ドビュッシー ピアノ名曲解説

作成日 : 2006-09-17
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2つのアラベスク

アラベスクは,唐草模様の意味. 2曲とも和声のアルペジオを唐草模様に見立てた甘い曲だ。 2曲を比べると第1番が有名だ。しっとりとしている。 第2番はからりとしていてお茶目な印象を受ける。

ベルガマスク組曲

前奏曲、メヌエット、月の光、パスピエの4曲からなる。 前奏曲は清清しい印象に満ちあふれている。 メヌエットは少し諧謔が勝った曲。 月の光は、ドビュッシーのピアノ曲の中で、最も有名だ。 低音の響きに支えられ、厚い和音が溢れたあとで、 どこへ落ち着くともしれないアルペジオが恍惚の境地へと誘う。 パスピエは、名前は舞曲である。しかし、踊りの香りはほとんど消え、 妖精の徒競走のごとくひたすら軽い戯れを巻き起こす。

練習曲集

全 12 曲からなる。前半 6 曲が第1部、後半 6 曲が第2部という分類になっているが、 通常は 12 曲を一括して扱う。

五本の指のための、チェルニー氏に倣って Pour les ≪ cinq doigts ≫ d'apres monsieur Czerny

ハ長調のドレミファソファミレで始まる。チェルニーを明らかにおちょくっているのだが、 悪意は感じられない。その後の展開が見事だからだ。

三度のための Pour les tierces

ショパンの練習曲の3度は急速であるが、こちらは穏当な速さでよい。 ムード音楽だと思えばいいだろう。

四度のための Pour les quatres

四度という扱いにくい技巧を扱うのはドビュッシーの独擅場ではないだろうか。 傑作に属する。

六度のための Pour les sixtes

こちらは「三度のための」の世界に戻る。

オクターブのための Pour les octaves

あっけらかんとした表情を見せる。リズムも刻々変わる。

八本の指のための Pour les huit doigts

つむじ風のような曲想だ。フォーレの「前奏曲第5番」と比較すると面白い。

半音階のための Pour les degrés chromatiques

半音階がリズムの巧妙さと相まって不思議な空間を作る。

反復音のための Pour les notes répétées

練習曲ではあるが、同じ作曲者の前奏曲集のにおいがする。

対比的な響きのための Pour les sonorités opposées

「4度のための」とならび、ドビュッシーの傑作とされる。 私にはその良さが残念ながらよくわからない。きっと、わかるためには ここで「響き」と訳された「ソノリテ」を理解すること、そして よいピアノによるよい演奏を集中して聴くことが必須なのだろう。

組み合わされたアルペッジョのための Pour les arpèges composés

「組み合わされた」の代わりに「重複する」と訳されることもある。 また、版や訳によっては、この形容詞が落ちて単に「アルペッジョ(アルペジオ)のために」となっていることもある。 1拍を6等分するテンション入りの変イ長調の右手アルペジオから始まり、 ついで1拍を4等分する左手アルペジオと組み合わされる。 アルペジオは、左と右が合体して大きなうねりを巻き起こしたり、分離したりを繰り返す。 合間にはリズミックな合いの手が入る。 このリズムはどこか、アルベニスのイベリアから「トゥリアーナ」の一部分を思い出させる。

ちなみに、この曲には先駆版(初稿)が存在している。「見出された練習曲」、 あるいは「見つけ出された練習曲」などの名前で知られている。 debussy étude retrouvée で動画サイトを検索すればよい。 楽譜は Theodore Presser Company から出版されている(Roy Howat が補作)。 主調は同じ変イ長調だが、それ以外はかなり異なる。現行版は動と静の対比が際立っているが、 先駆版は絶えず動き回り、色彩が変わる異色の作品だ。ドビュッシーの作品でいえば、 ピアノのためにのトッカータや喜びの島につながる系列に属する。 先駆版のほうが好きな人もいるだろう。私はどちらも好きだ。

和音のための Pour les accords

三部からなる。第1部と第3部は和音というより跳躍のための練習曲だ。 第2部は和音を素早く移動させる練習という趣だ。

なお、ピアノ曲以外の作品も含めた、ドビュッシーの部屋も作りつつある。

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MARUYAMA Satosi