矢野 健太郎:エレガントな解答 |
作成日:2017-06-25 最終更新日: |
数学でエレガントな解答とは何か。
ここに載っているので懐かしい話があった。タバコを10本持っている人の話である。まだシケモクということばが生きていたころだろうか。 タバコ 1本で吸えるのは1回に 2/3 で 1/3 が残る。1/3 のタバコは3個つなげて1本のタバコにすることができる。 さてこの人は何回タバコが吸えるか。
まず、10本のタバコで10回吸う。すると、1/3 のタバコが 10 個残る。そのうち 9 個をつなげて 3 本にする。残りの1個はそのままだ。 次に、つないだ3本のタバコで 3回吸う。すると、1/3 のタバコが 3 個残る。残りの1個と合わせて 4個 残っている。そのうちの 3 個をつなげて一本にする。 3回めは、つないだ1本のタバコを1回吸う。すると、1/3 のタバコが 1 個残る。残った 1/3 のタバコもあるが、1 本には足りない。 では、10 + 3 + 1 = 14 の14 回が解答だろうか?
そうではない。この 2 個が残った状態で、友達から 1/3 のタバコを 1個借りる。そうすればタバコが 1 本残るから、それを吸えばよい。 これで 10 + 3 + 1 + 1 = 15 の 15 回が解答となる。
友達から借りた 1/3 のタバコはどうするのか。最後に吸ったタバコが 1/3 残っているから、これを友達に返せばいい。 めでたしめでたし。
この話は、嫌煙の私でもわかる。
この話は、親の遺言でラクダを兄弟で取り合う別の数学の有名な話を思い出させる。
この本のかなりの部分は、パスカルの定理の証明に割かれている。 ちなみに、パスカルの定理とは、円に内接する六角形についての定理である。 著者は、パスカルの定理の証明で必要な補助円について触れ「今の人はこのような補助円を発見する快感を知らずにお気の毒」 という趣旨のことを書いている。私は幾何が苦手だったから、このような快感を知らなかったことをむしろありがたく思っている。
第一、パスカルが証明に成功したときだって「夢の中から神様が降りてきて補助円を描くように」と言われて初めて証明できたのだ、 という挿話を紹介している。パスカルでさえ、夢のお告げがなければ解けなかったのだ。俺ら凡人が解けるはずがないではないか。 そんなこんなでこの六角形は、神秘六角形と呼ばれている。
書 名 | エレガントな解答 |
著 者 | 矢野 健太郎 |
発行日 | |
発行元 | 筑摩書房 |
定 価 | 円(本体) |
サイズ | |
NDC | 421.5 |
ISBN |
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