W杯代表チームとオーディオ製品 その国の国民性について、知識としては知っていたつもりが、現実にサッカーのプレイで、かくも具体的に示されると「確かに」と納得させられることになる。それはまた 当然のように、その国のオーディオ製品の音とも一致している点が、オーディオ愛好家にとっては、なんとも興味深いのである。 イギリス製の大型スピーカー、オートグラフの響きは正しく いぶし銀の風格であり、BBC系の小型製品も気品ある高域を誇った。クオードのアンプの整然たる配線は 緻密さの美学に溢れている。 さて日本製は
サッカーもオーディオも、真面目、独創性の欠如というステレオタイプの定評とともに、欧米人からは
独特のバランス感覚に映るらしい。どこか不均衡で、神経質にさえ見えるという。 音感覚に民族性があるのは当然で、卑下する話ではない。例えば、欧米で虫の音といえば、熊ん蜂の羽音くらいのもので、日本のように秋の虫を愛でる風習はないらしい。鈴虫、コオロギ、草ヒバリ、カネタタキ…何ミクロンだかの薄い羽根が生み出す繊細きわまりない音色を聴き分けて楽しめるのは、日本人特有の美感覚であって、こんな再生は
日本製高級機種の独壇場なのである。 例えば今年、小澤征爾/VPOのニュイヤーコンサートのCDが大ヒットしたが、日本発売盤だけにボーナス曲として「アンネンポルカ」が付いていた。この曲はTV放送でもそうだったが、白馬の舞踏のために、事前に違う条件下で録音したものらしく、響きや音場感が本番とは全く異なっていた。 最近は日本人の音感覚も変化した。クラシックの代表的音源だったN響の音も進化した。このところN響はトルシェ・ジャパン同様に海外経験も積んだが、それ以上に音楽監督デュトワの影響だろう。「音楽の友」(7月号)の特集で、コンマス・堀
正文の興味深い証言があった。「デュトワで変ったのは音質ではなく、音を出すタイミングの違い。音楽における時間の感じ方」なのだそうだ。 今後とも、伝統の範疇に留まらない変化と進展が、趣味の製品としての楽しみを高めてくれることだろう。そしてオーディオ製品もまた
その国を映す鏡なのだから、途上国生れの無国籍電化製品のような無味無臭ではなく、その国らしい美意識を醸しながら発展して欲しいと願うのである。 |