平成21年(2009)上半期

書き終へし年賀の友の訃報来る

公憤や日々止め処なき落葉掃く

黒豆と漢の厨年用意

初笑ひ赤子混じりし八畳間

肩書を外して十歳初湯の香

佐保姫の吐息の一夜樹氷消ゆ

寝返りも自己主張かな嬰の春

山の香を妻への苞に蕗のたう

春寒や岳描く穂先掌に包む

背負ふスキーまんさくの花揺らしけり

喘登や気遣ふ一歩岩鏡

いざ発たんシール張る背に雪解風

清和なる天に銀嶺いのち愛し

山脈の煌く波濤遠霞

頂上で淹れる珈琲春スキー

画帳展ぶ巓の雪間に三世代

大滑降燧ケ岳に風光る

花嫁の御すギャロップや春の駒

六法踏む散り敷く花のひとり道

それぞれに舞ひ舞ひ納め花の塵

残る花雪洞外し里は褻に

酸ヶ湯からスキーで発ちぬ雪解光

雪解光故旧の嶺の新たなる

ご破算のあらまほし世や遠雪崩

嬰泣けば小さき皓見ゆ木の芽時

われ病むや母買ひ呉れし桜餅

西柴桜並木更新
定年や老櫻皆伐則是空

地酒煮る越後山脈迫る村

復職や零歳児けふ入園す

運転のひとり小さき田植えかな

潮騒のごとくサイレン明け易し

空梅雨に蝌蚪降る巷地球病む

斜陽なほ世相を照らし桜桃忌

赤毛氈陽射しに映えて鮎の茶屋

大桟橋白き素足の長さかな

高まるは渓流の歌汗しとど

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