理想のピアニスト(第8回):ヤン・エキエルの発言

作成日:2003-04-06
最終更新日:

演奏と作品

2003年4月6日のNHK教育テレビを見ていたら、 ヤン・エキエルというポーランドのピアニストがインタビューを受けていた。 彼は第二次世界大戦中、ショパンの作品を弾き続けていた。 エキエルさんの友人はその演奏に非常に勇気づけられたと今でも言う。 この友人の言に対し、エキエルさんは「私の演奏ではなく、演奏された作品が評価されるべきだ」 と語った。

私もエキエルさんの言う通りであると思う。しかし、エキエルさんの友人たちは、 エキエルさんがいなければ、エキエルさんの演奏がなければ、 戦時中に勇気づけられることはなかっただろうと想像する。仮に、 その時代に、友人達がショパンの楽譜を楽譜を見ただけならば、 これほど勇気づけられることはなかっただろう。 また、エキエルさん以外のピアニストがショパンの作品を弾いていたらどうだったろうか。 この場合ははっきりとしたことはいえないが、 エキエルさんは銃弾が飛び交う中でもピアノを弾くのをやめなかったそうである。 だとすると、それほどの極限状況で他のピアニストが弾くことは考えられなかっただろう。 やはり、ピアニストが媒介しなければ作品が評価されないというのを、 事実として認めるのがいいのではないか。

追記:エキエル氏は 2014 年に亡くなったことを今知った。哀悼の意を表する。 それから、ショパンの楽譜にエキエル版というのがあるのは知っていたが、このエキエル氏の編集になるということはうかつにも知らなかった。 恥ずかしい限りである (2016-03-26) 。

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MARUYAMA Satosi