エスペラント博士 著 国際語
作成日:2016-06-12
最終更新日:
まりんきょによる前口上
これからは、筆名「エスペラント博士」による著作「世界語」の一部訳である。エスペランティストのあいだでは「第一の書」と呼ばれている。
以下は拙訳である。
初めに
読者がこの小冊子を読んだとき、理想世界のよき市民による実現不能な考えを語っている、
とおかしく思って笑ったことに違いない。
だから私がまず最初にお願いしたいのは、偏見はすべて捨てて、
まじめに、批判的に、読者が持っている疑問に向き合ってほしい、ということだ。
(中略)
克服しなければならない主な課題は次の通りである。
言語の勉強がやさしく、学習者には練習だけを要求すればよいように設計する
学習者がどんな国の人とも知識を直接使えるようにする。
その言語は国際的に受け入れられていようがいまいが構わない。
言い換えれば、その言語は国際交流の直接手段となる。
人類の生まれながらの差別を克服し、消し去る手段を見つけるため、
最も速い方法が可能であること、そしてひとまとめに、提案された言語を学び、使いうること。
それも限界まで、手元のカギとしてである。
I
第一の課題は次のようにして解決した。
私は文法を極限まで簡略化した。 一方で、現代言語に存在する精神も実現した。可能な限り勉強に支障をきたさない、
だからといって明晰性、正確性、融通性も犠牲としない文法にした。
私の文法全体を理解するには 1時間 で足りる。 言語、たとえば文法などの勉強にかかる負荷をとことんまで下げることは、
誰の目にも当然明らかであろう。
新しい単語を作る規則を決めた。同時に、
学ぶべき単語一覧を最小限にした。
しかし、単語の豊かさを損なうものではない。
それどころか、一つの語根からあらゆる付属語の組み合わせることができるおかげで、
知覚できるニュアンスの違いも表現でき、現代の言語のなかで最も豊かな語彙を得ることができた。
私が達成したことは豊富な接頭辞と接尾辞を導入したことであり、
このようなことで学習者が自ら新しいことばを創造することもできる。
それも過去に学んだことがなくともだ。例を挙げよう。
接頭辞 mal はあらゆる意味の反対を表す。
たとえば、良い、ということば bon'a を知れば,
すぐに、悪い、ということば mal'bon'a として知ることができる。
その結果、悪いということばは不要となる。
同様に alt'a という、高い、という意味のことばから
mal'alt'a という低いということばができる。
estim'i 尊敬する、ということばから、mal'estim'i , 軽蔑する、ということばができる。
結局、ただ一つの mal さえ覚えれば、新たな単語を覚える苦労から解放される。
固い(柔らかい、の反対)、寒い、古い、汚い、遠い、暗い、恥ずかしい、憎む、などなど。
接尾辞 in は女性形を表す。だから、
兄弟, frat'o , を知っていれば、姉妹 frat'in'o を作れる。
同じように、父, patr'o から母, patr'in'o を作れる。この仕組みによれば、
祖母, 花嫁, 少女, 雌鶏, 雌牛, ということばを捨てられる。
接尾辞 il は、決まった目的に使われる道具を表す。 例,
tranĉ'i , 切る, tranĉ'il'o , “ナイフ”; だから “櫛”,
“斧”, “鐘”というような単語は不要となる。
(中略)
II
第 2 の課題は次のように解決した。
1) 私は完全な分割という考えを、個別の語に適用した。
この完全な分割とは、私の言語全体が、文法的な屈折の異なる状態の語ではなく、
不変の語により成り立つようにしたことである。読者が私の言語で書かれたこの本ののページをめくってみれば、
どのことばも変化形がなく、もとの姿を保持している、
すなわち、語彙がそのまま使われていることに気づくだろう。
(中略)
国際語の完全な文法
A. アルファベット
A a
ア
B b
ボ
C c
ツォ
Ĉ ĉ
チョ
D d
ド
E e
エ
F f
フォ
G g
ゴ
Ĝ ĝ
ヂョ
H h
ホ
Ĥ ĥ
ッホ
I i
イ
J j
ヨ
Ĵ ĵ
ジョ
K k
コ
L l
ろ
M m
モ
N n
ノ
O o
ノ
P p
ポ
R r
ロ
S s
ソ
Ŝ ŝ
ショ
T t
ト
U u
ウ
Ŭ ŭ
ウォ
V v
ヴォ
Z z
ゾ
もし字上符が使えないようであれば、文字 h を後に置くことで代用できる。
中間であることを示す記号 ( , ) は、コンマと間違えないように使うべきである。
( , ) のかわりに、( ' ) や ( - ) を使ってもよい。
例, sign,et,o , sign'et'o, or sign-et-o.
(**12)
B. 発音
不定冠詞はない。定冠詞はla のみであり、性、数、格によらない。
名詞を得るには語根にo をつける。
複数は, 文字 j を単数につける。格には次の二つがある。すなわち、
主格と対格(目的格)である. 主格にはo をつけ、
目的格には n を o のあとにつける。 他の格は前置詞によってあらわされる。
よって、所有格(属格)は de で、, “の”; 与格は al で, “へ”;奪格 by kun , “とともに”,
のほか、意味によってほかの前置詞が使われる。例:, 語根 patr , “父”; la patr'o , “父”; patr'o'n ,
“父を” (対格), de la patr'o , “父の”, al la patr'o , “父に”, kun la patr'o ,
“父と”; la patro'j , “父たち”; la patro'j'n , “父たちを” (obj.), por la patr'o'j ,
“父たちのために”.
形容詞は語根に a をつける。
数と書くは主格に合わせる。
比較級は pli (より)をつける。
最上級は plej (一番). をつける。
“より” は ol を使う。
例: pli blank'a ol neĝ'o , “雪より白い”. 基数は格で不変である。次の通り
1
unu
2 du
3 tri
4 kvar
5 kvin
6 ses
7 sep
8 ok
9 naŭ;
10 dek
100 cent
1000 mil
十と百は単に並べればよい。例, 533=kvin'cent tri'dek tri .
序数は a を付加する。例, unu'a , 一番目の ; du'a , 二番目の, など
倍数は obl を付加する。 例, tri'obl'a , 三倍の on を付加する。例, du'on'o , 半分, kvar'on'o , 四分の一.
集合体は op を付加する。例, kvar'op'e , 四人一緒に
(中略)
C. General Rules
1) どの語も書かれた通り発音する。黙字はない。
2) 語のアクセントは後ろから2番目の音節にある。
(中略)
エスペラント博士の世界語:語彙集
中略
A
a 形容詞を表す, 例, hom' —人間, hom'a —人間の
acid' すっぱい, 酸味のある
aĉet' 買う
ad' 動作の継続を示す
例, ir' —行く; ir'ad' —散歩; danc' —踊る, danc'ad' —踊り
adiaŭ 別れ、さよなら
aer' 空気
afer' ものごと、仕事
agl' ワシ
agrabl' 賛成できる
aĝ' 年齢
ajn …でも; 例, kiu —だれ, kiu ajn — だれでも
aĵ' ある種の質、特性を示したり特定物質から作られたりすることを表す;
例, mal'nov' —古い, mal'nov'aĵ' —古いもの; frukt' —果物, frukt'aĵ' —果物からできた
akompan' 同行する
akr' 鋭い
akv' 水
al …に; 例, al li —彼に (与格も表す)
ali' 他の
almenaŭ 少なくとも
alt' 高い
alumet' マッチ(一本)
am' 愛する
amas' 群衆、かたまり
amik' ともだち
an' メンバー, 住人, 支持者; 例, regn' —国, 王国, 帝国, regn'an' —
帝国(等)の住人. Paris'an' —パリ人
angul' 角、隅
anĝel' 天使
anim' 魂
ankaŭ …もまた
ankoraŭ まだ
anstataŭ …のかわりに
ant' 現在分詞(能動形)
antaŭ 前に
apart' 分かれて
aparten' 所属する
apenaŭ ほとんど…ない
apud 近い
ar' ものの集まりを表す; 例, arb' —木, ar'bar' —森; ŝtup' —ステップ, ŝtup'ar'— 階段、はしご
arb' 木
arĝent' 銀
as 動詞の現在形を表す
at' 現在分詞(受身形)
atend' 待つ、期待する
aŭ または
aŭd' 聞く
aŭskult' 聴く、傾聴する
aŭtun' 秋
av' 祖父
avar' avaricious
azen' ロバ
B
babil' おしゃべりする
bak' 焼く
bala' 掃く
balanc' 揺れる
baldaŭ まもなく、すぐに、
ban' 入浴する
bapt' baptize
bar' (ドア)をかんぬきで閉める、通行止めにする
barb' ひげ
barel' たる
baston' 棒
bat' 打つ、 to flog
batal' 戦う
bedaŭr' 憐れむ、後悔する
bel' 美しい、整った
ben' 神の加護を祈る、ささげる、神聖化する
benk' ベンチ
best' 動物、野獣
bezon' 欲する
bier' ビール
bind' 縛る
bird' 鳥
blank' 白
blov' 吹く
blu' 青
bo' 結婚により結ばれた相手の関係(義理の);
例, patr' —父, bo'patr'— 義父; frat' —兄弟, bo'frat' —義兄弟
boj' ほえる
bol' 似る
bon' 良い
bord' (海)岸 , (川)岸
bot' ブーツ
botel' ビン
bov' 牛
branĉ' 枝
brand' ブランデー
bril' 光る、火花を発する、ギラギラする
bros' ブラシ
bru' 騒音を立てる、どなる
brul' 自身を燃やす
brust' 胸
brut' 獣
buŝ' 口
buter' バター
buton' ボタン
C
cel' ねらう
cent 百
cert' 確かな、知られている、
ceter' 残り、続き、
cigar' 葉巻
cigared' 葉巻
citron' レモン
語彙
注釈
(**12) 中間記号はエスペラントの初期段階で削除されたので、「フンダメント」には含まれない。
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MARUYAMA Satosi