栗田稔 : 複素数と複素関数

2026-06-02

概要

「はしがき」から引用する。

(前略)この書物は,高等学校において,複素数の初歩を学んだ諸君が,さらに進んで複素数とその周辺のことを知りたいと望まれる場合に役立つことを目的として, 複素数と複素数を変数とする関数(複素関数)の初歩の部分を詳しく説いたものである.

感想

Q&A

本文中にときどき「Q&A」が出てくる。この形式を見ていると、志賀浩二の30講シリーズを思い出す。

双対数

pp.5-6 で、複素数の呼び名に関連して次の記述があった。

4 元数,多元数という呼び方からすれば,複素数も,複元数とか,2 元数と呼んでもよさそうであるが,これは通用していない. また,同じく,もとが 2 つある数でも,1 と `epsilon^2 = 0` となる `epsilon` (実数ではないから 0 とならない)をもとにして考えた `a + b epsilon` (`a, b` は実数)というものがあって, これはふつう双対数(dual number)と呼ばれ,いくらかの応用をもっている.

これには驚いた。インターネットを検索してみると、Wikipedia では「二重数」として解説されている。

直角三角形の問題

p.51 にある問題から引用する。昔、某大学の入学試験に似た問題があったのを思い出した。

`/_"O" = 90°` の直角三角形 `"OAB"` で `"OA"=a, "OB"=b` とする. `"O"` から `"AB"` へ垂線 `"OP"_1`, `"P"_1` から `"OB"` へ垂線 `"P"_1"P"_2`, `"P"_2` から `"OP"_1` へ垂線 `"P"_2"P"_3`, `"P"_3` から `"OP"_2` へ垂線 `"P"_3"P"_4`,`cdotscdots` と無限に続けるとき,点 `"P"_1, "P"_2, cdots` の極限の位置を求めよ.

本当は p.51 にある図をここで示せればいいのだが、難しい。SVG を使って少しだけ書いてみた。

O A B a b

p.196 に答があったので、これを少し自分の言葉で書き換えてみる。

複素平面で考える。 `"O"` を原点、`"A"` を `a` で、`"B"` を `bi` で表し、`theta` を `tan theta = a//b` なる角とする。 また、 `"OP"_1 = z_1 , "P"_(n-1)"P"_n = z_n (n = 1, 2, cdots ) ` とおく。 さらに、`k = -cos theta e^(-itheta), l = i sin theta e^(itheta) ` とする。

`z_n` は次のように表せる。`z_1 = a cos theta e^(itheta), z_2 = kz_1, z_3 = lz_2, z_4 k = z_3, z_5 = lz_4, cdots `

したがって、`"P"_n` の極限の位置は,

`z_1 + z_2 + z_3 + z_4 + cdots = z_1 + kz_1 + klz_1 + k^2z_1 + k^2l^2z_2 + cdots =(1+k)/(1-kl) z_1 = (1+k)(1 - bar(kl))/abs(1-kl)^2 z_1`

これを計算すると

`(a sin theta cos theta (sin theta cos theta) + i) / (1 + sin^2 theta cos^2 theta)`

これを `a, b` で表して、最終的に得られる座標は次の通りである。

`( (a^3b^2)/(a^4+3a^2b^2+b^4), (a^2b(a^2+b^2))/(a^4+3a^2b^2+b^4) )`

分類の基本定理

pp.74-75 で、分類の基本定理について述べられている。Q&Aの形で述べられている。同値関係 `~` のことである。

一般に,集合 `M` がいくつかの部分集合に分れていて,同じ組に属することを `a ~ b`と書くことにすると,
(0) `a ~ b, a~b ` でない のどちらか一方だけが成り立つ.
(1) `a ~ a`
(2) `a ~ b`
(3) `a ~ b, b ~ c` ならば `a ~ c`
となっている.これは当りまえのことです.(中略) 数学のいたる所に出てくることです.通俗的な例では,

`M` を人の集合     `a ~ b` は,`a` が `b` を好き
ということにするとよくわかります.

`M` を人の集合とすると、`a ~ b` は `a` が `b` を好きという関係だとすると、(0)、(1)、(2)、(3) のどれもが当てはまらないような気がする。

書誌情報

書名 複素数と複素関数
著者 栗田稔
発行日 2002 年 2 月 5 日 初版 第 1 刷発行
発行元 現代数学社
定価 2600 円(本体)
サイズ A5版 204 ページ
ISBN 4-7687-0277-5
NBC 413.52
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