「まえがき」から引用する:
本書は,数論におけるこういった基本的な文献のすきまを,数多くの卓れた教科書があるので形式ばらずに,物理学,生物学,コンピュータ科学,ディジタル通信,暗号, およびパズル,難題や芸術的デザインのようなより楽しい遊びごとにおける応用も含めて,直感と相互関係を強調するという方法で補おうとしている。
要再読である。
p.31 では、次の記述がある。
J. R. ピアスは,後にスタンフォード大学にいったが,最近(2:1 のオクターブのかわりに)周波数比 3:1 を(12 ではなく)13 等分割することに基づく新しい音階を提唱した。 この音階は,5 と 7 の 13 乗が共に 3 の整数乗に非常に近い数論的まぐれ当たり,すなわち `5^13 = 3.077` と `7^13 = 3.0037^23` に由来する. 神秘的な正確さで 5:3 と 7:5(と9:7)のように大変簡単な整数比になっている。 指数に表れている整数(13, 19, 23)はまた互いに素であるから(事実,三つの数はすべて素数である),もっぱら小整数比 5:3 と 7:5 から完全な音階を構成することは容易である。 新しい音階 3:5:7 と 5:7:9 の基本の和音は等しい調律をした音階 `3^(k//13)` とすばらしく近似していて, 新しい音階で書いた音楽に対する強い和音の基礎を作るために M. V. マスュー,A. リーブスと L. ロバーツによって発見された。
この音階は、現在はボーレン・ピアース音律(ボーレン・ピアス音階)などと呼ばれることが多い。なお、`5^13 = 3.077`
の 3.077 の上の指数の肩が落ちているのはおそらく誤植で、
《`5^13 = 3.077^19`》が正しいと思われる。それぞれを計算すると、次の値が得られる。
`5^13` =
`3.0077^19` =
`7^13` =
`3.0037^23` =
ちょっとずれているような気もするので、もう少し正確な計算をしてみた。
`x^19 = 5^13` を満たす `x` は
`x^23 = 7^13` を満たす `x` は
M. V. マスューとは、Max Vernon Mathews のことだろう。A.リーブスと L. ロバーツについては未詳。
pp.36-37 で紹介されているのは、昔の中国人が素数を調べる方法である。それは、`2^n-2` が `n` で割り切れるとき、かつそのときに限って `n` は素数である、 という方法である。ところがこれは、n = 341 のときは正しくない。つまり、`n` は `n = 11*31` のとおり、素数ではない(合成数である)であるが、 `2^n-2` は `n` で割り切れる。本書では、プログラム可能なポケット電卓を用いれば調べることができる、とある。 私はプログラム電卓を持っていないので、JavaScript の BigInt 機能を使って調べてみた。なお、ブラウザが Vivaldi や Chrome 、Edge、Firefox、Duckduckgo であれば動くが、 Seamonkey では動作しない。具体的には、「このブラウザは BigInt に未対応です。」という表示が出れば、ブラウザで計算ができず、結果が表示されない。
`2^341` =
`(2^341 - 2) // 341` =
`(2^341 - 2) % 341` =
このページの数式は MathJax で記述している。
| 書名 | 科学と通信における数論(上) |
| 著者 | M. R. シュレーダ |
| 訳者 | 平野浩太郎・野村孝徳 |
| 発行日 | 平成 7 年 (1995 年) 2 月 1 日(初版) |
| 発行元 | コロナ社 |
| 定価 | 2800 円(本体) |
| サイズ | A5版 203 ページ |
| ISBN | 4-339-08216-3 |
| その他 | 川口市立図書館にて借りて読む |
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