平成二十二年(2010)上半期



子ら嬉々と寒中水泳継ぐ命

喜色は黄蝋梅開花ひとり祝ぐ

日向ぼこ背に朱欄干船溜

山茶花や受験の記憶子も語る

牡蠣一粒沈めて漢のスープかな

霧氷林世に棲む憤り鎮めけり

風の峠名物おでんの幟褪せ

夜の雨に筆洗ふ神雪の果て

学秘めて華奢な手が売るのつぺ汁

冬季オリンピック3句
世界沸くメダルの狩の平和かな

超絶や針の目通す氷雪技

梅咲くや敗者見返る人もなし

戸惑ひつ男児の点前草の餅

木の芽晴握手を求む執刀医

黄塵や経典もまた越え来る

春疾風山の御堂の傾ぐ梁

継ぐいのち託す蒲公英風を待つ

雪恋ひの友の通夜終へ陸奥へ

春スキー帽子をとれば若さ失せ

酸ヶ湯2句
春スキー髭の殿下もひとつ家に

弘前の花の噂も湯気の中

世の不順嘆きつセーター洗ひをり

青嵐ヨガのポオズの足揃ふ

白内障手術
眼帯を取るや新緑風に色

芽吹きにも遅速ありけり兄妹

約反故に時季を忘れず花菖蒲

大水上山
滴りや坂東太郎ここに生る

紙人形うるむ梅雨前線に

肥えぬめり未知へ這ひ出づ大蚯蚓

拭き切れぬ目地の黒黴こころにも

遠き日の母とバリカン芝を刈る

洗濯機止まるや伴は菅の笠 

次へ 俳句目次へ  top(index)