「まえがき」から引用する。
(前略)本書はベクトル解析の入門書であり,電磁気学を学ぶ際に必要となるベクトル解析の基礎を十分に理解させることを目的としている. しかし本書では,数学的な厳密さよりは,むしろその本質をイメージとして理解し,身につけさせることに重点をおき,説明はなるべく平易で具体的になるように心掛けた. そのため,静電場を例にあげながら話しを進めることにした。(後略)
深谷賢治:電磁場とベクトル解析が数学者の描く電磁気学ならば、こちらは物理学者・工学者が描くベクトル解析の本である。
章末には演習問題があり、巻末には解答が付されているが、中には解答が略されたものがあるので、解答例を考えてみた。以下、本書のベクトルは太字斜体であるが、このページでは太字立体で引用する。 p.121 にある次の問題
6.7 `bbA, bbB` をベクトルとするとき,つぎの公式を証明せよ。
(1) `"grad"(bbA * bbB) = (bbA * nabla) bbB + (bbB * nabla)bbA + bbA times "rot"bbB + bbB times "rot" bbA`
(2) `"rot"(bbA times bbB) = bbA "div" bbB - bbB "div" bbA + (bbB * nabla) bbA - (bbA * nabla)bbB`
この問題に対する回答は省略されているが、前の問題 6.6 には解答がある。そこで、6.7 の解答を、問題 6.6 の解答の書き方をまねしてみよう。
なお、p.112 を見ると次の記述があるのでこれも参考にした。スカラーに働く演算子 `bbA * nabla` は p.64 で説明されている。
同様に,演算子 `bbA * nabla` もスカラーに対して定義されたが
`(bbA * nabla) bbB= {(bbA * nabla)B_x}bbi +{(bbA * nabla)B_y}bbj +{(bbA * nabla)B_z}bbk`のようにベクトルに対して定義することもできる。
ではいよいよ (1) を解答しよう。デカルト座標の成分で考えても一般性を失わない。さて、`bbA = (A_x, A_y, A_z), bbB = (B_x, B_y, B_z)` とし、 各項の `x` 成分を添え字`(*)_x`で表す。まず、(1) の左辺を計算しよう。
つぎに左辺を計算しよう。左辺の各項の `x` 成分を計算する。
これらを辺々足す。
` ((bbA * nabla) bbB)_x +((bbB * nabla) bbA)_x + (bbA times "rot"bbB)_x + (bbB times "rot"bbA)_x = A_x (delB_x)/(delx) + A_y (delB_y)/(delx) + A_z(delB_z)/(delx) + B_x (delA_x)/(delx) + B_y (delA_y)/(delx) + B_z(delA_z)/(delx) `
両辺を比べるとどちらも `sum_(i=x,y,z) (A_i (delB_i)/(delx) + B_i(delA_i)/(delx))` となり、一致していることがわかる。`y` 成分、`z` 成分についても同様となるので、公式が証明された。
(2) の解答は疲れてしまったので後日に回す。
p.118 下から 11 行め、9 行目、8 行目のルジャンドル倍関数
とあるのは、正しくは《ルジャンドル陪関数》である。
数式は MathJax を用いて表示している
書名 | 電磁気学を学ぶためのベクトル解析 |
著者 | 関根松夫・佐野元昭 |
発行日 | 1996 年 11 月 25 日 初版第 1 刷発行 |
発行元 | コロナ社 |
定価 | 2000 円(本体) |
サイズ | A5 判 238 ページ |
ISBN | 4-339-00667-X |
備考 | 川口市立図書館で借りて読む |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 関根松夫・佐野元昭: 電磁気学を学ぶためのベクトル解析