岩波講座 現代物理学の基礎9 生命の物理

作成日:2021-09-28
最終更新日:

概要

序から引用する。

この巻では,ごく大まかにいえば,生物系の構造と機能を比較的マクロな立場から見て, 生物系としての構成要素の集団が示す現象とか生物的機能の仕組をどのように解析し, あるいは法則化してゆけるのだろうかという問題設定が主題になっている.

章立ては次の通り。

  1. 生命の基本的な型
  2. 遺伝と生理
  3. 高次構造形成
  4. 調節
  5. 運動
  6. 感応
  7. 行動
  8. 熱力学から見た生命現象
  9. 秩序とネゲントロピー
  10. ネゲントロピーと情報量
  11. 生物集団の個体数変動
  12. 生物集団の統計力学
  13. 生体高分子の非周期構造と秩序構造
  14. ヘリックス-コイル転移
  15. 生体の機能と転移現象
  16. 非周期系としての神経回路網
  17. 物理・論理・オートマトン
  18. 有限オートマトンの理論
  19. セル構造オートマトン

第Ⅰ部(第1章~第7章)は大沢文夫が、第Ⅱ部(第8章~第12章)は寺本英が、第Ⅲ部(第13章から第16章)は斎藤信彦が、 第Ⅳ部(第17章から第19章)は西尾英之助が、 それぞれ執筆している。

感想

他の講座と同様、全く理解できなかった。私の頭が弱いのだから仕方がない。

第Ⅰ部の「結びのことば」の最後の段落を引用する:

 生命の物理学,生物物理学の分野が立てられてからすでに久しい. しかし,生きている状態の特徴を“物理的”に理解したといいうる例はむしろまだないのではないか. “形質”=“分子”という考えに立ちながらその段階をのりこえた, 物理的な意味で新しい生物のとらえ方が可能であろうか. 真の“生きているとはどういうことか”の理解のためには,そこまで到達しなければならないのではないか. 生物物理学はまさに始まったばかりであり,何を目標にするかをよく考えるべきときである.

この問いかけに対する解答は、現在みつかっているのだろうか。

第Ⅱ部を眺めていて目に留まったのが、p.195 にある 「図12.4 ラブラドール狐の最初の 40 年間の捕獲数 `N` と相対捕獲個体数 `n = N//q` を表わしたもの」 のグラフであった。私は、カナダオオヤマネコ(Canadian lynx)捕獲の時系列かと思ったのだが、 ラブラドール狐とカナダオオヤマネコとは違うし、周期も、捕獲数も異なる。 ラブラドール狐のデータのほうは統計学者のほうの気を惹かないのだろうか。 紹介されている、ラブラドール狐の捕獲数の解析では、Volterra の方程式をもとにした統計力学的な手法が用いられている。 本書によれば、実測と理論の定性的一致はきわめてよい.という結論づけている。

第Ⅱ部の最後は Margalef(マルガレフ)による生態系の熱力学的な考察を紹介したうえで、 次のように結んでいる:

Margalef の説の妥当性については,今後さらに多くの検討がなされなければならないが, この主張の内容そのものについても,さらに理論的な検討が深められねばならないだろう. 生物も含めて,地球上で起こっている自然現象は,その地域的条件の多様性もあって, 統一的な把握ということが非常に困難ではあるけれども, そこを舞台にして生きてきた人類の活動そのものが反省され, 人間の未来に疑問が持たれはじめた現在, こうした問題に取り組んでゆくのは, これからの自然科学の重要な課題であるはずである.

最後の「こうした問題」とは何を指しているかというと、たぶん「地球用で起こっている自然現象」の 「統一的な把握」ということなのだろう。確かに困難ではあるが、重要だ。

書誌情報

書 名岩波講座 現代物理学の基礎9 生命の物理

著 者大沢文夫, 寺本英, 斎藤信雄, 西尾英之助
発行日1972 年 12 月 12 日 第1刷
発行元岩波書店
定 価1400 円(本体)
サイズA5版 432 ページ
ISBN
その他越谷市立図書館にて借りて読む

まりんきょ学問所読んだ本の記録岩波講座 現代物理学の基礎9 生命の物理


MARUYAMA Satosi