概要
「まえがき」から引用する :
(前略)あわせて,日本人が一般に不得手の「論理的に考える」ことを,この教科書の学習を通じて学んでほしいと強く願うから,証明抜きに「とにかく信じなさい」ということは避けた. 「国際化時代」である.少なくとも欧米では社会一般のことがらについても論理的思考が前提になっている. (欧米の政治家や企業人が論理的に振る舞っているかといえばそうでもない.しかし,特殊な人を除けば,論理的な思考をした上で実利に沿って非論理的に行動していると推察される. 論理的思考なしに非論理的に行動しているのではないのである.)国際化時代には,こういう人々とも対等に渡り合わなければならない.
感想
「4.1 行列式の定義と性質」から引用する。
一般の `l` 次正方行列 `A = (a_(ij))_(1 le i, j le ℓ)` の行列式の定義に「決定版」はない.どれもわかりにくい面をもつからである.だからといって,どれでもよいというものではない. 定義は,展開する理論の本質を予感させ,諸定理の証明が容易になるように吟味して定めなければならない.
主な定義の仕方は 3 通りある.以下の(Ⅰ),(Ⅱ-1),(Ⅱ-2)である.
(Ⅰ) `{a_(ij)}_(1lei, jleℓ)` を用いて `det A` を定義する.後述の式 (4.1.5) である.
(Ⅱ)`A` の行ベクトルがなす平行多面体の(負も許した)`ℓ` 次元体積
(Ⅱ-1)`1 times 1` 行列 `(a)` に対して `det(a) = a` と定義する.一般の `ℓ` 次正方行列 `A` に対しては,`ℓ - 1` 次正方行列の行列式を用いて,帰納的に定義する. (後出の「余因子展開」(4.2.1) に当たる.)
(Ⅱ-2)平行多面体の体積がもつべき性質により定義し,その定義を満たすものがただ1つ存在することを示す.
著者は(Ⅱ-2)を採用している。その理由は本書を見られたい。私は(Ⅱ-1)派であるが、そんな大した理由ではないので割愛する。そして著者はいう。
(Ⅱ-2)においても,いかなる性質を定義に採用するか,によって流儀が分かれる.(中略)
線形性・交代性・正規性を採用する向きも多く,「線形代数」においてそれも妥当であるが, 本書においては基本変形を重視して,基本変形のうちの `P(i, j; mu)`,`R(i;mu)` に対応する変形のもたらす性質と正規性を採用する.
`P(i, j; mu)`と`R(i;mu)`については本書 p.65 で定義されている。正規性については本書で明示されていないが、「単位行列の行列式は 1 である」という性質が正規性だと思われる。 著者の行列式の定義は、信念がはっきりしていて好ましいと思う。
数式記述
このページの数式は ASCIIMathML で記述している。
書誌情報
| 書名 | 線形代数入門 |
| 著者 | 松本和一郎 |
| 発行日 | 2007 年 11 月 25 日 初版1刷 |
| 発行元 | 共立出版 |
| 定価 | 2200 円(本体) |
| サイズ | A5 版 229 ページ |
| ISBN | 978-4-320-01852-5 |
| NDC | 411.3 |
| 備考 | 川口市立図書館で借りて読む |