荒川 純太郎:アジアの地下水

2015-07-09

概要

アジアの地下水。マンダラは現代にどのようにかかわるか。問題意識は広範囲に及ぶ。

感想

筆者は東マレーシア・サラワクのメソジスト教会に派遣された。その経験の報告である。 アジアの民衆の心には過去・現在の侵略が地下水のように流れている。 過去・現在の侵略史を忘れた日本人にその地下水のような痛みを伝える本である。

カトリックかプロテスタントか

私はキリスト教に疎いので、カトリックとプロテスタントの区別さえつかない。 どうやらメソジスト教会というのは、プロテスタント系の一派であることがわかった。 著者は縁あってサラワク州での布教に携わることになる。その苦労と喜びを語る。

さわやかな読後感

マレーシアはイスラム教徒が多い。その中でキリスト教を広めるのは大変なことであろう。 さらに、著者は困難な点として、過去の宣教師は施し物で信者を増やしたこと、宣教師内部での抗争があったことなどを挙げている。 それでも、読後感はさわやかだ。

トラクト

p.23 でトラクトということばが出てくる。キリスト教関係者にはなじみのことばだろうが、 私にはわからない。調べてみると、宗教上のパンフレット、福音文書のことだとわかった。なるほど。

イバン語

著者は、サラワク行きが決まってから日本でイバン語を勉強しようとするが、イバン語を話す人は日本にはいないため、 まずマレー語をならうことにしたという。しかし、当時は外国語大学にマレー語専攻はなかったという (現在は東京外国語大学にある)。

イバン語のおもしろい例が紹介されている。イバン語では、動物を数える単位(一匹とか一頭とか)をいうときイコ (iko) ということばを使う。 おもしろいことに、このイコは人間を数えるときも使うこと、そしてイコの意味は「しっぽ」ということだ。人間のしっぽは確かに退化したが、 もとはといえば同じ動物である。この考え方に私は感動した。

書誌情報

書 名アジアの地下水
著 者荒川 純太郎
発行日
発行元新教出版社
定 価 円(本体)
サイズ版
ISBN