森 信雄:詰めろ将棋入門

作成日 : 2020-06-17
最終更新日 :

概要

詰めろ将棋の二つのジャンルを載せる。1. 次に詰めろをかける問題。 2. 現在の詰めろを逃れる問題。

同じ著者による「詰めろ将棋」「終盤力がアップする詰めろ将棋273題」の続編というべき著書である。

感想

Amazon でのレビューで、いくつかの不備が指摘されている。ここでそれをまとめる。 なお、これらは初版での指摘で、改版で直っているかは不明である(改版されているかどうかも不明である)。

詰めろの部

問題056 作意は☗3二銀だが、以下☖2二玉☗2四桂☖3四歩☗4三金☖同銀☗同銀成☖2四歩☗3三銀☖2三玉☗3二成銀☖3五歩以下詰めろが続かない。 初手☗3二金なら次に☗2一銀の詰みをみた詰めろとなる。☖2四歩ならば☗3五桂で必至がかかる。

問題058 作意は☗3三銀だが、後手の持ち駒がなしとなっているので後手の受けがない。 正しくは後手の持ち駒が歩1枚であり、その結果☖2三歩が最善の受けとなる。 このあとの先手の指し手は本書にある通り。

問題076 作意は☗2三金だが、☗3三金の紛れの説明が不正確と思われる。本書の解答では「 ☗3三金は☖1二玉☗3二角成☖1三馬で詰めろがかからない。」とあるが、 ☖1二玉に対しては☗2三角成☖2一玉☗3二金または☗2三金☖2一玉☗3二角成で詰む。 ☗3三金に対する後手の最善手は☖1三馬だろう。☖1三馬に対して☗2三金では☖同馬☗同角成☖2二金で詰めろが続かないし、 ☖1三馬に対して☗2三角成では☖同馬☗同金☖3一玉でやはり詰めろが続かないと思われる。従って、 結果として作意としては☗2三金のみに限定される。

問題187 作意は☗1四歩だが、この手は詰めろでも王手でもないので問題として不適。 かつ、☗1四歩に対して☖同歩と取る手は「☗1三歩☖同桂☗3一銀不成で受けなし。」 とあるが、後手は☖2五桂と退路を開ける手があるので、詰めろが続かない。

詰めろ逃れの部

問題246 作意は☗4八金だが、その後☖2九銀☗3八歩☖2七金☗2九玉☖4八馬で必至をかけられてしまうため、 不完全と思われる。

問題266 作意は☗3九銀だが、その後☖同馬☗2七玉☖2五銀以下必至をかけられるので不完全と思われる。 盤面に先手駒2五歩を置けば作意が成立とすると思われるが、未確認。

問題295 作意のほか☗8三角でも逃れる。盤面に先手駒4七歩を置けば作意のみに限定できると思われるが、 未確認。

ピアレビューについて

著者の森信雄は、スーパートリックという名前の次の一手問題を数多く作ってきた。 そこで思い出すのが、森の弟子の村山聖である。村山は森が作る問題を見て、 不完全作品はことごとくつぶした。村山聖を描いて余すところのない、大崎善生の「聖の青春」にはこのように書かれている。 今、森の作品を批判的に見る協力者はいないのだろうか、と心配である。 わたしはこの項で「ピアレビュー」と書いたが、主にプログラミングで用いられることばで、 プログラムにバグがないかどうかを作者とレビュー者の一対一で確認しあうことをいう。 村山亡きあと、森の弟子や知人で、このようなレビューを行なう人が誰もいなくなったのではないか、 ということを心配している。

先に、作品に不完全作があることを見た。私にわかるものもあれば(問題058 の手駒の問題)、 わからないものもある。作者や出版社には完全なものを出してほしいという思いは確かにあるのだが、 私は最近、公開されるものに不完全作があるのがあたりまえ、という考えになってきている。 これは、私がソフトウェアのプログラミングという狭い世界に生きてきて、不完全が当たり前、 というある意味異常な立場にずっとおかれているからかもしれない。

将棋の駒を利用したパズルとして詰めろ将棋を捉えると、完全作を作るのは大変と思われる。 詰めろ将棋の範囲は広いが、その範囲を狭めたものとして「必至問題」がある(「必死問題」ともいう)。 必至問題のプロといえば、来条克由(きたじょう・かつよし)氏である。 来条のこともやはり「聖の青春」に出てくる。「来条克由必至名作集」は評判が高いが、 私は残念ながら見たことがない。 来条の有名な作品を見た方が「持駒のあるチェス・プロブレムのような印象を受けた」と驚いていた。 だんだん本書の書評から遠ざかっているが、詰めろ将棋や必至問題が広がっていくことを私は願っている。

とはいえ、完全な必至問題を作るのは大変である。以前、雑誌「将棋世界」を購読していた時、 必至問題を作っていたのは佐藤大五郎九段だったが、けっこう不完全作があったように記憶している。 まずは、この森の本を一生懸命解いてみることにする。

このうちの図面を sfen 形式にして、 自作のソフトで盤面にして楽しんでいる。

書 名詰めろ将棋入門
著 者森 信雄
発行日2018 年 2 月 13 日 初版第 1 刷
発行元実業之日本社
定 価1100 円(本体)
サイズ文庫本サイズ
NDC796
ISBN978-4-408-41487-4
その他越谷市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi