更新日 2005.05.09
A Dance Through Time (Time Passages Romance)
(ジャンル:ロマンス、歴史もの ファンタジー)
著者:Lynn Kurland
邦訳:なし
おすすめ度:★★★★★


背景 20世紀ニューヨークと14世紀スコットランドとの間のタイムスリップ。
14世紀スコットランドというのは、スコットランドがイングランドから独立を勝ち取った直後。
13世紀末から14世紀初頭にかけてにスコットランド独立のため戦ったウィリアム・ウォレスを描いた映画「ブレイブハート」を見た人は多いと思う(メル・ギブソン演ずるウォレスが「フリーダム!」と叫んで処刑される場面は印象的だった)。あれを見た人なら、当時の戦士たちの服装、村や城での生活の様子などもよくわかるだろうし、主人公のイングランド嫌いも理解できるはず。
あらすじ ニューヨークに住む作家、エリザベスはある夜素敵な男性の夢を見る。目覚めてからもその印象の強さに彼を忘れることができない。それを考えながら公園でうたたねし、目が覚めるとそこはなんと14世紀のスコットランド。その地を治める領主こそ、彼女が夢に見た男性その人だった。
その領主、ジェイミーも前夜エリザベスの夢を見ていた。最初それを魔女の仕業だと思って彼女を火あぶりにしようとしたジェイミーだが、彼女が人間だと認め、城に住まわせる。

現代に帰りたいと思いつつ城にとどまるエリザベスだが、やがてジェイミーと愛し合うようになる。そしてこの時代で生きていくことを決心し、二人は結婚する。
ところが、ある戦いでエリザベスがジェイミーの命を救ったことから、二人はこの時代に住んでいられないことになる。エリザベスの読んだ歴史書では、ジェイミーはそこで死んだことになっていたのだ。

このままではタイムパラドックスが起きてしまう。それを防ぐためジェイミーは息子に家督を譲り、エリザベスと二人で城を去ってエリザベスがタイムスリップしてきた森へと向かう。
予想通り再びタイムリップできた二人だが、元のニューヨークでなく現代(20世紀)のスコットランドに現れる。現代に適応しようと努力するジェイミー。

だが、タイムスリップの秘密を知った14世紀の男が歴史を乱そうとしたことから、ジェイミーは……
感想 ヒーローのジェイミーは「武骨」を絵に描いたような男。戦士の世界に女は無用とばかりにエリザベスを避けようとしながらも惹かれていくが、愛情表現も不器用。そんなところがなんともほほえましい。

対するヒロインのエリザベスも相当に気の強い女性。大柄な兄たちと一緒に育ったせいか、中世の戦士に囲まれた男くさい生活にも気後れしないところが魅力的。

この作品のあと、ジェイミーやエリザベスにかかわる人々を描いた作品が多くあるが、この二人は必ず重要な役どころとしてかかわってくる。さすが一族の領主、みんなの相談役・一族の取りまとめ役として活躍してくれる。

タイムパラドックスならではの面白さ、つまり別の時代に生きるもの同士の考え方や習慣の「ズレ」が楽しめる。中世の戦士がアメリカンスラングを覚えてしまうところは笑える。
二人が現代に来てからの「歴史を修正する戦い」も面白い。

リンの作品はいつもながら、主人公だけでなくそれ以外の登場人物も魅力たっぷり。イアンやパトリック、アレックスなど、この一族ってすごいハンサムぞろいですね!
ジェイミーが中世に残してきた息子ジェイミーとその妻になるメーガンのその後も気になるところ。
対して悪役の方がやや迫力不足なのが残念。ノーランは最後の方ではずる賢い男のように描かれているが、前半部ではもっと情けないチンピラっぽく、存在感が薄かった。

ただ、全体としての面白さが、少々の欠点を補って余りある作品で、今のところ私の「ベストワン」作品である。