田中一之:チューリングと超パズル

作成日:2023-08-02
最終更新日:

概要

「はじめに」から引用する。

ふつうのパズル本や数学問題集なら、解ける問題、それもなるほどと納得する形で解ける問題のみを出題するのが常識であろう。 だが本書では、半分は解けないパズルを扱い、さらには解けるか解けないかわからないパズルまで登場する。(中略)しかし、くり返しになるが、 本書の目的はすでに知られた解の道筋をうまくなぞる技術を学ぶことではなく、 問題が解けるか否かの判断を正しく行うための論理的な眼力を養うことにある。その意味でこれは「メタパズル」の本なのだ。

感想

「はじめに」に、面白いことが書かれている。

ポジティブな思考がクリエイティブな仕事に結びつくという人がよくいるが、 計算機の誕生に限らず、数学周辺にはネガティブな発想がブレークスルーを生む例が他にたくさんある。 「負(negative)の数」「無理(irrational)数」「虚(imaginary)数」など、名前だけでもそれら数概念のネガティブな出自がわかる。

ポジティブ思考が跋扈するなかで、ネガティブな私は身の置き所がなかったが、このような言明があるとほっとする。

p.100 から整数係数の `n` 次多項式 `f(x) = a_nx^n + a_(n-1)x^(n-1) + cdots + a_1x + a_0` を算木で解く方法が解説されている。 この方法については次のような歴史があることを p.102 で知った。

上のような方程式の解法(天元術)は 13 世紀の秦九韶の『数書九章』に記載されており、中国では「秦九韶算法」と呼ぶ。 日本でも 17 世紀には沢口一之の『古今算法記』(1671年)などに説明されている。欧米では、19 世紀にこの方法を発見したイギリスの数学者 W・G・ホーナーの名をとって 「ホーナー法」と呼んでいるが、日本人まで「ホーナー法」と呼ぶ人がいるのはどんなものだろうか。

ということで私はこれからホーナー法のことを「沢口法」と呼ぶことにしよう。

数式と図の記述

数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名 チューリングと超パズル
著者 田中一之
発行日 2013 年 11 月 29 日 初版
発行元 東京大学出版会
定価 2500 円(本体)
ISBN 978-4-13-063901-9
その他 越谷市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi