安冨 歩:もう「東大話法」にはだまされない |
作成日: 2012-10-23 最終更新日: |
副題は<「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く>。
この本を読んでいて、過去に読んだ本をいくつか思い出した。 まず全体の流れは、中公新書で出ている野崎昭弘「詭弁論理学」に近い。
それぞれのところでは、いろいろな本が浮かぶ。 例えば、次のところは呉智英「言葉につける薬」を想起した。 というのは、呉氏は、孔子の話を最初に同書でしたからである。
安富氏が挙げた例も呉氏と同じである。 本書 p.29 で、孔子の知恵を引用するくだりがある。孔子の時代には衛という国があった。
あるとき弟子の子路が「もし衛の君主が先生に政治を任せたら、まず何をしますか」 と質問したのに対して、孔子はこんなことを言っています。
「必ずや、名を正す」
つまり、正しい言葉遣いをするということです。
そして「名を正す」というのは分析哲学の主要な活動でもある。哲学者の方々の名前が浮かぶ。
また、本のほかにことわざも思い浮かぶ。「理屈と膏薬はどこへでもつく」というのがぴったりくる。
面白い本だったし、これからも折に触れて読むだろう。 この本を読んで、 原子力の専門家が福島原子力発電所の事故を他人事のように傍観していられるのはなぜだろう、 という疑問が解けた。
その副産物として得られた知見もあった。これは安冨さんが高木仁三郎のことばとして紹介していたのだが、 原子力推進派の諸氏は発言するとき「我が国では」で始める、というのだ。 だから、他人事でいられるのかと思わず膝を打ったしだいだ。
個別の論理には飛躍もあるし、扇情的な挑発もある。それらも含めて、 社会を考える切り口を提供してくれた著者には感謝する。
書 名 | もう「東大話法」にはだまされない |
著 者 | 安冨 歩 |
発行日 | 2012年9月 |
発行元 | 講談社 |
定 価 | 838 円(税別) |
サイズ | 新書版 |
ISBN | 978-4-06-272774-7 |
その他 | 講談社+α新書 |
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