渡辺克義:まずはこれだけエスペラント語

作成日: 2009-12-07
最終更新日:

概要

導入編、構文編、実用編の3章からなる。 導入編では、アルファベットから読み方、基本単語を習得する。 構文編では、簡単な文法が提示される。 実用編では、旅に出たときに役に立つ単語や言い回しが紹介されている。 CDも附属しており、実際のエスペラントがどのように発音されているかが耳を通してわかる。

感想

発音

通読して最初に驚いたのが、発音の問題だった。 敵を意味する malamiko は、マルアミーコと発音すべきであり、 マラミーコではない、という意味のことが、ある本には出ていたと思う (フランス語のアンシェヌマンに相当する音のつなぎは行なわない、ということだ)。

ところが、著者は単語のいくつかを、アンシェヌマンする読み方としない読み方を併記している。 たとえば、非常口を意味する savelirejo を 「サヴェリーヨ」 [サヴェルイーヨ] の二つの読み方で示している (p.64)。前者がアンシェヌマンありの、後者がアンシェヌマンなしの読み方だ。 さて、savelirejo の意味をとるには sav/el/ir/ej/o と分解すればよい。 sav は動詞 savi の語幹で、救助するという意味だ。 elir は出る、出かけるという動詞 eliri の語幹であり、 eliri 自身も el (外へ、という意味の前置詞・接頭辞)と iri (行くという意味の動詞の不定詞)に分かれる。 さらに、ej は場所を表す接尾辞、そして o で終わって名詞を表す。 この非常口ということばは一体化してもいいのだろう。 そうなると、どの単語ならばアンシェヌマンが許されて、どの単語ならだめか、 というのがわからないと困ってしまう。アンシェヌマンしないのが無難だろう。 なんといっても、原因 (Gen-in)と下人(Genin)、 現任(Gen-nin)の読み方を区別できるのが日本語だから。

強弱アクセント

付録のCDを聞いて驚いたことは、エスペラントが強弱アクセントである、ということだった。 日本語では音の高さがアクセントになるが、 この付録のCDを聞いてみると、最初の母音の音が高く、 あとは高さが下がる読み方が多かった。また、語のアクセントも、思ったほど強くはなかった。

d と ĝ の区別

もう一つ、発音の癖として、ĝ の音が d に近く聞こえる。気のせいだろうか。

詩の朗読がない

この本には、せっかくザメンホフによる詩が収録されているのだから、 ぜひとも朗読も吹き込んで欲しかった。 なお、この詩についての感想なのだが、 ザメンホフは詩の押韻のために、エスペラント本来の形を崩してしまっている。 ここで取り上げられている詩では、fore 「遠くに」という意味の副詞を、 他の前置詞と韻を合わせるために for に省略するというずるいことをしている。 まあ、でもザメンホフがやったのなら許す。

構文

da と de

前置詞 da の使い方は英語からの類推ではなじみにくい。 コップ1杯の水を、英語では a glass of water という。しかしエスペラントでは、 glaso da akvo となる。 英語の of はエスペラントは一般に de に対応するが、 glaso de akvo というと、水を入れるグラスという意味になり、重点が水からグラスに移る。 こういったことが p.46 に書いてある。これは参考になる。

接辞

いろいろなエスペラントの本には必ず接辞が載っている。おもしろいことに、全く同じということがない。 たとえば本書では、-i- を載せていない。国を表す接辞であるが、著者は接辞として扱わず、 個別の国ごとに扱っている。国の中では、-i- を使わず、-lando を使うこともあるからだろう。

-um- を「諸関係」と説明してあるのも目を引いた。普通「意味不定」として片付けるものだが、 諸関係、というのがまだいいだろう。

実用編

外国へ行ってエスペラントで用が足せるとはめったに思わないが、想像することは楽しい。 覚えておきたい単語があるのはいいのだが、グループ別にまとまっていないので、 覚えようとすると難儀だ。これから先、工夫してもらえるとありがたい。

誤植

次の誤植がある。

p.10 中村陽字は誤り、中村陽宇が正しい。

書 名まずはこれだけエスペラント語
著 者渡辺 克義
発行日2009年11月24日
発行元国際語学社
定 価1500 円(本体)
サイズ20.6 x 14.8 x 1.4 cm
ISBN978-4-87731-490-8

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MARUYAMA Satosi