Kurland
邦訳:なし
おすすめ度:★★★★☆


背景 20世紀末のイギリス・スコットランドのハイランド地方から、12世紀のイングランド(獅子王リチャードの時代)にタイムスリップした男の物語。

A Dance Through Timeから始まったシリーズの一巻。A Dance Through Timeの主人公、エリザベス・マクラウドの兄が主人公。A Dance Through Timeを読んでからの方が背景がわかりやすい。
あらすじ アレックスはアメリカで弁護士をしていたが、その生活に嫌気が差して、今はスコットランドで妹エリザベスとその夫ジェイミーが住む城に同居している。

ジェイミーは実は14世紀の領主。現代からタイムスリップしたエリザベスと出会って結婚し、二人で現代に戻ってきたのだ。
ある日アレックスは、そのジェイミーが作った地図を見つけ、それに従って森に入ってみると、13世紀にタイムスリップしてしまった。地図は実は、ジェイミーが調査して見つけたタイムスリップする地点を記したものだった。

そこでアレックスは、家族を失い一人で領地を治めるマーガレットと出会う。彼女は鎧で身を包み、男を遠ざけて暮らしていたが、アレックスは彼女の美しさを見出し、彼女もアレックスを愛するようになる。
マーガレットの領地を狙う敵の手から彼女を救い出したアレックスは、自分の中世での役目は終わったからと現代に戻ろうとするが、彼女への未練からどうしても戻ることができない。それほど彼女を愛していると気づいたアレックスは、現代に戻るのをあきらめ、マーガレットと共に中世に生きることを決心する。

リチャード王の前で勇敢に戦ってアピールしたアレックスは、王から伯爵の称号を受け、マーガレットとの結婚を許される。
ちょうどそのとき、現代からアレックスを探しに来た、ジェイミーとエリザベスに出会う。しばらく彼らと過ごした後、家族に結婚を報告して別れを告げるべきだと思い、マーガレットを連れてジェイミーたちと20世紀に戻ってくる。

だがマーガレットは、進歩した20世紀の生活を知るにつれ、中世の貧しい暮らしをアレックスに強いることはできないと考えるようになり、一人で中世に戻っていく。アレックスは後を追おうとするが、どうしてもタイムスリップできず・・・
感想 アレックスは弁護士だが、学生時代フットボールの選手だったというだけあって体格も良く、文武両道に秀でた魅力にあふれた男性。意志の固い熱血漢。
マーガレットは一人で領地を治めているだけあって、気も強く剣士としてもかなりの腕前。ミラ・ジョボビッチを思い浮かべた。
でも、アレックスは「男としてのプライド」で彼女を守ろうとする。ニューヨークで弁護士をしていた教養ある男性にしてはかなり「時代錯誤」の考えではあるが、中世という舞台がそれを可能にしているわけだ。「俺が守る」といいながら逆に彼女にかばってもらったりするところは滑稽だが、彼女を守れるくらい強くなろうとして城の周りをジョギングしてトレーニングするところなど、ほほえましい。
二人で主導権を取り合おうとする中でのやりとりが面白い。
「未来から来た」というアレックスの言葉がなかなか信じてもらえず、「頭がおかしい」とマーガレットに思われ続けているのは気の毒だった。(でも愛されているからいいか。)

A Dance Through Timeはスコットランドの厳しい暮らしがよく描かれていたが、こちらの方は、イングランドが舞台ということで、少し政治的なにおいも。リチャード獅子王やジョン王子など、実在の人物がうまく物語にはめこまれている。

相変わらず脇役の登場人物もそれぞれ個性があって楽しめる。
出色は詩人ボールドリック。みんなの注目を集めるためにタペストリーの糸をほどいていったり、韻を踏む言葉を探すのに苦労したりといったエピソードが笑える。また、現代にまでついてきて、ジェイミーの館に住む13世紀から来た吟遊詩人ジョシュアと意気投合したところは非常に面白かった。映画化するなら、ジェフリー・ラッシュをお勧めしたい。
サー・ジョージもいい。ポール・ニューマンなんかどうでしょう?
もちろん、我がジェイミーとエリザベスもちゃんと活躍してくれるし、アレックスの弟でありジェイミーの城の留守番役ザッチャリーも、いつもチョイ役ながら愛すべき脇役だ。