武市三郎, 美馬和夫 : 奇襲の王様 筋違い角のすべて

作成日 : 2022-10-05
最終更新日 :

概要

「まえがき」から引用する。

筋違い角戦法は典型的な「手将棋」です。 相手を未知の世界に、自分だけは知っている世界に引きずり込んで戦う将棋です。この本を読み、 相手が読んでいなければ、きっと面白い戦いができるでしょう。

プロの筋違い角

p.8 には「◇プロの筋違い角、アマの筋違い角」という小見出しで、次の記述がある。

筋違い角の歴史をひもとくと昭和の古き棋書にはA図がプロの筋違い角戦法、 B図がアマの筋違い角戦法と記されている。

A図は次のとおりである。

【A図は☗4五角まで】
 ☖塚田 角 987 654 321
☗木村 なし

B図は☗7六歩☖3四歩☗2二角成☖同銀☗4五角の局面で、盤面を出すほどではないので省略する。 私の実戦では、A図になったことはあってもB図になったことはない。というのは、私は先手では筋違い角戦法を仕掛けることはなく、 かつ私が後手番では☗7六歩に対しては必ず☖8四歩とするからである。A図は先手が居飛車で角換わりを指向すれば出やすい局面だから、 私が遭遇するのはこのA図である。さて、このA図に対してどのように指すか。実はこのA図の筋違い角については述べられていない。 本書で解説されるのはほとんどB図の筋違い角である。なお、ほとんどといったのは、B図以外の筋違い角についても述べられているが、 それは後手番での筋違い角の手法である。

美馬和夫氏

本書は武市三郎と美馬和夫の共著である。美馬氏はアマチュア将棋界で名の知られた強豪で、 すぐに使える! B 級戦法コレクションの実質的な著者でもある。 「すぐに使える!……」では本書の引用もあり、双方を読めば筋違い角戦法に関する理解が深まるだろう。

羽生流筋違い角対策

超有名棋士は意外なほど、その棋士の名を関した戦法や対策がない。 たとえば、中学生でプロになった棋士としては加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、藤井聡太がいるが、 彼らの名前を関した戦法は聞いたことがない。もっとも、聞いたことがない、というのは言いすぎだろう。 たとえば、羽生の名前を関した「羽生流」とよばれる戦い方は、あまりポピュラーではないものの、 「羽生流袖飛車」とか「羽生流右玉」という名前に見られる。他にも羽生流の名前が付くものに、 羽生流の筋違い角対策がある。先手筋違い角を採用した鈴木大介六段に対して、 後手の羽生善治四冠(段位・称号はいずれも当時)の取った手法が話題となった。 以下本書から引用する。 後手は☖5三歩・5四銀型から4五の位を取り、居玉のまま☖2二飛と転換する大胆な指し方である。(中略) 以下後手が上から押しつぶすような攻めを敢行し押し切っている。 pp.104-107 では、「第4節 ☖2二飛転換型」として、羽生善治が用いた筋違い角対策への対応法が述べられている。

誤植

p.9 の小見出しに◇草案は木村名人とあるが、正しくは《◇創案は木村名人》だろう。 事実、同じページの本文には☗4五角は木村名人創案の新手である。とある。

なお、指摘するには味の悪い誤植がある。これ以上の言及は控えておく。

書誌情報

書名奇襲の王様 筋違い角のすべて
著者武市三郎・美馬和夫
発行日2019 年 9 月 30 日 初版第1刷
販売マイナビ出版
定価1540 円(本体)
サイズ
NDC796
ISBN978-4-8399-6696-6
その他草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi