平成２０年（２００８）上半期
雑煮の座膝並べをり小さき順
富士快晴大判画帳使い初む
霧氷林傘寿の滑り技冴ゆる
守門岳下黒姫沢
滑る吾追ふ小雪崩や越の谷
座喜味城址
古への死闘の崖や落椿
今帰仁城址
時超へてうねる城壁緋の桜
遠雪嶺波頭連綿甲斐へ寄す
雪眼鏡とれば佳人へ美技の果て
残る雪喧騒に日々汚れゆく
くぐもれる水車の音や春の雨
亡き人が植ゑし椿や背の丈に
瞳には少女の名残り雛の客
廃路線バス停麗ら老女待つ
襟元の家苞盆に花の塵
老残の花のトンネル二人して
子ら巣立ち花見るふたり別の道
雪消山いつしか時計止まりをり
過ぎし時晒す夕日や薔薇老ゆ
豊洲
鳥瞰す下町立夏水の町
子ら勁し素足爪染め小江戸行く
再会や登山帽とる富士の駅
三人が降りて空バス登山口
七面山
下闇に由来書白く栃大樹
祈る刻梅雨の宿坊太鼓鳴る
語り継ぐ十五星霜夏炉の夜
聖岳描く背に遠くほととぎす
山下る出湯は遠し白八潮
きのふ会ひけふ別れけり山法師