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「はじめに」から引用する。
この本のテーマの「不変量」と「対称性」という考え方が,数学のさまざまなところできわめて重要な役割を果たしていることがうかがえる,と思います。
第3章「15パズルの数理」から読み進めた。p.80 には 15 パズルが定義されている。15 パズルでピースを何回でもいいのでスライドさせることで、
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にできるか、というのが問題である(図で空きスペースは■で表している)。
この問題は数学的に次の問題に言い直せる。p.83 によれば、こうなっている。
`((1,2,cdotscdots,16),(1,2,cdotscdots,16)) ~ ((1,2,cdotscdots,14,15,16),(1,2,cdotscdots,15,14,16))` (※)
これが成り立つかどうか、という問題に帰着される。ここで関係~は、ピースを何回でもいいのでスライドすることで互いに移り合うときに同値であると定めたときの同値関係である。 また、空きスペースは 16 で表している。 以下の説明は本書を読んだ結果私なりに理解した内容に基づく。
15 パズルのピースの配置の集合を `S_(16)` とする。また、集合 `S` の同値関係~に対する不変量を `alpha` とする。不変量 `alpha` を、 集合 `S_(16)` の要素に対して +1 または -1 のいずれかの値をもつように構成したい。`S` の要素を `sigma`, `tau` とするとき、`alpha` が不変量であるためには、 `alpha` がピースの横移動でも縦移動でも変わらなければいい。ではどのように `alpha` を構成すればいいだろうか。
ここで転倒数と呼ばれる概念を導入する。本書での紹介に基づき転倒数を説明する(ただし、本書で「転倒数」という用語は紹介されていない)。これは、置換 `sigma` に対して、 この置換で大きさの順序がひっくりかえってしまったペアの数である。 言い方を変えれば、`i lt j` かつ `sigma(i) gt sigma(j)` となるペア `(i, j)` の数 `N(sigma)` を転倒数と呼ぶ。
転倒数を用いて不変量を構成することを考える。ピースの移動前後で、転倒数は 1 だけ増えるか、1 だけ減るかのどちらかである。だから、転倒数自身は不変量にはなりえない。 それに、少し前に不変量を +1 または -1 のいずれかの値をもつように構成したい、と書いた。どうすべきか。まずは、転倒数と不変量を結びつけるために、 `(-1)^(N(sigma))` という量を作る。 `N(sigma)` は 0 を含む自然数だから、`(-1)^(N(sigma))` は -1 か +1 のいずれかを取る。これはいいのだが、 こんどはピースの移動前後で必ず変化してしまう。つまり -1 が 1 になってしまい、1 が -1 になってしまう。したがって、移動によってやはり -1 が +1 に、+1 が -1 になるような量を考える。それには、空きスペースの位置の変化を考えればいい。即ち、第 `i` 行第 `j` 列(`1 le i, j le 4`)にある空きスペースはピースの移動によって行または列が 1 だけ増加または減少する。 ということは、`k = i + j` という値 `k` を考え、うまく転倒数のベキ乗と組み合わせればキャンセルがうまくいき不変量となりうるのではないか。 そのように考えて構成したのが下記の不変量となる。
`alpha(sigma) = (-1)^k (-1)^(N(sigma))`
実際に見てみよう。※の左側の不変量を求める。転倒数は 0 である。また 16 の位置は 4 行 4 列にあるから `k = 8` である。したがって、`alpha = (-1)^0 * (-1)^8 = 1` である。 一方、※の右側の不変量は、転倒数は 1 、また `k = 8` である。よって、`alpha = (-1)^1 * (-1)^8 = -1` 。よって、(※)は成り立たない。
本書は転倒数を表に出さず、置換の符号で説明している。置換の符号は p.55 や p.84 で説明されている。
数式は MathJax で記述している。
| 書名 | 不変量とは何か |
| 著者 | 今井淳・寺尾宏明・中村博昭 |
| 発行日 | 2002 年 11 月 20 日(第1刷) |
| 発行元 | 講談社 |
| 定価 | 900 円(税別) |
| NDC | 410 |
| サイズ | 18cm 246ページ |
| ISBN | 4-06-257393-8 |
| その他 | 講談社ブルーバックス、越谷市立図書館で借りて読む |
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