セメスターとは半期(半年)の意味。大学の教科過程を半期ごとの独立したものとすることを指す。 セメスター物理Ⅰでは、力学,弾性,流体を扱う。
p.1 の図 1.1 を見て、日光は日本橋の真北にあること、 成田は日本橋のほぼ真東にあることを知った。
p.32-33 で、永久機関の例が二種示されている。以下 p.33 から引用する。
これまで,数多くの永久機関が発明され,現在も発見され続けているが,これはすべてインチキである.
このインチキ
ということばで思い出したのが、著者の大槻氏がたびたびオカルトを否定する発言を繰り返していたことだった。
大槻氏のインチキには、迫力がある。
p.92 の問題 2.2 を引用する。
弾丸を打ち込まれた物体 なめらかな水平面に質量 `M`,長さ `L` の物体が静止している.これに質量 `m` の弾丸を速さ `v_1` で打ちつける. 弾丸は物体が静止しているとき打ち込まれてちょうど `L` だけ走って静止した.物体が自由に動くとき弾丸は物体の途中で止った.
(a) 物体の最終的な速さと弾丸が物体にめり込んだ距離を求めよ.
(b) 弾丸が物体の中でストップするまでに物体の移動した距離を求めよ.
(a) の前半の「最終的な速さ」はわかる。運動量保存の法則を使えばいい。最終的な速さを `v_2` とすると運動量保存の法則から、
(a) `v_2 = m/(m+M) v_1, 1/2 m v_1^2 = 1/2 (m+M) v_2^2 + Fl`,よって `l = M/(m+M)L`
(b) `l' = (Mm)/(m+M)^2 L`
なんと、解答を見てもわからない。`F` というのが弾丸が物体から受ける抵抗力だろうし、`l` は求めるべきめり込んだ距離だろう。しかし、なぜ「よって」なのかがわからない。 `l` の式には `F` がないし、`L` がどこで出てくるかもわからない。 わからないときはインターネットの出番だ。「弾丸 物理」で検索するだけでも、似た問題がみつかるので比較しよう。 なお、以下のリンク先のページを引用するときでも、記号は本書の問題あるいは解答の文字に置き換えている。
まず、【高校物理】木片に撃ち込まれた弾丸 | 受験の月(examist.jp)
を見た。このリンク先のページと本書の問題を比較すると、リンク先では弾丸が物体から受ける抵抗力 `F` が既知のものとして与えられているが、弾丸が静止したときに走った距離 `L` が与えられていない。
また、リンク先の問題文が「弾丸がある深さまで食い込んだところで一体となって動き始めた」となっているが、本書の問題文では弾丸が物体中で止まったときの弾丸の位置は衝突の位置から
ちょうど `L` の距離にあるので、弾丸は物体の途中で止まった
という記載と矛盾する。従って、本問の記載の結果を本問には適用するのは難しい。
次に、【難関大頻出】弾丸が木片にささる運動量保存の問題の解き方をわかりやすく解説(受験物理.com) を見た。このリンク先のページと本書の問題を比較すると、リンク先の設定は次のようになっている。まず弾丸が物体から受ける抵抗力 `F` を物体を水平面に固定させたときの値として求めておき、 次に物体の固定を解除してかつ抵抗力を物体を固定させたときと同じとして問題文の条件を設定している。この条件も本書の問題とは少し違う。
では、本書の問題に戻って考えよう。以下は邪道であることをお断りする。
まず、よって
の後にある `l = m/(m+M)L` がどのように出てきたかを推理しよう。`l = m/(m+M)L` を出すには `(m+M)l = mL` がいえればいい。
左辺は弾丸プラス物体がした仕事で、右辺は弾丸がした仕事と解釈できる。弾丸自体は衝突した瞬間から距離 `L` だけ進んだのだから確かにこれが仕事といえるだろうが、
左辺は弾丸プラス物体の合体物が距離 `L` だけ進んだ仕事と解釈できるだろうか。そして両辺が同じと考えていいのだろうか。よくわからない。
数式はMathJax で表現している。
書名 | セメスター物理Ⅰ |
著者 | 大槻義彦 |
発行日 | 平成 8 年 (1996年) 3 月 30 日 |
発行元 | 丸善 |
定価 | 1900 円(税別) |
サイズ | |
ISBN | 4-621-04157-6 |
その他 | 草加市立図書館で借りて読む |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 大槻義彦:セメスター物理Ⅰ