平成19年(2007)上半期
崩れ襞富士に濃き影筆初め
<70歳の誕生日に>
友三四逝きて越す峰冬の晴
遁れざる畏怖の静謐樹氷界
招きあり雪のヒュッテの写真添へ
手の皹は高嶺の記録地図仕舞ふ
重る税今年も止めし雛飾り
担ぎ行く搬入作品春の雨
西陣や洛中の春描きけり
飛梅やメール頻々岳父病む
立ちし子の人への一歩春日影
朝の梅アルプス滑る旅に発つ
<ザルツブルグ>
モーツアルト生れし土なり岡青む
古希も翔ぶ氷河滑降春スキー
春睡や谷のチャペルの鐘幽か
噴煙やあんこの島に名残り雪
雨一夜庭一面の杉菜かな
散り初めに花のトンネル黄のポルシェ
石畳風が筆成す飛花模様
匂ひ立つ京の記憶や木の芽和へ
人は発ち花屑土に馴染みけり
<長谷のレストランに招かれて>
味わふは子らの真ごころ桜鯛
風光るベイブリッジの長さかな
頬に風ハマにビールの季節来し
諸会費の請求数多草萌ゆる
岳父(ちち)癒えぬ行かばや賀茂の競べ馬
祖を語る童話成りたり鯉幟
<大正14年生まれ玉山に登る>
ご来光八十二歳登頂す
晩餐へどくだみ引きし掌を伏せて
灯蛾乱舞不信の連鎖テロ熄まず
黒南風や揺るる暖簾の文字白し
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