森口繁一・宇田川銈久・一松信 : 数学公式Ⅲ

作成日 : 2021-11-25
最終更新日 :

概要

第3巻は特殊函数についての公式を収める。

誤植

以下の誤植は、私が読んだ本の書誌情報の版で見つけたものである。 現行販売の版で修正されているかどうかは知らない。 本書のガンマ関数は Γ `(x)` とガンマの字が斜体になっているが、 以降では `Gamma(x)` のように立体で引用する。

ガンマ関数の値

p.2 にガンマ関数の特別な点での値が掲載されている。そのなかで、`Gamma(1/4)` の値に関する等式がある :

`Gamma(1/4) = 2[sqrt(pi)K(1/sqrt(2))]^(1//2)`(注2)` = 2^(3//4) sqrt(pi)[(3*7*11*15cdots)/(5*9*13*17cdots)]^(1//2) = 2[sqrt(2pi)int_0^1(dt)/sqrt(1-t^4)]^(1//2) = [6sqrt(2pi)int_0^(pi//2)sin^(3//2)tdt]^(1//2)`

このうち、`Gamma(1/4)` とされる次の値 :
`2^(3//4) sqrt(pi)[(3*7*11*15cdots)/(5*9*13*17cdots)]^(1//2)`
は誤りで、次が正しい :
`2 sqrt(pi)(3^2/(3^2-1) * (5^2-1)/5^2 * 7^2/(7^2 - 1) * (9^2 - 1)/9^2 cdots)^(1//2)`
また、脚注にあるべき注2 の説明が抜けている。注2としては、本書の p.192 と同じ、次のようになろう :
注2 `K` は第1種の完全楕円積分,第Ⅰ巻,§ 49, 227 ページ参照。

参考 : http://yeblog.cocolog-nifty.com/nouse/2014/12/iii-p2-gamma14-.html

楕円函数

p.48 の中ほど、「`tau` の変換 Jacobi の虚変換により,」の下の2行

`vartheta_1(v, tau) = e^(3pii//4)tau^(-1//2)e^(-piiv^2//tau)vartheta_1(v//tau, -1//tau)`
`vartheta_nu(v, tau) = e^(pii//4)tau^(-1//2)e^(-piiv^2//tau)vartheta_nu(v//tau, -1//tau) quad [nu = 0, 2, 3]`

は、第2式が変数の設定および `nu` の範囲が誤っている。正しくは次のようになる :

`vartheta_1(v, tau) = e^(3pii//4)tau^(-1//2)e^(-piiv^2//tau)vartheta_1(v//tau, -1//tau)`
`vartheta_mu(v, tau) = e^(pii//4)tau^(-1//2)e^(-piiv^2//tau)vartheta_nu(v//tau, -1//tau) quad [(mu, nu) = (0, 2), (2, 0), (3, 3)]`

参考 : http://yeblog.cocolog-nifty.com/nouse/2017/09/iii-p48-b860.html

超幾何函数

p.56 で、初等関数を超幾何関数で表わす公式があるが、いくつかに誤りがある。

`sinh(z) = z {::}_0F_1(3//2; z^2//2)`
`cosh(z) = {::}_0F_1(1/2; z^2//2)`
`sin(z) = z {::}_0F_1(3//2; -z^2//2)`
`cos(z) = {::}_0F_1(1/2; -z^2//2)`

正しくは次の通り :

`sinh(z) = z {::}_0F_1(3//2; z^2//4)`
`cosh(z) = {::}_0F_1(1/2; z^2//4)`
`sin(z) = z {::}_0F_1(3//2; -z^2//4)`
`cos(z) = {::}_0F_1(1/2; -z^2//4)`

参考 : https://wasan.hatenablog.com/entry/2013/12/05/064322

https://blog.goo.ne.jp/kayamatetsu/e/c5de12faf8d46c01eb91de779a0d27be

ベッセル関数の積分

p.192 上から 7 番目の Bessel 関数の積の積分に関して、誤りがある。

被積分関数 `J_(nu+n)(ax)J_(nu-n+1)(bx)` (`n:` 整数)、助変数の範囲が `a gt b gt 0` の場合、

`1/b sum_(r=0)^n[((-1)^rGamma(nu+r))/((n-r)!Gamma(nu-n+r)) times (b/a)^(nu-n+2r)]`

これは以下が正しい。

`1/b sum_(r=0)^n[((-1)^rGamma(nu+r))/((n-r)!Gamma(nu-n+r)) times (b/a)^(nu-n+2r)] times 1/(r!)`

つまり、末尾に `1//r!` の係数が必要となる。

参考 : https://www.sci.osaka-cu.ac.jp/phys/electron_correlation/iwanamiz.pdf

楕円体函数の脚注

p.254 の脚注を引用する :

注1 `(2n-1)!! = (2n-1)(2n-3)cdots3*1`.`C` は,長球にたいしては (7) 式, 扁球にたいしては (8) 式で与えれらる定数.

もちろん、与えれらるは《与えられる》が正しい。

目次 xvi の上から 5 行め(ii) 円柱函数としゅじゅの特殊関数との関係とあるが、 《(ii) 円柱函数と種々の特殊関数との関係》漢字に直すべきだろう。

どうでもいいこと

誤植ではないのだが、この p.56 を見てみると、上で引用したとおり `1/2` はディスプレイモードになっているのに、 `3//2` はテキストモードになっている。これはなぜだろうか。 推理としては、 `1/2` はひとまとまりになった活字があるのでそれで組み、`3//2` は活字がないのでテキストモードにした、 という線がある。しかし、この推理は正しいだろうか。このページを見ると、`1/2` と `1//2` が混在している。 しかも `1/2` には1行分の小さなものもあれば、2行分の大きなものもある(上記の公式で使われている `1/2` は、本書ではすべて1行分の小さなほう)。

数式とグラフの記述

このページの数式は ASCIIMathML で記述している。

書誌情報

書名岩波 数学公式Ⅲ
著者森口繁一・宇田川銈久・一松信
発行日1987 年 3 月 13 日 新装第1刷
発行元岩波書店
定価1700 円(本体)
サイズB6版 310 ページ
ISBN4-00-005509-7
その他越谷市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi